
興行収入(興収)166億5000万円と歴史的ヒットを続ける「国宝」の李相日監督(51)が3日、都内で開催中の東京国際映画祭で黒澤明賞を受賞し、3日に都内で開かれた授賞式に登壇した。席上に「国宝」に主演した吉沢亮(31)がサプライズで登壇し、花束を贈った。
李監督は、吉沢の登壇がアナウンスされた瞬間、目尻を下げ、何とも言えないと言わんばかりの笑みを浮かべた。そして「吉沢君、ありがとう」と感謝。自身とともに受賞し、クロージング作品「ハムネット」(27日)を手がけた中国出身のクロエ・ジャオ監督(43)への祝福のスピーチを終え、吉沢が退場する際には肩をたたいた。吉沢が劇中で、歌舞伎の女形を演じたことを引き合いに「後ろから背中を見て、女形の背中をしていなくて、ようやく役が抜けたのかと安心しました」と口にして、会場を笑わせた。
壇上で、トロフィーと賞金100万円を受け取った。日本が世界に誇る故・黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送り出していきたいとの願いから、世界の映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる賞として、22年に14年ぶりに復活させた同賞を受賞したことへの感慨はひとしおだ。「国宝」で吉沢が演じた、任侠の一門に生まれながらも歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生をささげた主人公・立花喜久雄を引き合いに「黒澤明という歌舞伎に例えると大名跡を、アウトサイダーの僕が、喜久男のように向かっていく怖さと喜びと重責を感じております」と口にした。
この日は「国宝」とともに、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した06年の監督作「フラガール」の映像も流れた。李監督は「20年以上にわたって映画に関わらせていただいて、人間として成長させてくれた関係者の皆さまにお礼を言いたいと思います。ありがとうございます」と感謝した。
「国宝」は作家・吉田修一氏の同名小説の映画化作品。吉沢が50年の人生を演じた喜久雄の少年期を黒川想矢(15)が演じた。抗争で父を亡くした喜久雄を引き取る上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎を渡辺謙(66)半二郎の実の息子で、生まれながらに将来を約束された御曹司・大垣俊介を横浜流星(29)、少年期を越山敬達(16)が演じた。吉沢は横浜と、歌舞伎俳優の中村鴈治郎(66)から1年半にわたって歌舞伎の指導を受けたことも話題を呼んだ。
6月6日の初日からロングラン上映が続き、興行収入(興収)166億5000万円(26日現在、興行通信社調べ)を記録。03年に興収173億5000万円を挙げ、日本映画歴代11位、実写では最高興収記録を22年守り続ける「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(本広克行監督)に、あと7億円に迫っている。第98回米アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表作品に決定している。
