市川團十郎(46)が21日、都内で行われた新橋演舞場1月公演「双仮名手本三升 裏表忠臣蔵」(25年1月3日から)の取材会に登壇した。
あだ討ちの定番として知られる「忠臣蔵」だが、「私が子供のころは、忠臣蔵をやればお客さんが入るっていうのが歌舞伎の中での暗黙の了解だったが、近年、忠臣蔵をやってもお客さんが入らない」と残念そう。「あだ討ち、主君を思う気持ちを貫く日本人の魂みたいなものの理解度が薄れてきてるんじゃないのかな」とし、スピンオフも交えながら「こういう提案もあるのでは、というような気持ちで挑みたい」と意気込みを語った。
主君の切腹の発端となった権力者の振る舞いについて、「ただのパワハラです」とし、「権力を持ったおじちゃんがパワハラしてるだけの話。それを現代の方々にももうちょっとわかりやすく、『そりゃそうなるわな』としたい。傲慢(ごうまん)な、周りのことが見えていない、資本主義の上の方にいるおじいちゃんたちみたいな人物像を歌舞伎として表現していきたい」。
ここまで話すと「パワハラという言葉だけが表に出るのは良くないんだよね」と大笑い。「全部聞いた上で、『パワハラのような』という言葉に作り変えてください。『パワハラ』って(見出しに)出ちゃうじゃない。そういうのが昨今のマスコミさん、困るんだよね。よろしくお願いします」と笑顔で補足した。
大石内蔵助に相当する大星由良之助について「これが日本の人間であるということを描きたい」という。「勤勉だし、真面目だし、忠義だし。今の我々は、真面目に働き、時間通りに来て、仕事もきちんとやってもなぜか報われないような部分が多かったりしますよね。こういう昨今の日本の中で、報われる忠実な男を描きたい。忠実な男、誠実な男が報われる男にしていきたい」。
また「一生懸命頑張っただけの幸せを、日本人は感じてるの? ってとこだと思うんですよ。意外とそうでもないじゃないですか。それを背負った男を演じたい」と話していた。