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分断の米国に突きつけられた残酷な未来 鬼才がリアルに描く「シビル・ウォー」


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舞台は分断の末に内戦が勃発したアメリカだ。否応なく3年前の議事堂襲撃事件が頭に浮かぶ。

「エクス・マキナ」(15年)などで、近未来を象徴的に描いてきたアレックス・ガーランド監督が、新作「シビル・ウォー アメリカ最後の日」(10月4日公開)ではリアルにメスを入れている。

大統領の強引な手法をきっかけに内戦が激化する中、ニューヨークのホテルには歴戦の戦場カメラマンや記者が集まっている。

長年コンビを組むカメラマンのリーと記者のジョエルに、脇役感の強いキルステン・ダンストとワグネル・モウラ。リーの師匠格のベテラン記者サミーに貫禄たっぷりのスティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン。このシブいキャストがいかにも記者らしいシニカルな雰囲気を醸し出してリアリティーがある。

この3人にカメラマン志望ジェシーが飛び込み参加。メディアとの接触を断った大統領のインタビューを目指してワシントンへの旅が始まる。

ジェシーにふんするのが「プリシラ」(23年)のヒロイン、ケイリー・スピーニーで、文字通り華を添えるとともに「一般人の目」となって、内戦の残酷さを映し出す。

ワシントンまで車で1379キロの行程は、凄惨(せいさん)なリンチや狙撃の恐怖の連続で、「地獄の黙示録」(79年)のウィラード大尉(マーチン・シーン)の旅を思い出す。

制度を変えて「3期目」に居座る大統領に反旗を翻したのはテキサス、カリフォルニアを中心とした西部勢力だ。

民主、共和両党がそれぞれ強い州をまぜこぜにして、現実の分断とずらしているところはガーランド監督の「これはフィクションです」という「お断り」なのかもしれない。それだけ、この展開が今のアメリカにはリアルということだろう。

どんなに劣勢でも大統領を裏切らないシークレット・サービスの姿は忠誠心というよりも、融通の利かないお役所仕事を象徴しているように見える。冷静に「仕事」をこなす正規軍の兵士が最後に大統領をクソ野郎呼ばわりするところに憎しみの連鎖の果てを実感させる。

民主主義の根幹とも言える選挙結果を覆そうとした現実の元大統領に、その行為の「行く末」を突きつけているようにも見えた。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

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