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糖質制限は日本人に不向き!痩せたいときこそ摂るべき糖質(炭水化物)の効果とは


2016年、2017年のダイエットトレンドといえば“糖質制限”(炭水化物抜きダイエット)。そのブームは2018年になっても衰える兆しがありません。

糖質制限ダイエットの新しい点はカロリー制限をしないこと。“肉や魚を食べながら痩せられる”というメソッドが世のダイエッターたちの心を捉え、またたく間に広まりました。その影響からか、「お肉を食べたい場合は、とりあえず主食であるお米やパン、麺を抜けば太らないから大丈夫!」と考える人も多いようです。

しかし、極端な炭水化物抜きダイエットは、健康的なカラダづくりに必要な栄養素の一つを抜くことになり、しいては「第二の脳」と呼ばれ、私たちの健康維持にかかせない腸の劣化を招く要因になりかねないようです。

先日、都内で開催されたセミナー『炭水化物の正しい理解と選び方』では、腸と食物繊維の関係に詳しい、松井輝明(まつい てるあき)帝京平成大学 健康メディカル学部 健康栄養学科教授と、理学療法士で、柔道日本オリンピック委員会強化スタッフでもある、岡田隆(おかだ たかし)日本大学 体育学部 スポーツコンデショニング研究室准教授が登壇し、それぞれの立場から、糖質制限ダイエットと炭水化物との関係について説明しました。

なぜ、炭水化物を制限してはいけないのか?

松井教授は、「炭水化物=糖質であるという勘違いをしている人が多い。炭水化物とは「糖質」と「食物繊維」の総称であり、糖質を制限することで食物繊維の摂取量も減少させてしまっている」と話します。

ならば、食物繊維は炭水化物でなく“野菜”を食べて補えば解決じゃない?と思った方!

厚生労働省が発表する「日本人の食事摂取基準」によると、食物繊維の一日の摂取量は男性ならば1日に20g、女性は18gとなっています。20gの食物繊維がどのくらいの量かというと、キャベツならば1.52、ブロッコリーならば2、長ネギなら1520です。

…簡単に摂取できる量ではないですね。

これについて松井教授は「食物繊維は野菜に最も含まれているイメージが定着しているが、実は、米や麦といった炭水化物にも多く含まれます」と説明。つまり、野菜だけでは食物繊維を補うことは難しくても、野菜と質の良い炭水化物をバランスよく食べれば、極端な食物繊維不足には陥らないと考えられるのです。

食物繊維不足が招く恐ろしいリスク

近年、日本人の食物繊維摂取量は減少気味で、厚生労働省の「平成27年 国民健康・栄養調査結果の概要」によると、日本人の年代別食物繊維摂取量は、20代男性で13.1g/女性は11.8g。30代男性で13.3g/女性は12.5gだそうです。食事摂取基準である1日20gには足りておらず、特に減っているのは白米などの穀物由来の食物繊維です。

もともと、麦・雑穀ごはん・玄米などが主食だった日本人の食生活ですが、1966年以降は白米摂取量も減り続けています。1965年(昭和40年)と2016年(平成28年)の栄養摂取量の変化(※1)を比べると、炭水化物は72.1%→57.8%と減り、そのかわり増えたのが脂質で14.8%→27.4%となっています。

この食物繊維不足が原因で腸内環境が乱れ続けると、肥満、ストレス増加傾向、心疾患、糖尿病など…さまざまな健康リスクの発生が考えられ、なかでも、昭和22年~平成15年の統計(※2)において、死亡率の疾病原因として最も増加しているのが癌(悪性新生物)。特に近年、大腸がんは女性に多く発生し乳がんや肺がんを押さえ“なりやすい癌”のトップになっています。

こうした腸内環境の劣化は若年層にもひろがり、ダイエットに励む10代~30代では、腸の粘膜に連続的に炎症がおき潰瘍が発生する「潰瘍性大腸炎(UC)」や、患者数は1200万人と推計される、下痢や便秘を繰り返す「過敏性腸症候群(IBS)」の増加が著しいそうです。

水溶性か不溶性食物繊維か?

では、腸内環境を整えるために、効率よく質の良い食物繊維を摂るためには、どのような食材を食べれば良いのでしょうか。

食物繊維は水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と溶けにくい「不溶性食物繊維」に分けられ、それぞれ腸に対する役割分担が異なります。

例えば、キャベツ、レタス、ほうれん草などの葉物系野菜は「不溶性食物繊維」に分類され、摂取した食事の水分などを胃や腸で吸収して大きくふくらみ、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発化させます。他にも「いんげん豆」「とうもろこし」「きくらげ」「りんご」「ブロッコリー」※3などに多く含まれるそうで腐敗物質を絡め取り排出しやすくする作用があります。

対して「水溶性食物繊維」は、腸内活動を活発化させ健やかに保つ“善玉菌”のエサになり、便を柔らかくし排便のさいの滑りを良くします。水溶性食物繊維を多く含む食べ物としては、「らっきょう(生)」「なめこ」「おおむぎ」「アボカド」「海藻類」などが挙げられます。ちなみに「ごぼう」、「らい麦」「納豆」「にんじん」などは水溶性食物繊維、不溶性食物繊維ともに多く含みます。

※1国民健康・栄養調査 ※2厚生労働省大臣官房統計情報部 ※3文部科学省日本食品標準成分表

厳しいダイエットとトレーニングの場でも炭水化物は必須!

より強い柔道家を育てるためには栄養面のサポートが欠かせません。

柔道日本オリンピック委員会強化スタッフでもある岡田隆准教授は「日本最強の選手になるためには、強いフィジカルと質の高いトレーニング、そしてよく食べて、よく寝て、良い排便ができるサイクルをどれだけ続けられるかが大切」と語ります。

岡田準教授は、己の限界を超えたトレーニングを課して強い筋肉をつくるため、また、集中力を持続させるために日常的に炭水化物を400gほど食べ、試合前にはさらに色々な種類の炭水化物を口にするそうです。

トレーニングには強い精神力も必要ですが、その後押しするために栄養…すなわちエネルギーを体内に送り込まなければなりません。炭水化物に含まれる糖(グリコーゲン)は体内で分解され血液中に取り込まれ、やがて運動や代謝のためのエネルギーとして活用されます。

「グリコーゲンは、ガソリンのようなものでトレーニング直後に炭水化物を食べると回復具合が違う。炭水化物を摂らなければ集中力はアップせず、試合に影響することはもちろん、良いトレーニングを行うこともできません。ところが、昨今の糖質ダイエットの誤った認識からか、私がおにぎりを買うと「先生、それ、食べるのですか?」と生徒や代表選手にすら聞かれる」と、岡田準教授は憂慮しています。

インスリンをコントロールして良い筋肉を作る

このように、間違った解釈や誤解をされたダイエットの考えは他にもあります。

例えば、インスリン。血液中の栄養を細胞の中に取り入れる役目があり、このインスリンがないとどれだけ食べたとしても栄養が体内に吸収されないことになります。

筋肉を発達させるためには、このインスリンが欠かせません。しかし、インスリンは筋肉だけでなく脂肪細胞にもエネルギーを取り込むため、炭水化物を食べてインスリン分泌が増えると “太る”という一部の事実だけが独り歩きして拡散してしまっています。

もちろん、岡田准教授をはじめ選手たちも、余計な脂肪を削ぎ筋肉だけを増やすために、より筋肉に対してインスリンが働くような専門的なトレーニングを行うそうですが、炭水化物=悪という短絡的な考え方は間違っており、バランスの良い栄養摂取が大切だと岡田准教授は訴えます。

限界に挑むアスリートが選んだスーパー大麦

先に書いたように、炭水化物を抜くと食物繊維不足に陥ります。便秘はアスリートたちにとっても大敵。便通が止まれば、精神的にイライラするだけでなくカラダがむくみ、筋肉が美しく発達しないそうです。

岡田準教授は「お通じを良くするために発酵食品を食べますが、そもそも体内に発酵の元となる水溶性食物繊維がないと意味がなく、我々は少量でも腹持ちの良い、低糖質でありながら質の高いエネルギーと食物繊維が必要になってきます。そういった意味で、今、注目しているのがスーパー大麦です」と、最新の炭水化物事情を紹介しました。

週刊女性2018-03-27 発売号
Fujisan.co.jpより

スーパー大麦は、白米・玄米・大麦よりも糖質が低く、さらに玄米に比べて食物繊維は約7倍も多く含まれ、水溶性食物繊維・不溶性食物繊維ともに摂取できます。「個人的にですが半端じゃないくらいの便通がある。腹持ちが良く、口のなかでプチッと弾ける麦の歯応えがたまらない」と話しスーパー大麦の可能性を評価しました。

日本人に最適なダイエット方法は?

ダイエットの天敵と思われていた炭水化物が、オリンピックの代表選手を育成するようなトレーニングや厳しいダイエット現場でこそ活用されていることを知った今回のセミナー。どうやら、私たち日本人には「低・糖質」で「高・食物繊維」な食生活が適正であり、今や、炭水化物を“抜く”のでなく“選ぶ”時代のようです。

ちなみに、松井輝明教授によると、腸内フローラは世界的にみて、日本・ノルウェータイプ(ルミノコッカッス型)、欧米タイプ(バクテロイデス型)、そしてアフリカ・南米タイプ(プレボテラ型)と大きく3つのタイプに分類できるそう。

最新の研究では、日本・ノルウェータイプは、ビフィズス菌やフィーカリバムテリウム属が多く、日本人の腸には炭水化物を好む細菌が多く潜んでいることが分ってきているそうで、炭水化物を抜くなどの過度の糖質制限は国民的に合っていないダイエットのようです。

ダイエッターの皆さん、質の高い炭水化物を適度に摂ることこそが、美しく健康的に痩せる近道かも知れませんね。

 

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