多くの場合、ベンチには捕手登録された選手が2~4人おり、スタメンマスクを被った選手に代打や負傷などでベンチに下がっても代わりの捕手は数人います。ところがアクシデントなどが重なり交代捕手を使いきってしまう場合が稀にあります。こうなった事態でも当然試合放棄するわけではなく急遽捕手経験などがある選手を臨時でキャッチャーとして出場せることも。今回はそんな緊急事態でマスクを被ることになった選手を紹介します。
阪神:今成亮太 2016年4月
現在はタイガースアカデミーのコーチとして子供たちに野球を教えている今成氏。現役時代は主に内野手で三塁手として活躍していましたがある日、突然マスクを被ることに。
2016年4月、中日戦9回表、1点差で阪神が負けている場面で今成選手が代打で出てヒット出塁しつなぐと最後の捕手選手の次打者に代打・福留選手が送られました。そして福留選手が同点タイムリーを放ち同点になると、9回裏の守備から内野手登録の今成選手がキャッチャーの守備に。
というのも今成選手、まず高校から日ハムに捕手として入団。暫く捕手として過ごしましたが、阪神にトレードされると捕手登録のまま内・外野手を経験。それでもこの中日戦でマスクを被ったのは3年ぶりだったそう。キャッチャーのコールがされると入念にピッチャーとサインの確認。バッターのファウルチップがマスクを弾き飛ばすなど奮戦しますがあえなくサヨナラ負けを喫してしまいました。
楽天:銀次 2019年4月
主に一塁を守る銀次選手。2017年にはゴールデングラブ賞も受賞していて守備にも定評がある選手が今シーズン、急遽捕手として起用されました。
オリックス戦のこの日、スタメンマスクは嶋選手でしたが途中で代打が出され足立捕手に交代。そして3点ビハインドの9回の攻撃、足立捕手に代打が送られ同点に追いつくもののキャッチャーを使い果たした楽天は一塁手としてスタメン出場していた銀次選手をキャッチャーとして起用しました。銀次選手ももともとはキャッチャーとして入団。下積みが長かく途中、内野手にコンバート。この日が1軍初マスクでしたが何と盗塁阻止までして見せ球場をわかせました。結局延長12回引き分けに終わりましたが4イニングをキャッチャーとして守りました。
西武:星秀和 2012年5月
高校時代はパンチ力のある捕手として西武ライオンズに入団した星秀和氏。打撃力を買われすぐに内野手に転向しましたが、とあるきっかけで再びマスクを被ることに。
2012年5月の楽天戦。この日はスタメンに炭谷選手、DHの上本選手、控えに星孝典、そして1軍捕手経験者でこの時は外野手登録されていた米野選手と捕手につける選手が4人いました。しかし上本選手は途中交代、炭谷選手も代打が送られベンチへ。米野選手も代打で起用され後に星秀和選手と交代。マスクを被っていたのは控え捕手の星孝典選手でしたが、終盤の8回、本塁クロスプレーをめぐりアンパイアに詰め寄り退場処分になり、西武は全捕手を使い切ってしまいました。ここで登場したのが星秀和選手。急遽捕手としてマスクを被り9回を三者凡退に打ち取りました。秀和選手もこれまでプロの1軍公式戦で捕手出場をしたことはありませんでした。
ロッテ:マイク・ディアズ 1990年7月
89、90年の2年連続3割30本塁打100打点を記録していたスラッガー、ディアズ選手はシルベスター・スタローンに似ていたことからニックネーム「ランボー」として愛されていた人物。普段は主にDH、外野手として出場していました。
90年、金田正一監督はかねてよりディアズ選手のキャッチャー起用を構想しており、自身の乱闘謹慎明けの復帰戦でディアズにマスクを被らせました。身体が大きく的として有能との声もある一方サインが単調と指摘するピッチャーもいましたが翌シーズンもキャッチャーとして出場するなど一定の効果はあったようです。しかし91年、捕手としてスローイングした際、右ひじを骨折。この影響でバッティングも不調となり92年限りで解雇となりました。
肉体的にも精神的にも負担が大きい捕手。また投手との相性で起用することも多くなり近年はスタメン合わせ3~4人の捕手をベンチに入れるチームも。守備スキルを優先させるためか代打を送られることも多いため試合終盤に使い切ってしまうということがあるようです。今回紹介したシチュエーションは稀におこるケースなので目の当たりにするとちょっと胸熱ですが、全試合出場する正捕手を見てみたいと思うのはオールドファンのわがままでしょうか。ちなみに2018年、全試合出場した捕手はただ一人、ロッテの田村龍弘捕手だけでした。
- 週刊プロ野球データファイル
Fujisan.co.jpより