両親が実は誘拐犯ムービー
カンヌ受賞で騒がれている映画『万引き家族』は家族を万引きしてきた一家の絆のお話でした。現在公開中の映画『ブリグズビー・ベア』は、両親だと思っていた夫婦が実は誘拐犯だったムービー! 目の前で突然の逮捕劇! 知らないオジさん&オバさんが登場し、本物の両親だと伝えられるんです。なぜか、そのシュチュエーションを素直に受け入れる主人公がユーモラス&シュール。
冒頭から、かなりパンチの効いたエピソードですが、全然、重くないんです。むしろ、ユーモラスなヒューマンドラマ仕様になっております。偽の父親を「パパ……じゃなくて、古いパパ」と言い直すシーンが爆笑!!
監禁生活の洗脳
今まで、外は有毒ガスがあると教えられ、室内でのみ育ってきた主人公は、外の世界で様々なカルチャーショックを受けていきます。
そんな中、1番の衝撃が主人公を襲います。それは、タイトルになっている教育番組「ブリグズビー・ベア」。20年近い監禁生活の中で、主人公が楽しみにしてたのは、毎週、届く「ブリグズビー・ベア」のVHS。ブリグズビー・ネタを研究、ネット配信する毎日を送ってたんですね。でも、その番組は偽のパパのお手製。主人公しか観てなかったんです!!
手が掛かり過ぎだろ! というツッコミは置いといて、ブリグズビー・オタクにカスタマイズされた主人公は、番組の続編映画の製作を決意!! Google先生の教えの元、電光石火の勢いで映画製作を学び、自主製作メイトたちと映画作りにフルスロットル!!
アホ展開が感動のクライマックスへ
本当の両親からすれば、まだ外の世界へ出てきて間もない息子が、キチガイ夫婦お手製の洗脳番組の続きを作るなんて不安でしかない訳ですね。そこへカウンセラーも介入。事件担当の気の良い刑事も巻き込んで、なかなか賛同を得られない主人公。それが愛と友情と感動のクライマックスへ向かって行きます。
YouTube出身監督の小ネタ
本作は、YouTube出身のデイヴ・マッカリーによる長編デビュー作品。新人ながら、YouTubeにアップしていた動画をスピルバーグが絶賛。アメリカの人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」に関わった事が本作への足掛かりに。そんなマッカリー監督は、オタク系監督と見えて、小ネタ満載なのも本作の楽しみポイント。
教育番組「ブリグズビー・ベア」はVHSで保管されている事もあり、ちょっと劣化している設定。リアルなノイズが出る辺り、その世代にはグッとくる小道具。主人公が人生初のパーティで話し掛けた男の子が『スター・トレック』Tシャツを着てるというのも気が利いてます。
さらに、偽者のパパ役は『スター・ウォーズ』のルーク・スカイウォーカーことマーク・ハミル。誘拐犯でありながら、ただの悪人ではない好感度を見せ、勝手に『万引き家族』のリリーさんと被って見えます。『スター・ウォーズ』以降、「役者はもういい。声優になろう!」とアニメの声優業にも転身した経験のあるハミル。日本ではあまり馴染みがないですが、アニメ版『バットマン』のジョーカー役で有名。この声優業で学んだ手練手管は、本作のブリグズビーの声でも発揮。アニメ声を録音するシーンは爆笑必死!!
リアルとファンタジーを行ったり来たりするキュートな作品好きにオススメの一本!!
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Fujisan.co.jpより