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片渕須直監督トーハクで講演会、世界待望新作「つるばみ色のなぎ子たち」製作の膨大資料と貴重映像公開


【写真】東京国立博物館で講演会「清少納言がいた京都に行き、そこに立ちたい。」を開いた片渕須直監督

アニメーション映画「この世界の片隅に」で知られる、片渕須直監督(65)が3日、東京国立博物館で講演会を開いた。

「清少納言がいた京都に行き、そこに立ちたい。」と題し、「枕草子」をベースに原作・監督・脚本を手がける、製作中の新作映画「つるばみ色のなぎ子たち」について語った。同作の完成が、世界各国から待望される中、パイロットフィルムをはじめ、製作中のものなど貴重な映像も紹介した。

描く舞台が1000年前で残された資料も数少ない中、徹底した調査、検証を繰り返し、当時の実情を浮かび上がらせる製作スタイルを今回も徹底。対談した東京国立博物館の松嶋雅人学芸企画部長は絵画が専門ながら「(博物館の)学芸員も、そこまではしない」と驚嘆した。

「つるばみ色のなぎ子たち」は、一条天皇の中宮定子に女房として仕えた清少納言を主人公に描く。片渕監督は、講演会の冒頭で「一番、大きなポイントは、皆さんの平安時代のイメージと大分、違うのではないか? そこを、お話ししたい」と力を込めた。壇上には、2点の十二単(ひとえ)が置かれ、同監督は「暑い、大変と思われますが、こちらは夏服」と、十二単(ひとえ)には夏服があり、4月に衣替えをしていたと説明。夏服には、現代でいうところのコバルトブルーの、二藍色が使われていたことも併せて紹介した。

清少納言は、993年(正暦4)に中宮定子の女房になるが、片渕監督は同年に、当時「もがさ」と呼ばれた天然痘が流行し、多数の人が亡くなったと説明。資料で調べ上げてファイルにまとめた、当時亡くなった人々のリストまでスクリーンに映し出した。「『枕草子』を書いている時期。994年には、死者過半との記録まである。平安時代はみやびやかと言われますが全然、みやびやかではない世の中です」と語った。さらに、赤もがさと呼ばれた、はしかも流行したとした上で、病気になった人を道の外に放置したとの記述も残っていると指摘。「誰も免疫がない世の中に、清少納言がいた。リアリズムで捉えると、あの優雅なムードは何だったんだと…危機感があふれる」とも語った。

清少納言に興味を持ったきっかけは、脚本も手がけた09年の監督作「マイマイ新子と千年の魔法」製作のために、山口県防府市にロケハンしたことだった。清少納言の父・周防守清原元輔の国司館と思われる邸宅跡が発掘調査中で、幼い娘を帯同していたのでは? と考え「清少納言が(遺跡の)赤土の上で歩いていたのではないか? という風に(自分の中の思いが)変わってしまい、いろいろなことを調べないといけないと思った」という。そして「この世界の片隅に」を作り上げた際に絶賛された、過去の資料の多くを一から調べ、捉え直し、当時を再構成したアニメーション作りの手法を、どこまで延長できるかに挑もうと、約1000年前の清少納言の時代をテーマにした。

片渕監督は「当時の風俗、社会的であったり風習による規制があったことを理解し、当時の人は頭の中で、どんなことに縛られていたのかを理解する。そこに清少納言の『枕草子』を後から当てはめたら、どうなのだろう、と」と、製作にあたっての発想を説明した。その上で「枕草子」の有名なフレーズ「春はあけぼの」を例に「のどかなことを書いているが、背景はこんなことだと見えてくる。規制があったものを取り除けば、清少納言がどれだけ我々と近い人間なのかな、というのを見たくなった」と続けた。清少納言は、現代であれば公務員の立場であり「1000年前…中世にすらなっていない時代に、こういう女性がいたのはクローズアップされていいのではないか?」とも語った。

講演会の最後には「(アニメは)もっとファンタジーで描くべきでは? というご質問を頂いたことがあった」と口にした。その上で「実際にないものを描くから、空想性豊かな表現…それは、子供に対して使われた武器だった」と続けた。この日、抽せんで集まった380人のファンは、中年から上の世代も多く、同監督は「(現代においてアニメを)見る世代は、空想だけで生きていらっしゃらないし、ご飯を食べられないもの分かっている。現実とは何か、過去とは何か…見る方々の年齢が、どんどん上がっているのが、今日」と、現代においてアニメが子供のためだけのものではないと強調。その上で「やらせていただくのにいいんじゃないかと考えた理由」と、東京国立博物館で講演会を開いた意義を強調した。

松嶋学芸企画部長から「完成時期は?」と問われた瞬間、片渕監督は「プロデューサーが笑っている。大丈夫です」と客席に視線を送り、思わず笑った。具体的な公開時期こそ明言しなかったが、納得できる形での製作が進んでいることを伺わせた。

★片渕須直(かたぶち・すなお)1960年(昭35)8月10日、大阪府枚方市生まれ。日大芸術学部映画学科在学中から84年のテレビ朝日系アニメ「名探偵ホームズ」に脚本家として参加。スタジオジブリの89年「魔女の宅急便」では演出補。

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