
是枝裕和監督(62)が9日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた、短編映画「last scene(ラストシーン)」プレミア試写会に登壇した。Appleが展開する、iPhoneのみを使って写真や映画を撮影する企画「Shot on iPhone」の一環で、iPhone16Proのみの撮影に初挑戦した。同監督は「いろいろなものが、急速なモードで変わっていきますからね。どこまでついていくのか…作り手としては判断を迫られている」と率直な思いを語った。
「last scene(ラストシーン)」は、是枝監督が初めてタイムトラベル・ラブストーリーに挑戦し、脚本も手がけた。主演の仲野太賀(32)が演じた脚本家の倉田が、ファミレスで黒田大輔(47)が演じたプロデューサー村瀬とともにテレビドラマ「もう恋なんてしない」の脚本の改訂に取り組む。その後、50年後からタイムスリップしてきたという、福地桃子(27)演じる由比が店に現れる。由比から主演女優の孫であり、「もう恋なんてしない」の視聴率が低かったせいで未来の世界からテレビドラマが消えてしまったことを知り、未来を変えるために由比と脚本を書き直しに取りかかる物語。
是枝監督は、13年「そして父になる」、15年「海街diary」、17年「三度目の殺人」で撮影を担当した、写真家の瀧本幹也氏の存在が、iPhone16Proのみの撮影に初挑戦するにあたり大きかったと明かした。「話を聞いた時、瀧本さんだったら、すごく面白がって撮ってくれるんじゃないかと思った。瀧本さん前提でやってみようと思った。職人的なこだわりを持っているカメラマンで機能を全部、使う、貪欲な…楽しそうな瀧本さんが現場で見られて、幸せな時間だった」と言い、笑みを浮かべた。
劇中でも描かいた、ドラマと映画の未来について聞かれると「確実に道具が変われば表現が変わるので、僕は遠くから、それを見ているかな、という意識」と言及。「追いかけ始めると多分、難しくなるんだろうなと思いますけど、今回のような試みは、撮影って何だろう、お芝居って何だろう…プロって何だろうと考える、良いきっかけになった」と語った。