稲村梓(33)十河茉由(23)がダブル主演を務める舞台「フラガール'24」(東京・赤坂RED THEATERなど)が1日から開幕し、2人のほかメインキャストのなすび(49)、脚本・演出の羽原大介氏(59)が見どころなどを語った。
第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞にも輝いた06年公開映画の脚本を手がけた羽原氏による、2年連続の舞台版第5弾で、映画とは脚本も変更して届けている。昭和40年代の福島県いわき市の常磐炭鉱を舞台に、町おこし事業として立ち上がる常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)誕生までを描く物語。炭鉱労働者たちの絆にもフィーチャーした昨年を経て、今回は再びフラダンスに励む少女たちの物語を色濃く描いた。
羽原氏は「基本的には出演者に合わせて、見る人により伝わる物語を心がけています。ここまでの集大成的な物語になったのではないかなと思っています」とうなずいた。演出家つかこうへいさんに長く師事し、「当てがきで物語を進化させていくことを現場で学んできました。今回もオーディションでしっかり見て、どう進化させていったらいいのかを考えました。脚本を書き直してさらに稽古場でブラッシュアップして。いらないものはそぎ落として、増やすものは増やして作りました」と力を込めた。
そのオーディションから選ばれたメンバーの1人が、連続出演する稲村と主演コンビを組む十河だ。いわきの炭鉱労働者一家からダンサーへ挑戦する少女役で、現在放送中のNHK連続テレビ小説「おむすび」出演中の中村守里(21)が同役を演じた昨年の舞台を見て、オーディションを受けた。夏場からダンスの稽古やなまりのある方言でのセリフなどに励み「(中村を)まねするのは違うと思って、途中までは昨年のDVDも見ずにやってきました。舞台は毎公演で全て違うものが生まれますし、お芝居って楽しいなと感じています。母とぶつかるシーンが多いのですが、私の覚悟と決意も見ている方に伝わったらいいなと思っています」と話した。
レッスンについては「きつかったです。なかなかお尻が回らなくて、家で『回らないな~』と思いながら練習したり。こういう感覚なんだとつかめてからは早かったですけど、ソロのシーンもありますし、(ダンスを)できないといけない役。頑張ったので、ダンスシーンにも注目してくださったらうれしいです」と笑顔で話した。
東京公演後は仙台、そしていわきでの公演も予定されている。羽原氏の手がける「フラガール」がいわきで上演されるのは2019年1月以来。福島出身で地元テレビやラジオ番組などに多く出演する、なすびは「福島民からすると、ものすごいモチベーションですよ。福島のみなさんに恥ずかしいものは見せられない」と意気込む。すでに多くのメッセージも受けているといい、福島県内で知人の会合に出席した際には「その場で20枚くらいチケットが売れた」と明かした。「フラガールは映画のこともあって福島では伝説の物語になっています。自分は普段はタレントやお笑い芸人の枠で見られていると思うので、役者として見てもらえるのはうれしいですね。(いわきの)内田広之市長も見に来てくれないかなあ」と呼びかけた。
いわき公演では特別演出も用意しているといい、羽原氏やなすびが市長の表敬訪問を行ったほか、サッカーJ2いわきFCのホームゲームでのチケット即売会実施や高校生のフラ競技大会「フラガールズ甲子園」での告知など、周知活動にも力を入れている。前回のいわき公演にも出演していた稲村は「演出やせりふもアップデートされていますし、このせりふはあの子だから生まれたんだなという場面も随所に散らばっています」と語り「福島の会場は東京公演の会場と比べてもすごく広かったですし、ハワイアンズさんが近くにあるプレッシャーもあります。頑張っていきたいです」と気を引き締めた。
今回はフラガールズ甲子園出場経験のある伊藤わこが出演するなど地元凱旋(がいせん)となる役者も多い。羽原氏は地方公演について「またやりたいと常々思っていましたし、前回からなすびさんと出会って『どうせやるならいわきで』というお話もありました。また夢がかなって気合十分です」と語る。十河も「SNSで福島の方から観に行きますとメッセージもいただいていますし、良いものをお届けしたいです。自分にとっては初主演作になりますし、みんなで力合わせて見ている方に元気とパワーを届けながら、私も成長できたらいいなと思っています」と決意を込めた。
東京公演は10月1日から6日まで。10月23日から24日まで仙台銀行ホール イズミティ21 小ホール、同26日から27日まで、いわき芸術文化交流館アリオス中劇場で上演する。