
菊田一夫演劇賞の贈呈式に行ってきました。舞台「放浪記」などの作・演出で知られる劇作家菊田一夫の業績を伝え、舞台で優れた業績を示した芸術家を表彰する演劇賞で、50回目となる今年は演劇大賞に演出家の栗山民也(72)、演劇賞に長澤まさみ(37)、明日海りお(39)、甲斐翔真(27)、演出家の上田一豪(40)、特別賞に伊東四朗(87)林与一(83)が受賞しました。
伊東、林は長年舞台の功績を高く評価されたもので、登壇してのあいさつでも受賞の喜びが伝わってきました。伊東は「長年の舞台活動に対して賞ということでうれしかった。舞台人になろうと思ってこの世界に入ったので、舞台をほめられるとなんだかうれしいんです。芸歴はもうすぐで67年になるけれど、66年間に年に1度は舞台をやっていた。20代のころは400日続けて舞台をやっていた。今、壇を上がるときに手を借りたけれど、舞台に出ると飛んだり跳ねたりしているので、『あいつ詐欺師じゃないか』と思われるけど、舞台はそれだけの魅力がある」。舞台で世話になった人の名前も挙げた。「三木のり平さんには軽演劇の芝居のやり方を徹底的に教わり、後に役に立った。三谷幸喜さんの芝居もやってうれしかった。三宅裕司には無理やり座長をやらされて『伊東四朗一座』旗揚げ解散公演をやって、5回ほど(座長公演)をやりました。まだ元気でやっておりますので、どこかで転んでいるところを見たら、助けてください。選考委員の方が私を選んでくれたことがとにかくうれしい。伊東家の誇りです」
林は上方歌舞伎の名優初代中村鴈治郎のひ孫で、1958年に初舞台を踏んだ。60年代に東宝に入り、帝劇のこけら落とし公演に出演し、菊田の薫陶を受けた。「菊田先生のことをおやじと呼んでいました。おやじに褒められたことがなく、怒られる対象だった」と振り返り、「人生100年、200年といわれる時代。この特別賞は私への励ましだと思う。あと100年は頑張って舞台に立ち続けたい」
伊東は昨年、三宅が座長を務める「熱海五郎一座」の新橋演舞場公演に出演し、登場するたびに客席から大きな笑いが起こりました。林も昨年の前進座公演「雪間草」で千利休を演じ、存在感がひときわ光っていました。ともに80代ですが、舞台への意欲は衰えていません。今年も2人の舞台に期待したいと思います。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)