
俳優中村優一(37)が、「Re~星の王子さま」(8月20~24日、シアター・アルファ東京)でミュージカル演出に初挑戦する。フランスの作家、サン=テグジュペリの小説「星の王子さま」が題材。このほど日刊スポーツのインタビューに応じ「生きている限り、感じたり考えたりすることが詰まっている作品。見終えた人が、癒やされたなとか、明日から仕事頑張ろうとか。人間としての活動が楽しみになればいい」と意気込みを語った。【鎌田良美】
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もしも星の王子さまがやってきたのが、2025年の日本だったら-。名作童話が、令和の日本を舞台に生まれ変わる。脚本は、1月公開の映画「君の忘れ方」(坂東龍汰主演)を監督した作道雄氏が担当した。「大切なことは目に見えない」が「星の王子さま」が伝える不動のテーマ。「Re~」では原作の世界観を崩さずに「見えないものを見つけるためには、見えるものを大切にしなければならない」との意図が込められた。
現代ならではの悩み描写やコミカルな要素もある。「脚本を具現化するのは100%、僕の使命。照明から音楽、演者の演技も。各セクションのプロの力を借りながら、責任を持ってイメージや意図を明確に、最終的にはお客さまに示したい」と見せ方の大枠をかためている。
舞台を中心に活躍する今牧輝琉(21)DION(24)井澤勇貴(32)の3人芝居。仕事に悩みを抱える「僕」(井澤)が星の王子さま(今牧)に出会い、物語が展開していく。「音楽でも楽しんでいただけるんじゃないかな。3人の魅力を十分に味わっていただければ」と、生演奏で歌とダンスを盛り上げる。
ストーリーテラーの役割を果たす井澤とは過去に1度、配信番組で共演した。「役者としての経験値が一番ある方」と信頼を置く。「すごく広い劇場ではないので、井澤さんの空気感を感じてもらえると思うんです。この作品は人生の教科書というか参考書になると思っていて。作品を通して、井澤さんがこれまで生きてきたものを繊細に出せたらいいなと思ってます」。
王子さま役の今牧とは、ビジュアル撮影が初対面だった。昨年、今牧が主人公・越前リョーマを演じたミュージカル「新テニスの王子様」The Fourth Stageを観劇。たたずまいに目を奪われたという。「真ん中に立つのがぴったりな役者さん。僕が見に行った公演は、主人公だけどそこまで出番はなかったんですけど、最後のほうに出てきた時にやっぱり彼が主役だなと。立つだけで存在感を表せる」。
今作の役どころも、当て書きかと思うほど「ずれがなかった」と話す。「そのままでいい。今牧さんのまま立っててほしいです」。
キツネを筆頭に何役も演じるDIONについては、コロナ禍にアップされた1本の動画が強烈に印象に残っている。「ミュージカルナンバーを1人で8役やっていて。多彩な役者さんだなと衝撃を受けたんです。その印象が強かったので、今回大勢の役をやっていただくのが僕的には結び付いたというか。彼の技術を見せられるうれしさがあります」。DIONは米ニューヨークで舞台技術を学んでおり「クリエーターとして、ステージングや歌の部分でも彼の意見を聞きたい」と希望した。
芸能活動を始めたのは10代。3年ほど前から「ゼロから物作りをしたい」と制作側に活動を広げた。「俳優は取材や舞台あいさつで作品のことを話す機会が多い。でもちゃんとしゃべらなきゃいけない立場なのに、ゼロから関わってないから分からないことがある。それが徐々にむなしく、寂しく感じてきて。ゼロから企画したいと思ったのが始まりです」。
24年4月公開のオムニバス映画「YOKOHAMA」をプロデュースし、3部作の1つ「死仮面」で初めて監督に挑んだ。またDION主演、作道氏脚本の監督作「Sing with me」は、横浜国際映画祭2025の正式上映作品に。「死仮面からほぼ同じチームなんです。なので感覚としては、星の王子さまは第3弾というところ」。
俳優としても偉業を成し遂げたばかりだ。5月にテレビ朝日系「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」(日曜午前9時30分)に出演。05年「仮面ライダー響鬼」と07年「仮面ライダー電王」、22年「ウルトラマントリガー エピソードZ」に続き「仮面ライダー、ウルトラマン、スーパー戦隊」の3大特撮ヒーローを制覇した。すべてで“変身”したのはケイン・コスギ、谷口賢志と中村のみ。「3人しかいないので。すごいですよね。俳優として幸せだなと思いますね」。
今後も演者、制作の双方に携わっていきたいという。「俳優の時は制作のこと、気持ちは分かるんですけど、考えないで一役者として向き合う。監督や演出の時はゼロから関わってつくる。同じ中村優一なんですけど、すごい別になってまして。両方お話があれば、挑戦していきたいです」。
ただどちらでも、心構えは共通している。「人とつくったものを人にきちんと届ける。それが物作りの原点だと思うんで、そこを失わないように、大切にしたいですね。演出、監督としても、俳優としても。人に届ける。人を大切にする。そこを信念として頑張りたいです」と真摯(しんし)に見据えた。
◆中村優一(なかむら・ゆういち)1987年(昭62)10月8日、横浜市生まれ。04年「第1回D-BOYSオーディション」グランプリ。05年日本テレビ系「ごくせん 第2シリーズ」で俳優デビュー。同年、テレビ朝日系「仮面ライダー響鬼」。07年「仮面ライダー電王」。12年に引退も、14年に俳優業再開。仮面ライダー、ウルトラマン、スーパー戦隊の3大特撮すべてに出演している。企画・プロデュースしたオムニバス映画「YOKOHAMA」(24年公開)の短編「死仮面」で映画初監督。身長177センチ。血液型O。