
<第38回東京国際映画祭クロージングセレモニー>◇5日◇TOHOシネマズ日比谷
コンペティション部門出品の「恒星の向こう側」(中川龍太郎監督)主演の福地桃子(28)と、福地演じる未知の母可那子を演じた映画監督の河瀨直美氏(56)が、最優秀女優賞を受賞した。
日本人俳優の女優賞受賞は、14年「紙の月」(吉田大八監督)の宮沢りえ(52)以来11年ぶり5、6人目。女優賞のダブル受賞は、05年の第18回の、英国のヘレナ・ボナム・カーターと中国のジン・ヤーチンさん以来20年ぶり。
福地にとって、今回の受賞が個人として初のビッグタイトル獲得となった。会見で、そのことへの思いを聞かれると「母娘の物語ではあるんですけど、河瀨さんを見ての(口から出た)言葉が大事。人と出会っていく中で出た感情から、引き出してもらった感覚が多い。素晴らしい賞をいただけたことがうれしい」と、俳優として新たな感覚を得た特別な作品で受賞できたことを喜んだ。
「恒星の向こう側」は、母可那子との余命を知り故郷に戻った娘・未知が、寄り添おうとしながらも拒絶する母と衝突を重ねる。夫登志蔵との間に子を宿しながらも、亡き親友への思いに揺れる彼の姿に不安を募らせる未知は、母の残したテープから“もうひとつの愛”を知り、初めて母を理解し、母から託された愛を胸に進んでいく。登志蔵を寛一郎(29)が演じる。
今回の受賞を糧に今後、どう進んでいきたいか? と聞かれると「(役で)未知という名前をいただいた。どんなふうに年を重ねていくか分からない中で、人との出会いで感じ、受け取れたものが映像に映っていく感覚を大事にしたいと思った作品です」と1つ、1つ、大切に言葉を紡いだ。「恒星の向こう側」で俳優として得た、新たな感覚を持って、俳優としてさらに前に進んでいこうという意思が、口の端と強いまなざしから、にじみ、あふれ出た。
◆福地桃子(ふくち・ももこ)1997年(平9)10月26日、東京都生まれ。父は哀川翔(64)で母は元モデル。5人きょうだいの次女で末っ子。14年に哀川が出演したテレビ東京系ドラマ「借王(シャッキング)~華麗なる借金返済作戦~」に娘役で出演し初演技。19年の映画「あまのがわ」で映画初出演初主演。同年のNHK連続テレビ小説「なつぞら」で朝ドラ、22年の「鎌倉殿の13人」で大河ドラマにそれぞれ初出演。趣味は旅行、料理。身長153センチ。
◆河瀨直美(かわせ・なおみ)1969年(昭44)5月30日、奈良県奈良市生まれ。中学時代にバスケットボールを始め、同市立一条高時代に国体に出場。大阪写真専門学校(現ビジュアルアーツ専門学校)に入学。20年「朝が来る」が米アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表。18年秋に東京五輪公式映画監督に就任し、22年6月に「東京2020 SIDE:A/SIDE:B」公開。21年バスケットボール女子Wリーグの会長に就任。今年の大阪・関西万博のプロデューサー兼シニアアドバイザー。
