最近、ビジネスの場でもカジュアルな装いを取り込みオシャレに着こなすファッションがトレンドです。でも ビジネスとカジュアルの要素をミックスさせ品良く着崩す、いわば“ぬけ感”のある装いなどは上級テクニックです。
「自分にピッタリとくるデザインも分らないし、それを聞ける店員さんのいる馴染のブランドもないんですよ…」と20代の編集部男子たち。聞けば、ネット通販がほとんどでアパレル店舗に立ち寄ることもないそうで、手頃なアイテムをネットで取り寄せては、なんとな~く着ているそうです。
「格好よく着こなしたいけど、そもそもサイズとか店ごとにバラバラじゃないですか?」と、困り顔の編集部員たちと話しながら、ふと、思い出したのがアメリカンカジュアル大手の通販ブランド「LANDS’ END (ランズエンド)」です。
昨年10月に渋谷で「ランズエンド メンズ・フィッティング・ラウンジ」というイベントを開催し話題になったばかり。「LANDS’ END」のシンプルで上質なカジュアルウエアはビジネスの場にも良くマッチします。
そこで今回は、日本ランズエンド株式会社の代表取締役社長 稲辺裕樹氏に、通販アパレルブランドとして取り組みや、カジュアルファッションの着こなしについて伺いました。
LANDS’ END(ランズエンド)とは?
通販カタログを中心に展開する「LANDS’ END」(以下、ランズエンド)は、1963年にアメリカのシカゴで誕生したブランドです。ヨットマンであった創業者、ゲリー・コマーがヨット用具の店を出し、アウトドアウエアを一緒に販売したのが始まり。ちょうど今年は55周年という節目の年で、日本ではデビュー25周年を迎えます。
店舗を持たずにお客様から注文を受けるという点で、カタログもネットも同じ。チャネルのコンタクトポイントの多様化ということで、いちはやくインターネット通販に進出しましたが主軸はあくまで通販カタログにあります。
カタログはランズエンドにとって自己表現の場でありプロモーションのツールでもあります。インターネットは欲しいものがあれば一発検索できますが、逆に一覧性が低く、どのような商品があるのか伝えきれない面もありますよね。
その点、カタログはファッション雑誌のようにパラパラッとめくるだけで、新商品をはじめ、思いがけず理想のアイテムに出会うことができます。そこから、スペック、サイズ、ディテール、コーディネーションなどの詳しい商品情報はインターネットで検索し、気に入ればその場で決済するというのが今の流れです。
しかし、カタログにせよインターネットにせよ困ったことがひとつある。それは商品を手に取ることができないため採寸が難しいことです。特にパンツ、ジャケットの採寸は難しく、どの通販会社さんもこの問題に対し、さまざまな取り組みを行っています。
ランズエンドでは、実際に商品を取り寄せ色やサイズを確認してから交換できる「楽替サービス」や、以前購入したアイテムと現在販売しているアイテムのサイズをECサイト上で比較できるツール「バーチャサイズ(Virtusize)」を導入するなど、さまざまなサービスやアイディアで解決を試みています。
写真)ランズエンドのコールセンター。オペレーターが座るブースはそれぞれ独立しており、注文をいただくお客さまのプライバシーに配慮しています。
S/M/Lというサイズのない世界
ファッションというのは、色や素材などの他に、サイズ感の違いもコンセプトのひとつです。身体のラインにあわせてスリムであったり、ダボダボと余裕のあるサイズでデザインを主張させてみたり、国や地域、ターゲットの年齢層によっても違いますよね。
このように、ブランド(もしくは商品)によってサイズ感に統一性がないのは仕方のないことですが、購入される側としては不便なことも多いと思います。
ランズエンドは、日本で展開されている品は一部の商品をのぞき日本人の体形に合わせて型紙を作り直し仕立てられています。日本女性の身体数値データ研究をもとに開発した「美型シルエット」など、独自のアイテムも充実していますが、お客さま、お一人おひとりの情報をもとにサイズを選べるならばそれがベストです。
話題になったZOZOスーツのように、S/ M /Lといったサイズのないフルオーダーメイドの世界は、ランズエンドのようなベーシックでシンプルな品をご提供しているブランドにとって親和性が高いと思っています。
フィッテングというコミュニケーションの場を設ける
とはいえ、採寸に関して完璧にお応えすることは現段階では難しいものがあります。そこで開催したのが「ランズエンド メンズ・フィッティング・ラウンジ」というイベントです。これまでに2回開催していますが、いずれも大変好評で2回目の開催では4日間で1600人以上の方に足を運んでいただきました。今年は会場を1.5倍ほどの大きさにし、お客様によりくつろいでいただけるようにと10月に向かって調整中です。
写真)「ランズエンド メンズ・フィッティング・ラウンジ」の様子。/広報ブログより。出典 http://landsend-blog.jp/blog/
目で見て、実際に着て、触っていただいて、ご自身のサイズ感を掴んでいただく。ブランドをより知っていただく機会にもなり、フィッテングを通じてスタッフとの距離をぐぐっと、近づけるコミュニケーションの場でもあります。
私たちも、商品のこと、オペレーターのこと、そして「自分にふさわしい佇まいが欲しいが、どうしたら良いか?」といったコーディネートのお悩みもたくさん伺い、多くのことを学ばせていただきました。コーディネートをふくめサイズの相談にのれるのが、このイベントの良さ。ネットやECサイトのテクノロジーがどんなに発達したとしても、このフィッテングイベントは定期的に続けてゆきたいと思っています。
出典 http://landsend-blog.jp/blog/
アメリカンカジュアルとは何か?
今、日本ではビジネスカジュアルというファッションスタイルが定着しつつあります。スーツスタイルほど固すぎず、プライベートよりはラフすぎず、カジュアルウエアを上手に取り入れ、適度にリラックスしたスタイルです。
そもそも、一般的にアメリカで生まれたブランドをアメリカンカジュアルと呼びます。もともとはアウトドア・労働着・ミリタリーなど過酷な状況下で快適に作業を進めるための作業着で、機能的でよりコンフォータブル、動きやすいのが特徴です。
その機能性と合理性がファッションとなり表舞台に出てきたのが“アメリカンカジュアル”。そこからTシャツ・ジーンズ・チノパンなどの新しいアイテムが生まれ、ライフスタイルのなかに溶けこみ、現在では街で着るものとして受け入られています。
ランズエンドもヨットというアウトドアスポーツが発祥です。本社がアメリカの寒いエリアにあるため、故にアウターウエアは特に優れています。今のタイミングならば、天然素材と機能性素材を組み合わせた防寒性の高いものが売れ筋。なにせ、ヨットマンが始めたアパレルメーカーの品です。雨に強いダウン「ハイパードライ」や、高機能中綿の「サーモプリューム」など耐水性や保温性において強力です。
(写真)ちょうど、ギフトの季節にうかがいました。
ファッションの基本を知ることが大切
もし、コーディネートに悩まれているならば、まずは基本を学んでみることがオシャレへの第一歩ではないでしょうか?
私は“装い”とは、ある種の教養だと思っています。欧米の人達にとってスーツは文化であり「こういう場面では、このような装いをしなければいけない。こういう色の組み合わせは避けた方が良い」などの基本は家庭で教わります。
ファッションのカジュアル化が進んだとしても、ベースとなる部分を知り、きちんと身に着けたうえで着崩してアレンジしてみてはいかがでしょう。自分らしさを追及するのはそれからでも遅くはないですよね。
型を壊しても、型を知っていれば迷ったときに元に戻れますし、大きな失敗をすることも少なくなります。それを知らずに商業的な情報などに流されて、やみくもにマネしまうのはもったいない。ベースとなるものを見つけ知るのが20代~30代だと私は思っています。
そういった意味で、ランズエンドのコーディネートはベーシックです。1つの参考になると思いますので、ぜひ、カタログやWEBマガジンを見ていただけると嬉しいです。それから“良いモノ”に、なるべく若いうちに触れてみるのも大切。良いモノの定義はさまざまですが、こだわりのあるもの、丁寧で気持ちのこもったものに間違いはないと思っています。
稲辺裕樹(いなべひろき)
1993年、SCジョンソン入社。ブランドマネジャーとして、新規ブランドの日本への導入、既存ブランドの市場シェア拡大に貢献。2001年、オフィス・デポ・ジャパン入社。マーケテイング・ディレクターを経て、常務執行役員及び経営企画室長。2010年10月、日本ランズエンド シニアマーケティングディレクターに着任。2011年10月1日同代表取締役社長に就任。/カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にてMBA(経営学修士)取得。
インタビューの後に本社内を案内いただきました。写真は、ランズエンドの人気サービスのひとつ“刺しゅうでカスタマイズ” 。毎月、新しい刺しゅうのモチーフが増えるため、現在の取り扱いが一目でわかるようになっています。
注文すると、イニシャルやモノグラミング(名入れ)、モチーフ、エンブレムなど、さまざまなアイテムにワンポイント刺繍を施してもらえます。プレゼントやチームウェアにぴったりですね。
写真)バラエテイ豊かな刺繍のサンプルたち。この繊細な刺繍もランズエンドのこだわりです。
お忙しい最中、取材を快く引き受けて下さった稲辺裕樹社長をはじめスタッフの皆様、ありがとうございました。