
俳優の小関裕太(29)が6月に30歳を迎える。2003年に子役としてデビューし、現在はフジテレビ系「波うららかに、めおと日和」(木曜午後10時)、テレビ朝日系「いつか、ヒーロー」(ABC制作、日曜午後10時15分)にレギュラー出演中。6月21日からはNHKドラマ「ひとりでしにたい」(土曜午後10時)も始まる。舞台、映画と各方面で活躍の場を広げる中、迎える節目をどう捉えているのだろうか。【鎌田良美】
★「ストレスない」
複数の撮影を並行した多忙な日々を、ゆったり穏やかな口調で語る。
「どの現場も優しい空気感です。でもそれぞれに違う。『ヒーロー』は桐谷(健太)さん、『めおと日和』は2人(芳根京子と本田響矢)のほんわかした空気になってますし、NHKの方は綾瀬(はるか)さんの空気感になってますね」
役柄はテレビ局の政治部記者に、昭和初期の海軍。6月放送開始の「ひとりでしにたい」では、30代後半にして「終活」を考える主人公(綾瀬)の弟を演じる。「(頭を)切り替えられるスケジュールにしてもらってるので、ストレスはないです」と話す。
終活ドラマ、といってもまだ29歳。人生をどう終えるか考えたことがあるかと聞くと、意外にも「あります」と即答した。
「60歳の時にどういう景色を見ていたいか。理想や夢を成し遂げるには、急にはかなわないなって、この10年ですごく実感して。流れに身を任せるだけだと意志のない歩みになる。なので40代、50代、60代に向けて理想を掲げたいなっていう思いでいます。そういう意味の“終活”ですが」
20歳になる直前、「思ったより大人じゃなかった」自分に戸惑った経験がある。だから30歳の理想像は早めに立てた。
<1>ハンカチを持っている男になりたい
<2>バーボン片手に靴磨きをする男になりたい
毎日洗濯し、乾かしてアイロンをかけ、折り畳んでまたすぐ使う。ハンカチを持ち歩くにはきめ細かさが必要だ。「そこに意識を持てる人は、細かいことに気が利いたり、やるべきことが精査された人物になれるのかなって」。<1>の大人像には、なれた実感がある。
<2>は余裕を持ち、夜の時間を楽しめる男の意。「そこへの理想はちょっと届かなかった」と笑った。最近、親交のある女優戸田恵子と久々に顔を合わせたという。「恵子さん、あれだけ偉大な方でもずっと走り続けてる。バーボン片手に靴磨きはもっと先かなって感じがしました」と、50歳の目標に置き直した。
★年を重ねる意味
年齢を重ねることをポジティブに受け取っている。子役でデビューして、芸歴は22年。「生徒役だったのが専門学生になり、大学生になり、就職し、部下役が多い時期もありましたし。最近は上司や先生、お父さんの役があったりとか」。役者を「自分が年を重ねる意味が仕事の中に生きてくる」職業と言う。
芸能界に入ったきっかけは、ディズニー映画「メリー・ポピンズ」を見てタップダンスを習い始めたことだった。ミュージカルにも多数出演し、枝葉のように伸びた縁は原体験へとつながって、4月にフレンズ・オブ・ディズニー・コンサート2025に出演。メリー・ポピンズの日本語吹き替えキャストである伊東えり、山寺宏一と共演した。
「3作品(ドラマを)やりながらのコンサートで、慣れないことだし、緊張感がありました。人、物、事柄もそう。本当にいろんなものがつながっていくなっていう面白さは(活動が)長いほどある」
常に前進し続ける中で、過去の自分に挑むことも。「今でもあの時の自分を超えたいなって思うのは『ごめんね青春!』です」。14年に放送された、宮藤官九郎脚本のTBS系日曜劇場で、トランスジェンダーの“コスメ”こと村井守を演じた。
「オーディションで勝ち取って、同年代と楽しみながらも切磋琢磨(せっさたくま)して、ハングリー精神も強かった。あの時の集中力とか、技術が全くない中で、何が正解か分からないけど頑張って、実った役だったなと思って。その時の感覚をいつまでも忘れないでいたいなっていう基準になっています」
俳優小関裕太はまもなく、30代のフェーズに入る。ちなみに、はたちの誕生日は大阪で過ごした。前日にバースデーイベントを行い、その夜日付が変わってから、赤ワインを飲んだ。当日は朝からユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)にイン。「USJはビールが買えるので、全然知らない通りがかりの人たちに見せつけながら。『飲めるんだぜ』って。太陽の下のビールがめちゃくちゃおいしかったです」と懐かしがった。
「ようやく40歳への、10年間の役作り期間が始まる。そのスタートなので。まだこれから模索する1年にはなると思うんですけど、どういう40歳になっていたいのか。自分と向き合いながら、それをプレッシャーに感じることなく過ごせたらいいなって思います」
「大人じゃない」と焦って20歳になったあの日から、「ハンカチを持てる男」をじっくり目指した10年間。1つ区切りをつけて、一層深みのある大人への階段をのぼりだす。
▼16年にミュージカル「DNA-SHARAKU」でダブル主演したナオト・インティライミ
この男、何層にもわたって魅力をさく裂させている。爽やかさにだまされちゃいけない。頑固者である。でも人一倍、柔軟。厳しい、しかし優しい。ふわっとしている。でも情熱的。相反する極端な顔を惜しげもなく見せてくる。
(舞台での初対面)当時、強烈に感じた2つのことがある。「好奇心旺盛」はゆうたのためにある言葉だということ。興味、探求、追求が普通の人の何十倍もある。もう1つは、どんだけ歌好きやねん! ゆうたは基本はお芝居の人間だが、それと同じくらいのパッションが音楽にも注がれている。楽屋でも道端でもずっと歌っている。よく楽屋でハモリ大会をしたな。
去年、写真展にも行ってきたが、感性豊かなゆうたの頭の中を、その目の奥を少しのぞけたみたいでうれしかった。まとまりのない文章になってしまったが、ゆうたをまとめようとしても無駄だとも思う。ずっとまとめず、くらげのように柔軟に「興味」というすてきな海を漂い続ける人なんだろうから。
◆小関裕太(こせき・ゆうた)
1995年(平7)6月8日生まれ、東京都出身。06年から08年までNHK「天才てれびくんMAX」のテレビ戦士を務めるなど、子役として俳優活動をスタート。18年「半分、青い。」でNHK連続テレビ小説初出演。24年ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」ロミオ役など。放送中の「波うららかに、めおと日和」では帝国海軍に勤める瀧昌(本田響矢)の同僚・深見龍之介役、「いつか、ヒーロー」では政治部記者・小松崎実役。特技はダンス、写真、利き食パン。180センチ。血液型AB。