
ソープ嬢の主人公が祖母の介護を引き受ける。5月2日公開の「うぉっしゅ」はそんなWワークの日々を描いている。祖母役の研ナオコ(71)とともにW主演した中尾有伽(28)に聞いた。
1人暮らしの娘を「会社勤務」と信じて疑わない母親は「1週間だけ祖母の介護を引き受けてもらえないか」と依頼する。気楽に引き受けた娘は、昼は介護-夜はソープというWワークの日々を送ることになる。
「周囲に言いづらい仕事をしながら認知症のおばあちゃんの介護も引き受ける。お話をいただいた時は重い題材だなと思いました。でも、台本を読んでみると、むしろ明るいポップな作品だったんですよ」と中尾は言う。
企画、脚本、そしてメガホンを取った岡崎育之介監督は「ソープ店のスケベ椅子はもともと介護用品として開発されたものなんですね。それがソープ嬢と要介護のおばあちゃんという一見正反対の組み合わせを発想する出発点になりました」と明かす。
意外な組み合わせは、物語の中に心温まるエピソードを生んでいく。周囲に言いづらかったソープの仕事についても「すぐに忘れてしまう」祖母にはいつの間にか素直に打ち明けることができた。
「どんな仕事なの?」
「人を元気にする仕事かな」
「仕事はたいせつよ。生きる糧なんだから」
そんな祖母とのやりとりから、後ろめたさは薄れ、娘はほのかな誇りを抱くようになっていく。
中野は「ストーリーに合わせた順撮りだったので、専門家の方のアドバイスを受けながら介護の作業に少しずつ慣れていきました。そんな様子が自然に見えたらいいな、と。研さんはテレビで見ていたままの人で、優しくてちっとも偉ぶらない。いつの間にか自分の祖母のことを思い出していました。だから、研さんのセリフ1つ1つがまるで自分への励ましのように染みましたね。主人公の自己肯定感みたいなものが映像に出ていたらうれしいですね」と振り返る。
そもそもソープ嬢役には抵抗はなかったのだろうか。
「お仕事ものってあるじゃないですか。警察とか医療とか。実際に働いている人から見てどこまで自然にできるかっていう難しさは想像しましたが、それ以外の抵抗はなかったですね。風俗のお仕事はやったことがないのですが、俳優というお仕事と似ていると。自分じゃない自分になって、どんな風にしたら相手の人は喜ぶのか、『演じる』ことは同じだと。そんな風に気持ちを作りました」
祖母を車椅子に乗せて外出する終盤、笑顔の2人の周囲に大量のカラーボールが飛び交うくだりは、心温まるこの作品を象徴するシーンだ。
「私も1番好きなシーンです。撮り直しが何度もあって、ボールを拾い集めるスタッフの方はたいへんだったと思いますが」
【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)
◆中尾有伽(なかお・ゆうか) 1996年(平8)9月13日生まれ、東京都出身。モデル、女優として「キントーン」のCMや映画「窓辺にて」(22年)ドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」(同)などに出演。