『声優口演ライブ したコメmeets 小津安二郎』が16日、東京・浅草公会堂で開かれ、観客はキャストたちの質の高い演技に酔いしれる一夜となった。
17日から19日までの期間に東京・上野や浅草周辺で行われる“したコメ”の愛称で親しまれている『第9回したまちコメディ映画祭in台東』。その前夜祭として、小津安二郎監督の無声映画『淑女と髯』を、声優口演として上演することとなった。
今年は、声優・羽佐間道夫、野沢雅子、山寺宏一、土井美加、真殿光昭、たなか久美をはじめ、今村一誌洋、虎島貴明、冨沢竜也、成田遼、峰かずこ、宮澤はるな、皆川壱毅、藤川マサミが登壇することに。
イベントがスタートすると、音楽に合わせて踊るような感じでキャストらが姿を見せる。羽佐間からの勧めで、たなかからあいさつすることになったが、たなかが、自身の演じたことのあるキャラクターを自己紹介に入れたことから、ほかの面々もさまざまなキャラクターを一言演じてくれるサービスが。ただし、羽佐間だけはキャラクターをやることができないそうで、「みなさんのイメージが壊れるから、ちょっとやってはいけないと言われていて」という裏話をぶっちゃけて、観客を納得させることも。
作品について、羽佐間は「『淑女と髯』は1931年に作られていますから、そこに日本の家屋とか文化とかう文明が詰まっているんです。それと、こういうのが日本の女性と思っていらっしゃったのではないかと思います」と、解説しつつ、小津監督の無声映画は17本あるということで、今回がうまくいった際には「17本にアタックしたい」と、抱負も。
そして、いよいよ本番へ。ナレーションを務める羽佐間の語り口で物語を転がし、山寺の軽妙洒脱でときに差し込まれるギャグ、野沢の色っぽい娘さんの演技。それでいて字幕の部分にはしっかり合わせてくるという、高いレベルの技術を次々と披露し、場面ごとに笑い声があがる。さらに、山寺は、「おならネタとか、どっかでおならを入れてやろうと思います」と予告していたが、予告通り入れ込むこともあり、その場面では観客も大爆笑といった感じに。エンドクレジットが画面に出るころには万雷の拍手が場内を包むこととなった。
75分という熱演を終え、山寺が「これだけ長いのも珍しいですね」と、無事終えられたことに胸をなでおろし、羽佐間は「字幕の間での演技をはめていくのに、僕らもだいぶ手こずってけいこしたんです」と、しみじみ。
さらに、野沢がたおやかなヒロインを演じたことに羽佐間は「こんな愛おしい女性を表現できるのは、ああいうことがあってもこういうことがあってもできるというのが彼女の地位があるんだとつくづく思いましたね」と、感想を口にすると山寺は「普段、毎週、かめはめ波を放っているとは思えない」と、あいづちを打ち、観客の笑いを誘うことに。
初参加のたなかは、「リハーサルから緊張していたんですけど、山寺さんが自由で毎回面白ものを持ってくるんです。それで、野沢さんと笑い合っていて、マイクに乗ってしまうんじゃないかと思いました。勉強になりました。本当にありがとうございました」と、いい経験になったという話。真殿は、「大先輩に囲まれて、稽古のたびに黙っていても、いろんなことを教えて頂けるんです」と、感謝しつつ、羽佐間が若いころ使っていたというタキシードを貸してもらったということも明かし、「しかも、『特攻野郎Aチーム』の羽佐間さんが演じられているハンニバル大佐が大好きで、その羽佐間さんの衣装でこの舞台に立てるというのが光栄で」と、喜びも口にしていた。
そして、山寺から「小津監督は『東京物語』からこういうコメディーまで作って本当にすごいと思うんですよ。映画界の魔術師、いや魔法使いだと思うんですよ……」というと、羽佐間が「っていうことは……」と、合いの手が。続いて、全員で「“オヅの魔法使い”!!」と、ダジャレを唱和し、山寺が「オズ違いでした(笑)。これがやりたかったんです」と、ツッコミを入れ笑わせると、最後は野沢が『ドラゴンボール』の孫悟空の必殺技「かめはめ波!」を全員でポージングして、今後の声優口演としたコメの成功へ向けて勢いをつけていた。