アニメ『ガールズ&パンツァー 劇場版』(監督:水島努)ミリタリートークショー付き上映会が2月5日、東京・新宿バルト9で開かれ考証・スーパーバイザーを務めた鈴木貴昭氏、軍事評論家の岡部いさく氏、イタリア軍研究家の吉川和篤氏、フィンランド軍研究家の齋木伸生氏が登場し、司会は杉山潔プロデューサーが務めた。
“ガルパン”の愛称で親しまれているアニメ『ガールズ&パンツァー』は、戦車を使った武道『戦車道』が大和撫子のたしなみという世界を描いた作品として2012年から13年にかけTVアニメ放送。放映後もファンからの熱い声援は続き、舞台となった茨城・大洗町は“聖地”として観光客が連日訪れ、14年7月にはOVA『これが本当のアンツィオ戦です!』が発売された。ファンが待ちに待った本作だが、出来に感動したファンたちが「ガルパンはいいぞ!」という言葉で現し、それが流行るほどの現象になることも。興行収入も10億円を突破するという大ヒットで、それを記念してのトークショーとなった。
ミリタリー監修スタッフが勢ぞろいするという珍しいイベントとなったが、会場は満員の人であふれかえる中スタート。
ほぼ1国につき1人の監修者がいるという本作。本日登壇の4人の立ち位置について、齋木氏は「僕が担当したのはフィンランドです。劇中にBT-42が出ましたけど、当初BT-42がどのようなものなのか分かる人がいなかったんです。日本でBT-42のことが分かるのは某模型メーカー以外では2人くらいしかいないので。ロシア戦車の資料も持っているので、そのへんもちょこちょこ担当させて頂きました」と、説明。
続けて、吉川氏は、「OVAからイタリア戦車の監修をさせて頂きました」と話せば、岡部氏は「私は実は何も…」と言いかけたが、杉山プロデューサーから「これからオーディオコメンタリーをしてもらいますので」と、補足。そして鈴木氏は全体的な監修で、「脚本会議にも参加していて、どんな作戦をやるかというのを考えました。本作では、これだけ監修の人がいるので楽できるかなと思っていたんです。そうしたら、まぁ毎日いろんなメールが来て全然減ってなかった(苦笑)。でも、『萌えよ!戦車学校』を書いた田村尚也先生がガッツリ入ってくれたので、両方にメールが送られて、それを先に見たほうが返事を書くということをしていました。田村先生は影の功労者の1人ですよ」。
それぞれ、本作への感想について、鈴木氏は、「いまだに観て泣きますね。あのシーンってどうだったかなと思って、劇場に足を運ぶ。非常に難儀な作品ですよね(笑)」と、何度も鑑賞に訪れているそう。岡部氏も「心を真っ白にしてただただひたすら楽しめました。全編楽しいですよ。まさか、30回以上観に来ることになるとは思わなかった」といい、吉川氏は「試写会のときに観てからとんでもない映画ができたと思いました」と、うなずく。
齋木氏が、「戦車と付き合って40年ですけど戦車の映画ができるというのが嬉しいですよね。ミリタリー的に空と海を扱う映画は格好いいんだけど、戦車はどうやっても格好悪いんだよね。それを、これだけ綺麗に美しく感動的に描いてくれた。大感謝ですよ」と、しみじみ話すと、岡部氏は「いままでの戦車映画でも出て来るのはせいぜい2、3種類くらいでしたし」と相づちをうち、吉川氏は「出ても動かなかったりしますし。この作品は、戦車映画のジュラシックパークですよ」といい、杉山プロデューサーは「戦車映画のスパロボです。夢の対決ですよ」と、どんどん話がヒートアップしていくこととなった。
アンツィオ高校のアンチョビ、カルパッチョ、ペパロニの3人で乗るCV33型快速戦車について吉川氏は「3人乗せると聞いた時に、無理ですと言ったんです。そもそも3人はあそこに入らないと。やるとしたら、ペパロニの後ろに燃料タンクがあるので、あれを外して、ドラム缶でも積むかという話をしたんですが、形状が変わるとCGが作り直しになるので(笑)結果むりくり入ってます。きっちりどこに座っているか実は分からなくなっているので、みなさん想像で楽しんで頂ければ」と、裏話を。
吉川氏によるとこのCV33について、「田村先生がすごい理論派で、CV33がひっくり返った時に、『キャブレターに燃料が行かないので、実際エンジン回らないんですけどどうしましょうか?』と言ってて。そこまで考えなくて良いからという気持ちも分かるし、潰していきたいという気持ちも分かるんです。それにCV33はラジオがついてなくてつけるとなるとでっかいアンテナをつけないといけないんですけど、みんなしゃべってるからそういう世界なのでいいですって」と、議論もかわされたそうだ。
(後編の『ガルパン劇場版資料のためにフィンランドで“捜索願”!「結果として戦車マニアの夢」な仕上がりに』へ)
※記事内画像は©GIRLS und PANZER Film Projekt
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