パリ五輪の興奮に続き、28日（日本時間29日未明）からいよいよパリ・パラリンピックが開幕する。世界約4400人のパラアスリートが、12日間にわたり22競技549種目で熱戦を繰り広げる。
国際パラリンピック委員会（IPC）特別親善大使として、無観客で行われた21年東京大会にも携わった香取慎吾（47）は、パラ会場に戻ってくる声援に感慨もひとしお。選手たちから「やってくれる感」を感じているという。【梅田恵子】
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ファッションやアートに造詣が深い香取にとって、パリは何度も訪れている大好きな場所。応援してきたパラアスリートたちの戦いがいよいよ始まることに興奮している。
香取 開会式はシャンゼリゼ通りからコンコルド広場にかけて行われるんですよね。「あの場所に選手たちが行くのか」と思うだけでわくわくします。セーヌ川で行われたパリ五輪開会式に続き、パラリンピックもどんな演出になるのか楽しみですね。東京の時は、IPC特別親善大使として人生で初めてパラスポーツに1歩踏み込んだ大会だったので、開幕を楽しむより緊張感の方が強かったんです。今回は「始まるぞパラリンピック！」という高揚感でいっぱいです。
東京大会は、新型コロナ感染拡大にともない、史上初めて無観客で行われた。メダルプレゼンターとして会場に招かれ、厳戒態勢の試合会場を体感している。
香取 国立競技場で陸上（男子400メートル、車いすT52）の佐藤友祈選手の金メダルを授与させていただいたのですが、大きな会場に観客がいない感じがなんともいえなくて、今思うと涙が出てくるような。ホームを実感できる声援がない中、みんな頑張って素晴らしい記録を出していた。今回はたくさんの観客の声援がありますからね。どんな戦いをしてくれるのか楽しみです。
11歳で芸能活動を始め、ステージに立ち続けてきた。観客の目線、声援、拍手の力を知り尽くしている。
香取 コロナ禍の時は、僕も無観客でライブをやったりしたんですよ。リモートや配信という新しいエンタメの形が生まれた良さもあるけど、僕自身は客席に誰もいない中で歌うのって本当につらくて（笑い）。お客さんのパワーを受け取って、こっちのパフォーマンスがさらに上がる、みたいなことって本当にたくさんあるので。
パリで、選手たちは東京の時以上の力を発揮できると期待している。
香取 僕もコロナ禍の経験が力になっている。選手の皆さんからも“やってくれる感”を感じます。そもそもパラアスリートの人たちは「できないだろう」と思われたりしている中でスポーツを始めて、勝つために日々鍛錬している。負けず嫌い感がより強いと感じるので。
実際、パラスポーツ界は強気でおもしろいキャラクターの宝庫という。
香取 東京で金メダルを授与させてもらった佐藤選手はとんでもないですね。「必ず金メダルはとるんで。そこは大丈夫なんで。それよりも一緒に写真撮ってくれませんか」とか（笑い）。冷静でかっこいいんですよ。車いすテニス界のスター、小田凱人選手はインスタ見てもサングラスでキメキメのバキバキ（笑い）。プレーもすてきですから、ぜひ注目してほしいです。
体験してみて、奥深さを知った競技も多い。
香取 水泳で、ブラインドの選手がターンする時にタイミングを知らせる「タッパー」役ををやらせてもらったことがあるんですけど、タイミングが難しくてめっちゃ怖かったです（笑い）。マラソンの伴走者もそうですが、選手とサポートする人との呼吸も大きな見どころですよね。あと、個人的にハマっているのは球技の「ボッチャ」。一式、家にあります（笑い）。戦略的で面白いし、ダーツバーみたいにボッチャバーもあればいいのに。
パラスポーツというと「壁を乗り越え」という福祉の視点で受け止められがちでもある。IPC特別親善大使に就任して7年。選手や競技と接してきた香取は「スポーツとして楽しんでいいと思う」と話す。
香取 僕自身、最初に平昌冬季パラリンピック（18年）を見に行った時びっくりしたんです。車いすの選手が倒れた時に、応援している人たちが「あ～、何やってんだよ～」みたいにフラットにリアクションしていて。僕はなかなか慣れなかったけど、確かにそうだよね、スポーツだもんね、これがオリンピックだったらそうなるよね、って。選手と話していても、そうやって普通に競技を楽しんでほしいと言う。会場に足を運ぶとそれを実感できるんです。
パラスポーツの魅力は「知らない世界が広がっていること」という。
香取 生まれたときからという選手もいれば、事故に遭ってという選手もいる。もし自分が事故に遭ったらその先は暗闇になってしまいそうだけど、パラを知って、その先に光はあるんだよと教えてもらった。
パリ・パラリンピックで、スター選手が生まれることを心待ちにしている。
香取 野球に詳しくなくても、大谷翔平選手のおかげで野球を見る機会が増えた人は多いはず。何のジャンルでも、スターが出ることが注目への近道。イヤでも目につくようなスターの登場を期待したいです。
○…香取が着ているTシャツは、フランス国旗と日の丸をひとつにするイメージで自身がデザインしたもの。「パリでも日本の選手たちに活躍してほしい」という願いを、青、白、赤の3色に込めたという。自身のファッションブランド「ヤンチェ オンテンバール」の公式ホームページでも披露している。
◆香取慎吾（かとり・しんご）1977年（昭52）1月31日、神奈川県生まれ。88年に11歳でSMAP入りし、91年にCDデビュー。NHK大河ドラマ「新選組！」（04年）主演。00年には「慎吾ママのおはロック」がミリオンヒットを記録し、「おっはー」が新語・流行語大賞に。17年、稲垣吾郎、草なぎ剛とともに日本財団パラサポスペシャルサポーターに就任。18年に3人で国際パラリンピック委員会（IPC）特別親善大使に就任した。これまで応援チャリティーソング「雨あがりのステップ」の売り上げや、香取の「NFTアート」の売り上げを全額寄付している。
