
倍賞千恵子(83)と木村拓哉(52)が実写では初共演した、山田洋次監督(93)の新作映画「TOKYOタクシー」(11月21日公開)が、このほどクランクアップを迎え、ティザービジュアルと特報映像が公開された。倍賞が木村を「じっくり向き合うことで、その奥にある豊かな才能が次々と出てくる方なので、お芝居していてとても楽しかった」と絶賛すれば、木村も「改めてすてきな方、本当にいとおしい方だなと思いました」と“相思相愛”ぶりをにじませた。
作品は、24年に日本アカデミー賞外国作品賞を受賞した22年のフランス映画「パリタクシー」(クリスチャン・カリオン監督)が原作。さえない日々を送る個人タクシー運転手が偶然、乗せた人生の終活に向かうマダムとの出会いを描き、木村は個人タクシー運転手の宇佐美浩二、倍賞は85歳の高野すみれを演じた。
撮影は2月から4月まで東京近郊で行われ、倍賞が諏訪さくらを演じた、山田監督の代表作「男はつらいよ」シリーズの舞台・柴又でも行われた。倍賞と木村の共演は、2004年(平16)のスタジオジブリのアニメ映画「ハウルの動く城」以来21年ぶりで、クランクイン当初は緊張感があったという。それが話す中で、木村が幼い頃に柴又にいたことや、共通の友人がいたことなど、互いに共通点があることが分かり、うち解けたという。一足先に木村がクランクアップを迎えると、倍賞がサプライズで駆けつけ、山田監督も交えてハグするほど固い絆が生まれた。
そうした関係性は、映像にも表れた。浩二がすみれをタクシーに乗せたところから始まるが、最初は「お客さん、行き先は?」「お伝えしたと思うけど」と、そっけなかったが、後半ではすみれが「運転手さんの初恋は? お相手はどんな人?」など質問攻めにし、浩二が「覚えてませんよ、そんなの」と照れると、「あらつまんない、照れてるのね!」と肩をパシッとたたく、楽しい掛け合いが展開された。
倍賞は「『今の演技、変だった?』って聞いたり、木村さんも『今のどうだった?』って聞き合ったりしていました。お互いに(お芝居が)うまくいくとハイタッチして、とても楽しく撮影をさせていただきました」と撮影を振り返った。そして「ものすごく豊かな才能を持ってらっしゃる人で、いろんな引き出しがたくさんあるんです。じっくり向き合うことで、その奥にある豊かな才能が次々と出てくる方なので、お芝居していてとても楽しかったです」と笑みを浮かべた。
木村も「山田監督という巨匠のもと、倍賞さんとご一緒にお芝居をさせていただく中で、なかなかOKが出ない時もありましたけど、悔しいという気持ちではなく、それさえも楽しいと感じられました」と、倍賞と共演した喜びをかみしめた。「OKが出た時も、もちろんうれしいのですが、倍賞さんと共演させていただき、その1つ1つの工程が楽しかったです」と、かけがえのない時間だったことを吐露した。
木村にとって、山田組への参加は06年の主演映画「武士の一分」以来、19年ぶりとなった。「こんなぜいたくで、こんなにハートフルな現場がめったにないので、巡り会えたことはすごくラッキーだと思います。山田監督が映画を作っている、映画を撮影しているという、原点のようなものを改めて考えさせてくださった現場でした」と山田組への参加が、得難い経験だと重ねて強調した。
倍賞の山田組への参加は、19年「男はつらいよ お帰り 寅さん」以来6年ぶりだが、今回はネイルサロンをやっている女性という、新たな役どころへの挑戦となった。「演技もそうですが、まずは先に爪(ネイル)作りから始まりました。最初は3時間半かかりました。ネイルと合わせて、独特な髪形も作ったのですが、衣装合わせの時、山田監督に『挑戦的な髪形にしてほしい』、『衣装もどこか挑戦的な雰囲気であってほしい』と言われたんです」と役作りを振り返った。そして「、それをいつも念頭に置きながら、私自身もこのような役は初めてで、挑戦しながら撮影を続けていました」と口にした。
木村は「フランスで製作された『パリタクシー』という作品を、山田監督が東京を舞台にしたらどのような作品になるのだろうかと、今から楽しみにしています」と期待した。倍賞は「私の大好きなイチョウ並木も本編に登場しますので、東京の景色とともにこの物語を楽しんでいただけたらと思っています。そして、映画を見終わった後に、なぜか皆さんが「ハイタッチしない?」と言いたくなるような、そんな気持ちになっていただけたらうれしいです」と呼びかけた。
◆「TOKYOタクシー」 タクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)は、ある日、85歳の高野すみれ(倍賞千恵子)を、東京の柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設まで送ることに。すみれは浩二に、幾つか寄り道を依頼し、次第に心を許していく中で、自らの壮絶な過去を語り始める。