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音楽界の鬼才サティを愛する世界的アニメーション作家が描いた大人のための“怖い絵本”


今回は、今話題のアート絵本をご紹介。大人が楽しめるというより、大人だから楽しめるお洒落な怪物絵本(怪物図鑑)でございます。絵本のコーナーだけではなく、アート・カルチャー本のコーナーにも置かれるアートブックでございます。

 

本の帯にコメントを寄せている顔ぶれも、ヤン シュヴァンクマイエル(映画監督)様、柴田元幸(翻訳家)様、穂村弘(歌人)様、ミムラ(女優/エッセイスト)様と、かなりアート度・文学度の高い大人絵本でございます。

 

「怪物学抄」(著:山村 浩二)

 

表紙を見ただけで、子どもの絵本ぽくない、日本ぽくない、さらに、オシャレな短編映画ぽいと思われた方、多いのでは…。

 

正解!でごさいます。作者の山村浩二様は「頭山」で、日本人で初めてアカデミー賞短編アニメーション部門ノミネート、6つのグランプリ、さらに「カフカ 田舎医者」では7つのグランプリ。国際的な受賞は60を超えている世界的なアニメーション作家でございます。日本国内より海外での評価が高いアーティストでございます。実は、こちらの作品、絵本と短編映画と両方ございます。

 

この夏、山村様の最新短編9作品を集めた「山村浩二 右目と左目でみる夢」が公開になりましたが、その中に「怪物学抄」のアニメーションも含まれております。ちなみに、この「山村浩二 右目と左目でみる夢」というタイトルですが、「音楽界の異端児」、「変人」として名高い天才音楽家エリック・サティ様の作品「右や左に見えるもの~眼鏡無しで)」からインスパイアされたとか。

 

かなりユニークなタイトルの作品ですが、それだけではございません。サティ様は、楽譜に音楽記号以外に変なものを書くことでも有名で、この楽譜の中には「奥歯の先端で」という指示も書き込まれています。

 

さらに、サティ様にはこんな変人エピソードも。サティ様の死後、彼の部屋に入ってみると、まったく同じピアノが上下に釘づけされ、そのうち1台の鍵盤の部分が手紙入れに…。そこには、たくさんの手紙が入っておりましたが、すべて未開封。しかも、サティ様の凄いところは、すべてに返事を書いていたとか。

 

 

おそるべし天才音楽家、サティ様でございます。変人エピソードのオンパレードでございます。興味を持たれた方は是非、「サティ 変人」で検索して頂きたい。山村様も、そんなサティ様にハマってしまったお一人でございます。今回の作品の中にも、「サティの『パラード』」というサティを題材にした作品がございます。

 

そして、本題の「怪物学抄」ですが…

 

山村様は、子どもの頃から「怪物」に興味を持たれており、小学校の時作った初めての自作本の主人公も“ろくろ首”だったとか。そして、20代の頃は澁澤龍彦にかぶれ、ヨーロッパの幻獣に魅了されます。しかし、自分の仕事につながることはなく、そういう百科全書的なものは出来ないかなぁと思いつつ、時間が経っていきました。

 

そんななか、トロント・リールアジアン国際映画祭の20周年記念の作品を委託されます。その時に山村様は、20周年にかけて、20体のモンスターの作品を作れる!これで念願の百科全書的なものができる!と思ったのでございます。

 

ところが、アイデアを練り始めたら、出展作品の規定である2分以内には収まりきらない…。しかたなく、映画祭の作品は他の作品にすることに。しかし、「怪物学抄」は、断念しませんでした。一度火が付いた山村様は止まらないのでございます。その作品と同時進行で「怪物学抄」も作り上げてしまったのでございます。

 

 

ちなみに、「怪物学抄」に登場する怪物たちのタイトルは、「レントゲンケーキ」「筋肉質な暗闇」など、とてもユニークなのでございますが…。

 

実は、山村様は聞き間違えや、英語から日本語に直訳するとへんな言葉になるものなど、ある種のエラーのナンセンスに興味を持っており、ずっとそれを書き溜めていたそうで、それが今回の各怪物達のタイトルにもなっているそうでございます。是非、このタイトルだけでも読んで頂きたい。超シュールでございます。

 

夏はもう終わりですが、「芸術の秋」にも最適な大人でアートな怪物絵本でございます。是非一度、ご体験くださいませ。(文:NN昌)

 

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