チームラボ《風と雨と太陽の草原》©チームラボ
世界的な評価を集めるアート集団、チームラボの常設展「チームラボ:風と雨と太陽の草原」と「カンカン工場の草原のカフェ」が10月5日、大阪製罐(大阪府東大阪市)の製缶工場の隣にオープンする。
若江岩田駅(近鉄日本鉄道)から歩いて約10分。工場やレトロなアパートが建つ一帯に誕生した、チームラボの常設展とカフェ。並木道を進むと、まず待っているのは「カンカン工場ののぞきあな」。その穴から、製缶職人たちが働く姿や機械が稼働している様子を見ることができる。
チームラボ《光の海と光の海のための台座》©チームラボ
そんなカンカン工場に隣接する建物の扉を開けると、そこはカフェ。真っ暗な空間に輝くキャッシャーは、「光の海とそのための台座」と題され、波立つ光をイメージした作品になっている。また頭上には、「銅の化石」と名付けられたライトが灯っている。
チームラボ《銅の化石》©チームラボ
カフェスタッフに案内されてさらに暗幕をくぐると、大きな窓と鏡に囲まれた飲食スペースがある。11席設置されているが、鏡の効果でさらに奥行きを感じる空間となっている。
取材時に提供されたメニューは、黒イチジクがのった焼きタルト(「光の草原セット」の季節のケーキ タルト)。ほんのりとした甘みのイチジクをそのまま味わっても良いが、添えられたクリームをつける食べ方もオススメだ。セットメニューは「虹の草原セット」(季節のケーキ タルト、抹茶のわらび餅、季節のチーズケーキ)、「光の草原セット」(季節のケーキ チーズ、抹茶のわらび餅、季節のケーキ タルト)、単品ドリンクもENTEA水出し緑茶、自家製ジンジャエール、和歌山みかんジュースなどが用意されている(夜はアルコール提供もあり)。ちなみにメニューは随時更新される。
チームラボ《風と雨と太陽の草原》©チームラボ
そして常設展の見どころは、なんといっても「風と雨と太陽の草原」だ。この草原は、チームラボが提唱するコンセプト「環境現象」をテーマにしており、太陽の光が降り注いだとき、風が強く吹いたとき、雨が落ちたときによって見え方が大きく変化するという。もちろん、昼と夜でも草原の印象は違って見える。それらの環境現象を含めて作品化された。
晴れた日や風が吹くときには、まるで龍が空を飛んでいるような光景(作品名「風と太陽の空書」)を目にすることができ、強い雨の日の日暮れから夜明けまでは無数の光の塊が空中に浮遊するところが見られる(作品名「雨の儚い結晶」)。また、草原の中央付近に設置されている監視台のような階段をのぼると、水が吹き上がる仕組みとなっており、風のない晴天の真太陽時の正午頃(11時30分から12時30分)には、ゆがみのない完全な円形の虹(作品名「太陽の円相」)を鑑賞することができる。1度だけではなく、いろんなシチュエーションで何度も鑑賞することで作品の全体像が掴めるようになっている。
チームラボ《雨の儚い結晶》©チームラボ
チームラボ《太陽の円相》©チームラボ
そんな今回のチームラボの企画の起点となったのは、約4年前。「自分たちの利益や生産性を追求するだけで良いのだろうか」と、大阪製罐の清水雄一郎社長が疑問を持ったことだ。
清水社長は「東大阪は地価高騰、後継者問題などで中小の製造業が減ってきたんです。東大阪で商売を続けていく上で、未来に向けてどんな取り組みをするべきか模索していたとき、ご縁を通じてチームラボと出会いました。そして『境界のない世界』を作り続けているチームラボに共鳴しました。工場というのは閉鎖的で、他者を寄せ付けない場所でもある。しかしチームラボは開いたものを生み出してくれるのではないか。そう感じて思い切って相談をしたらご快諾いただき、企画が実現しました」と経緯を振り返る。
こうして出来上がった常設展とカフェ。清水社長は「東大阪は工場が多く、“色”が少ない場所。そんな町の一角が色づいた。これを機にいろんな方にご来場いただき、おもしろい場所になってほしい」と東大阪の変化を期待した。
「カンカン工場の草原のカフェ」は予約制で、専用サイトより予約ができる。また常設展「チームラボ:風と雨と太陽の草原」は、同カフェの利用者のみ体験可能となっている。