海外で高く評価されている日本発のポップカルチャーといえば、「アニメ」「漫画」だ。
いまや“クールジャパン”の代表格として世界の共通語にもなっているが、じつはそこにもう一つ加わろうとしている日本文化があるのをご存じだろうか。「BENTO」だ。日本人には馴染み深い「お弁当」が、なぜ海外で話題なのか。
健康志向の外国人にぴったりだった
- ELLE gourmet(エル・グルメ) 2013-02-06 発売号
Fujisan.co.jpより
BENTOブームの中心地はフランスだ。フランスではもともと自宅に帰ってお昼を食べるというのが一般的で、お弁当持参の場合でも、リンゴやサンドイッチをそのまま持っていくケースが多かったという。そんなとき、日本の漫画を通じて“BENTO”の存在が広まった。
持ち運びしやすそうな小さな箱に、彩り豊かな数種類のおかずがバランスよく詰め込まれている。これまでのお弁当と比較すると、おそらく斬新だったのだろう。さらに「日本食=健康、ヘルシー」というイメージも手伝って、気づけば、フランス人の間でBENTOがオシャレでヘルシーな食事として浸透していたのだ。
BENTOの魅力はビジュアル
お弁当が“BENTO”として注目されたのは、SNSの影響もあるだろう。
日本でも数年前、親によるキャラ弁づくりが白熱し、TwitterやFacebookで自信作を投稿する人が多かった。一部の幼稚園では、園児の間で不公平感が出てしまうという理由から、“キャラ弁禁止令”が出たところも。
フランスでもまったく同じとは言わないが、日本カルチャー好きのフランス人がこれまでのようなタッパーに詰め込んだランチとの違いとして、ビジュアル映えする日本のお弁当を投稿したことで、一気に広まった可能性も大いにあるはずだ。
ユニークなお弁当は日本でも話題に
海外で話題のBENTOだが、日本のお弁当だって話題性では負けていない。
ユーモアという意味では突出している感さえある。たとえば、数年前、反抗期だった高校生の娘に、3年間毎日キャラ弁を持たせたというブログが話題となった。“嫌がらせ弁当”だ。海苔の切り抜き文字で「弁当箱出せよ」というメッセージが綴られたものから、映画『リング』に出てくる貞子をキャラ化したものまでさまざま。2015年には『今日も嫌がらせ弁当』として書籍化までされた。
また、市販品ではあるが、2017年流行語大賞にもなった「忖度」の言葉をもじってつくられた『忖度弁当』も売れ行きはともかく、SNSで注目を集めた。海外から見れば、単なるランチボックスにもかかわらず、これだけ世間的に話題になるのは、ひとえにお弁当が多くの人から愛され、親しまれているからだろう。
作り手の創造力こそ、BENTOの魅力
お弁当本来の目的は食べることだ。だが、単に食べることだけに特化していたら、外国人はもちろん、多くの人を魅了できなかっただろう。作り手の創造性、遊び心、思いやりをここまで食材で再現できる日本のBENTO文化もこうして考えてみると、日本人が大事にしたいカルチャーといえるはずだ。