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山崎育三郎(38)が27日、東京・東急シアターオーブで、自ら企画したミュージカル「昭和元禄落語心中」(28日~3月22日=同所、3月29日~4月7日=大阪・フェスティバルホール。同14~23日=福岡市民ホール・大ホール)取材会を開いた。
28日の開幕を前に「8年前にNHKのドラマで出会い、この作品はミュージカルにしても、魅力的になるんじゃないかと、自分の直感と妄想から始まったものが、こうやって形になって、いよいよ初日。ワクワクする」と目を輝かせた。
「昭和元禄落語心中」は、戦前から平成に至る落語界を舞台に、人々の生きざまを描いた雲田はるこ氏の漫画が原作。18年に実写化したNHKドラマに出演した山崎が、撮影中から作品性に魅了され「ぜひミュージカルにしたい!」と熱望。宝塚歌劇団所属の劇作家・舞台演出家の小池修一郎氏(69)に、所属事務所「研音」の同僚の明日海りお(39)と古川雄大(37)を交えての企画立ち上げを提案。小池氏も雲田氏に直接、ミュージカル化が可能か話を持ちかけ、快諾され、企画が実現。山崎が、ドラマ版に続き演じる天才肌で豪放磊落(らいらく)な助六、古川が努力家で繊細な菊比古(八雲)、明日海が落語家2人と、固い友情で結ばれ、懇意になる芸者みよ吉を演じる。
山崎は「壮大なストーリーを3時間以内にまとめるのが、すごく大変。稽古場の雰囲気が、すごく良くて穏やか。ワーッと言う人がいなく、静かに進んでいる」と、ここまでの歩みを振り返った。原作の雲田氏からは「先生は、歌うってどういう感じになるの? と思われていたようですけど、想像以上にはまっていると。こんなにマッチするんだ」と評価されたといい「うれしかった」と口にした。
若き日の助六と菊比古(八雲)が、その門下に入り、みよ吉とも縁のあった師匠(七代目八雲)を演じる中村梅雀(69)は「実は、こう見えて、はなし家の役をやるのは初めて」と明かした。その上で「私には、はなし家の血が流れている。私の父・梅之助の母親のお父さんは、二代目談洲楼燕枝(だんしゅうろう・えんし)という、はなし家。ついに、こういう役がきて、自然に溶け込める自分に血があるのかなと感じます」と笑みを浮かべた。
山崎は、日本のオリジナルミュージカルの創作という宿願を果たすべく、出演と企画を兼ねる。その根底には、12歳だった1998年(平10)に、シンガー・ソングライター小椋佳(81)が企画・音楽を担当し、87年~08年まで上演されたジュニアミュージカルシリーズ「アルゴミュージカル」の「フラワー」でデビューしたことがある。同シリーズは基本、原作のないオリジナル作品を上演してきた経緯があり、山崎は同作への出演という自身のルーツからも、日本ミュージカル界の発展のためにオリジナルミュージカルの創作は不可欠と思い続けてきた。
この日は、歳を重ねて大名人となった八雲に弟子入りする与太郎を演じる、黒羽麻璃央(31)も出席した。
◆「昭和元禄落語心中」 昭和最後の大名人・有楽亭八雲に、押しかけ弟子入り志願した元チンピラ・与太郎。内弟子など一切取らぬはずの八雲が、何のきまぐれか与太郎を受け入れることに…。そこから始まる、夭逝(ようせい)した伝説の天才落語家・助六と、彼の影を追いながら1人、落語界に残された八雲の、知られざる因縁噺とは…。「ITAN」(講談社)で10~16年まで連載され、13年度の文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第38回(2014年度)講談社漫画賞一般部門、17年には第21回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。23年には「BE・LOVE」(同)5月号に「昭和元禄落語心中 番外篇~栃木市立美術館展覧会レポ~」が掲載された。