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5月「團菊祭五月大歌舞伎」「六月大歌舞伎」(いずれも東京・歌舞伎座)で、8代目尾上菊五郎を襲名する尾上菊之助(47)が14日、都内で取材会を行い、襲名に向けての思いを語った。「團菊祭」に坂東玉三郎の出演が決定し、市川團十郎も出演調整中であることが発表された。
菊之助は「5月が近づいてきて緊張感が増してきました。先人たちの知恵を受け継いで、心情で役になりきることをしていくことは変わらずやっていきたいと思います。時代物、世話物、舞踊と歴代菊五郎が名優ぞろいなので、その方たちに恥じないようにつとめたいと思います」と話した。
あと数カ月で長らく名乗ってきた菊之助の名前と別れることになる。18歳で「弁天娘女男白浪」の弁天小僧などで菊之助を襲名した時を「とても自分では納得できず、どうしたら先人たちのように舞台に立てるだろうと考えたのがスタートでした」と振り返った。先輩の指導や、蜷川幸雄さん、宮城聰さんといった演出家との出会いにも触れつつ「とにかく自分の至らなさと向き合い、自問自答してきた菊之助(時代)でございました。これからも自分に厳しくするのは続けていきますし、芸に終わりはなく、一生掛けて磨き上げるものだと思っています」と語った。
また、6代目菊之助を襲名する長男丑之助の様子を聞かれ「私よりも緊張していると思います」とし「私が父の背中を見てこの世界を目指したように、子供に生きざまを見せられる役者にならなければと思いました」と話した。
「團菊祭」昼の部「京鹿子娘道成寺」では、玉三郎が、新菊五郎、新菊之助と3人で白拍子花子をつとめる。菊之助は「ただありがたいの言葉につきます。女形最高峰の玉三郎さんとご一緒することが、丑之助にとって将来、とても大切な時間になると思います」と感謝した。
女形舞踊の大曲である「京鹿子娘道成寺」は、92年に菊之助(当時丑之助)が、祖父尾上梅幸さん、父で7代目菊五郎と3人で白拍子花子をつとめた縁のある演目でもあり「祖父が没して30年。祖父も喜んでくれていると思う」と話した。
同じく昼の部、襲名演目の前に團十郎の弁慶、新菊五郎の富樫で「勧進帳」を上演する方向で調整中とした。初代菊五郎が2代目團十郎に見いだされたという歴史などを語った。
5月の襲名演目はほかに「弁天娘女男白浪」、6月は「菅原伝授手習鑑」「連獅子」。
3月31日には音羽屋にゆかりが深い神田明神で、襲名披露のお練り、成功祈願を行う。