
物価高が続く中、寄席でも入場料の値上げが相次いでいます。今年6月から上野・鈴本演芸場、浅草演芸ホールの一般入場料が3500円となり、8月からは新宿・末広亭も同様に3500円に値上がりします。毎月1日から7日まで開催される浅草・木馬亭の浪曲定席も、4月から2400円から2500円となっています。
値上げはそれぞれに苦渋の決断だと思います。コロナ禍の時は観客が激減し、その後も常連客の中心だった高齢者がなかなか戻ってこないなど厳しい状況が続きました。一昨年あたりから客足も回復しつつあったものの、そこになんでも値上がる物価高が直撃しました。電気代、ガス代などの維持費も上がっていますから、今回の値上げも仕方がないかもしれません。
寄席は昼の部、夜の部ともに落語を中心に講談、漫才、曲芸、漫談などの演者が20人近くも次々と登場し、4時間という長い時間を楽しませてくれます。そういう至福の時間を3500円で過ごせることを考えれば、コストパフォーマンスは抜群にいいでしょう。さらに、高齢者のためのシニア割や学割、そして、仲入り後に入ると、割引料金で見ることもできます。木馬亭の浪曲定席も浪曲師が7人、そして講談から1人の計8人が出演し、こちらも4時間もたっぷりと浪曲、講談を楽しむことができます。さらに25歳以下は半額という格安料金です。
6日の日曜日に末広亭の昼の部をちょっと見に行ったら、1階席は満員でした。出演者の一人が「暑い時は寄席が一番ですよ。エアコンもきいて涼しいし、4時間も笑って過ごせるところは他にないですよ」と言うと、客席から「その通り」とばかりに大きな笑い声が起こっていました。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)