猪狩ともかオフィシャルブログ(https://ameblo.jp/igari-tomoka/entry-12373913274.html)より
アイドルグループ「仮面女子」の猪狩ともかさん。強風で倒れた看板の下敷きになった事故で脊髄損傷となり両脚を動かせなくなりました。猪狩さんは、当面、車イスが手放せない生活を過ごします。本人は「リハビリを頑張る」と前向きな気持ちをブログに綴りファンの胸を熱くさせました。
車イスで生活するということ
この一件で注目したいのは「車イス」の存在です。今後、彼女が車イスを動かす姿をファンに見せることによって、世間の車イスに対する意識が少しでも良い方向へ変わればと思うのです。
これは、私が車イス生活者数名と話した時に出た内容。一部の声かもしれませんが一例として聞いてほしい。
まず、「一歩外に出れば、他人からすると面倒な存在であろうことは自覚している」とのこと。例えば、電車、バス、タクシーに乗るときは、人の手を借りなければ乗れない。「電車やバスの車内は、スペースも取るから邪魔と思われても仕方ない」。だから、なるべく迷惑に思われないように行動しているつもり。聞いていて凄く胸が痛かったのですが、「車イスに乗ってみないとわからないことだし」とたしなめられた。
電車は、朝夕のラッシュ時は避けて乗りますが、どうしても利用しなくちゃならない場合は、少しでも空いた時間に乗車する。でも、あからさまに嫌な顔をする人はいるそうです。ガラガラでもウザそうな視線は感じる。SNSを見ても「車イスの人はラッシュ時に乗らないでほしい」という書き込みはたくさんあります。車イスの人が空気を読めない人ばかりなのか? そんなにいつも車イスの人に迷惑をかけられているのか? どう思いますか。
わかってほしい「こんなことが大変」
車イスにはいろんなタイプがありますが、電動など高性能なものではなく手動でノーマルなタイプを使用している人が、「知ってほしい初歩的なこと」をいくつかまとめてみました。
【地面の凸凹】
車イスは普通、4輪車です。道路を進むと、思った以上に地面の凸凹が伝わるそうです。舗装されたアスファルトでもよほど新しくなければ小さな凸凹で細かく激しく揺れます。付き添い人が後ろから押してあげてもハンドルがガタガタ震えるのがわかりますが、このガタガタ、座っている人は下から全身に浴びていることになります。思ったより負担がかかり、かなり疲れるそうです。
【段差と坂】
付き添いがいない場合、たった5ミリの段差も越えるのが大変。だから階段の登り降りはほぼ無理です。そして、たとえゆるい坂道でも大変。建物の前に車いす用のスロープがありますが、あれも一人で登るのはなかなかきつい。また、坂の下りはブレーキやストッパーを上手に使わなければならず、飛び出す危険性もあるため怖いという人も多いです。
【多機能のトイレ】
車イスの人は、広い多機能トイレが有る場所のチェックはかかせないそうです。最近はコンビニなどでも増えましたが、都内の駅でも未だに設置していない所もあります。つまり出かける場所も限られるわけです。
その多機能トイレに入ったことがある人は多いと思いますが、「どうしてこんなに広いの?」と感じませんか? 車椅子に乗ってみなければわかりにくいのですが、乗ったまま反転するので直径150センチほどのスペースが必要になるのです。
貴重な多機能トイレなのに、スペースが広くてその機能を必要とする利用者が少ないからか、店のダンボール荷物や掃除道具が置かれていて困る場合も多いそうです。これじゃ意味がありません。
【専用の駐車場】
お店の出入り口に近い場所に、よく車イス専用の駐車スペースがありますが、普通は左右どちらかに広いスペースを設けています。「なぜ、こんなに空いているのか?」と思うかもしれませんが、これには理由があります。
車イスの人は車に乗る際、ドアを大きく開いて座席の横まで車イスを付け、体をスライドさせて移乗させます。また、車イス専用の乗用車を運転する人もいて、乗降時はドアを広く開けて車イスを置いたり仕舞ったりします。これには約120センチのスペースが必要です。だから広いスペースがあるんです。
車イスのシールが貼り付けていない車が、車イス専用駐車スペースに停めていることがあります。「どうせ車イスの人はこない」と思って停める人が殆どでしょうが、あれを見ると無神経さにがっかりします。
以前、店の人に注意を受けた若者が「他が空いてるからいいだろ」と怒鳴っているのを見ましたが、一般の駐車スペースに停めて買い物をし、戻ったら両サイドに車が停まっていたら車イスの人は乗れなくなります。それを知ってほしいです。
【エレベーター】
階段を使えないのでエレベーターはかなり重要な移動ツールです。バリアフリー型には車イスの人に優しい工夫がいくつか施されているのをご存知でしょうか。
車イス用のボタンは壁の低い位置に設置されているのは一目瞭然ですが、押すと通常より数秒長くドアが開いたままになります。車椅子の人が出入りしやすくするための配慮です。
正面の奥の面に大きな鏡が付いていますが、あれは車イスの人が正面から入った場合、出るとき背後が見えやすいから。
つまり、これらがないエレベーターは不便ということなんです。
正面に鏡がないと、入る時はバックからのほうが出るときに楽です。でも、ドアが空いている時間が短いので閉まるドアに挟まれたりもするわけです。各階などのボタンが縦に並んでいると高い場所に手が届かないこともあります。扉の溝が深くてタイヤが沈むため出入りしにくいこともあるそうです。
少し気づかってくれるだけで嬉しい
車椅子の人を見かけて、こんなことを思う人も多いはず。
「手伝ってあげたいけど、特別な扱いを受けたくないかも」
車イスの人は、できることは自分ですると肝に銘じています。それが当たり前だと思っていますから。
でも、「なにかお困りですか」「お手伝いましょうか」などと声をかけてくれると、けっこう嬉しいそうです。
例えば、段差でタイヤが乗り越えられない時は、やっぱり手伝ってほしい。でも自分からお願いするのはどうも気が引けるそうです。
トイレで順番を待っていて、多機能トイレが空いた時「先にどうぞ」と譲ってくれることがどれだけ嬉しいか。親切な声をかけてくれるだけで気持ちは嬉しいし、せっかくの善意にお願いすることもあるそうです。
こういった、車イス生活者の気持ちと健常者の気持ちのズレや意識の相違がもっと合えば、と思います。
2020年開催の東京五輪に向け、首都圏の建物におけるバリアフリー化は進行しています。環境を整えることも大事ですが、目が不自由な方や車イス生活者に対する健常者に向けての情報も充実させてほしいと思います。
- 車イス・足腰が不安な方の<じゃらん>バリアフリー旅
Fujisan.co.jpより