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【連載】丸の内TOEI跡地に映画館新設しない理由は…賃貸収入で映画に投資も


丸の内TOEI閉館に当たって取材に応じた東映・吉村文雄社長(撮影・村上幸将)

1960年(昭35)9月20日に東京・銀座に開館した映画館「丸の内TOEI」が、本社ビル・東映会館の再開発と本社移転を受けて27日に閉館し、65年の歴史に幕を下ろす。その歴史を振り返りながら、「丸の内TOEI閉館 過去、現在…東映の未来」と題し、3回連載する。1回目は、吉村文雄社長(60)に、跡地に建設する商業施設に映画館を設置しない経営判断と、その先に描く東映の未来について聞いた。【村上幸将】

   ◇   ◇   ◇

吉村社長は開口一番「老朽化して物理的に使えないにしても、歴史を象徴する建物。私の代で…先人に申し訳ない」と口にした。その上で「65年もここにあり、東映と言えば銀座。寂しい」と、一社員としての率直な思いも吐露した。

業界人はもちろん、映画ファンの間からも「丸の内TOEIがなくなった後、東映はどうするんだろう?」との声が聞こえてくる。昨年5月15日に、東映会館の再開発と本社移転を発表した際、跡地にホテル・店舗を中心とした商業施設を建設するとした。すると「跡地で映画館はやらないのか?」という声が各所でささやかれた。その点を直撃すると、吉村社長は「映画館の設置も考えなかったわけではない」とした上で、次の3点を理由に挙げた。

<1>330坪(約1089平方メートル)しかなく、シネコンを設置しても複数階に分けないと造れない上、狭い。

<2>13スクリーン、約2800席を有するTOHOシネマズ日比谷が至近にあり、番組編成が難しい。

<3>上映作品をアート系に振り切る話もあったが、採算が厳しい。

「映画館をやらず、事業ビルにして不動産収入を得る方が企業として有益」と判断。「製作を続けるための安定した収入が欲しい。賃貸収入を映画に、より投資できる。映画も当たり外れが多い。波がないような事業で会社の屋台骨を支え、安心して物作りができるための事業開発」と説明した。

根底には、1951年(昭26)に東京映画配給株式会社が東横映画と太泉映画の2つの製作会社を吸収合併した当時から撮影所を持ち、企画、製作、ポストプロダクションまで一貫してきた自負がある。「常に作品を作り続けているのが東映の特徴。会社の成り立ちからも製作が原点。テレビドラマも年間を通じて子供から大人向けまで作り、配信ドラマも600話くらいストックができた」と語る。

製作拠点の東京撮影所、京都撮影所の維持、成長も、再開発の裏で強く念頭に置いている。「作ることに一番、注力してきた会社として東京、京都の撮影所をたたむことは、今のところ全く考えていない。維持するためにも、作品の数を増やさなければいけない」と断言。特に考えているのが、京都撮影所の稼働率アップだ。「時代劇を定常的に撮っていかないとスタッフの定着も難しい。毎年1本は撮って公開は必ずやり2、3本に増やしたい。京都は現代劇も撮れる。うまくフル稼働したい」と語る。

視線の先には、海外がある。「米ロサンゼルスにも渡航し、京都で撮影しませんか? とロケ誘致のセールスもやってきた」と明かした。プロデューサーも兼任した真田広之(64)がゴールデン・グローブ賞などで日本人初の主演男優賞を受賞。世界を席巻した「SHOGUN 将軍」の熱が強く「日本で撮りたいということだったり、時代劇の企画に非常に興味を持っており、その後でいろいろな企画提案があり、企画開発もしている。配信系の大型時代劇の企画も考えている」という。「国内+海外の共同製作で京都を活性化したい」と語った。

吉村社長は東映入社後、関西支社でイベント業務、本社に異動後も展覧会事業に携わってきた。「お客さまと常に接してきたので、お金を払う人が喜ぶことをやるのが一番ということは肌身で感じています。そういうことをやってきた人間からすると、特に映画製作において、そこがずれた、薄くなっていたと感じるので、そこは戻したい」と自身のビジョンを語った。(つづく)

◆吉村文雄(よしむら・ふみお)1965年(昭40)2月3日、鹿児島県生まれ。88年に立命館大を卒業し東映に入社。16年6月にコンテンツ事業部長、18年6月に執行役員、20年6月に取締役ビデオ営業部門担当、21年4月にコンテンツ事業部門担当兼コンテンツ企画営業部長、同6月に常務取締役、22年7月に映像本部副本部長を歴任。手塚治前社長が23年2月11日に肺動脈血栓のため62歳で急逝したことを受け、同4月1日に社長昇格。

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