
<悼む>
大ヒットした童謡「黒ネコのタンゴ」で知られる、元歌手の皆川おさむ(みながわ・おさむ、本名理=おさむ)さんが23日午前0時35分、慢性腎不全のため横浜市の病院で亡くなった。62歳だった。代表を務める、ひばり児童合唱団が24日、発表した。通夜は27日午後6時から、葬儀・告別式は28日午前11時から目黒区碑文谷1の22の22、円融寺示真殿で。喪主は姉礼子(れいこ)さん。
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10年前の夏、著書「太陽がくれた歌声」(主婦と生活社)出版に際して皆川さんを取材した。引退はしていたが、芸能界の中心にいた派手な人物なのかと想像しながら東京・目黒区洗足にあるひばり児童合唱団の稽古場に足を運ぶと、意外にも素朴な印象の心優しい男性が待っていた。
稽古場には皆川さん自身が作ったというネコの置物が多数、並べられていた。「『黒ネコのタンゴ』の前からずっとネコが好きなんです。曲が出た後は、いろんな方から黒ネコをプレゼントしたいと言われたりもしました。でも、当時の事務所の社長から『ネコの毛はのどによくない』と言われて、歌っている頃は犬しか飼えませんでした。大学の頃にやっとネコを飼えたんですよ。フフフ」。メガネの奥に刻まれた目尻のしわが、人柄を表していた。
歌番組だけではなく、ドラマや映画にも複数出演し、共演した大物芸能人たちからもかわいがられた。引退を決めた一番のきっかけは変声だったが「元からそこまで欲がなかったんです。歌えなくなったら、(芸能活動は)おしまいかな思っていたので。思春期で、学校の昼食の時間に『黒ネコのタンゴ』が流れたりして、恥ずかしかったのもあります」と回想した。
メディア出演時、いわゆる「営業スマイル」が苦手だった。撮影で同席した石坂浩二(84)を「もっと笑えよ~(笑い)」と困らせたこともあったという。「私が笑わないと撮影が終わらない、っていうことだったので…。ハハハ」。実際にはとてもよく笑う、気さくな人だった。【横山慧】