
歌舞伎俳優の片岡愛之助(53)中村壱太郎(34)が15日、大阪市内で舞台「第15回永楽館歌舞伎」(9月30~10月5日)の取材会に出席した。
兵庫・豊岡市にある出石永楽館は、1901年にオープンした近畿最古の芝居小屋。2008年に復元され、愛之助はそのこけら落とし公演からすべて参加し、「ライフワーク」と語り、壱太郎も第13回公演以外すべてに出演している。
演目は「寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)」「口上」、そして、当地を舞台とし、2014年に永楽館で初演された「神の鳥(こうのとり)」を、東京・歌舞伎座での上演をへて、7年ぶりに凱旋(がいせん)上演する。
愛之助は「第15回の記念ということで、やはり『神の鳥』じゃないですか。凱旋公演ではないですけど、舞い戻って参りました。おめでたいものがないかと考えており、“寿”が付いているじゃないかと、寿曽我対面を選ばせてもらった」と説明。壱太郎も「15年振り返って、いろいろなものがここ永楽館でお兄さんとさせてもらって、どこか大きな劇場にかかる。僕らの“発信の地”だと思っている。15回続いたのは地元の皆さまのおかげ。ありがたく思っています」と語った。
現在、歌舞伎役者を描いた映画「国宝」が大ヒットしている。「国宝」は作家・吉田修一氏の同名小説の映画化作品。任侠(にんきょう)の一門に生まれながらも歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生をささげた主人公・立花喜久雄の50年を俳優吉沢亮、上方歌舞伎の名門に生まれ、将来を約束された御曹司・大垣俊介を横浜流星が演じた。
愛之助も鑑賞しており、「永楽館が映っており、『永楽館発見!』とうれしかった。すばらしい映画で、映画を見られた方が聖地巡礼じゃないですが、永楽館にいらっしゃってるみたいでうれしい」とにっこり。映画はレイトショーで見たそうで、終了後、自宅に帰っても興奮が収まらず、おもわず横浜に「めちゃくちゃ良かった」とLINE。すぐ我に返り、「あ、こんな時間に打ってしまった。寝てたら悪いな」と思ったそうだが、横浜から「めちゃくちゃうれしいです」と返事があったという。
横浜とはNHK大河ドラマ「べらぼう」の撮影で知り合い、初対面の際も「国宝」の話で盛り上がったそうで、「カットされた部分も全部見たい」。永楽館にも「国宝」を見たファンが大勢、訪れており、「(映画館にも)若い方が8割くらいいた。この方たちがみんな、歌舞伎に来てくれたらうれしい。こういう形で歌舞伎に興味を持ってくれるのはありがたい」と語った。
一方、舞踊名の吾妻徳陽で「国宝」の演技指導に携わった壱太郎は「永楽館が出てきたのはうれしかった。私も『藤娘』を永楽館で踊っており、懐かしい気持ちになった」。
映画で何度も取り直しをすることに「僕はやりたくない」と笑いながら、「吉沢さんと流星くんはすごい」と感銘。「若い人が映画を見て、歌舞伎に触れている。僕らがいろんな公演で言ってても、なかなか浸透しないし、実現できないことが、『国宝』という映画で歌舞伎を知ってくださってる。ありがたいこと。松竹座も動員が増えていると思うので、その流れが永楽館でも巻き起こってほしい。今年だけのムーブじゃないようにしたい」と意気込んでいた。