“なつめ”と聞くと、日本ではシワのある赤い干しなつめを思い浮かべる人が多いと思います。薬膳火鍋や参鶏湯、杏仁豆腐などにはいっている大棗(たいそう)と呼ばれる実ですが、それとは別に“インドナツメ”と呼ばれる果物があるのをご存知でしょうか。
小さな青りんごのような可愛らしい見た目で、主にインドやタイ、台湾などの地域で流通している生食用の果実で、旬は12月~3月。冬季(乾燥期)に出回る数少ないレアなフルーツとして珍重されています。なかでも台湾では人気で、品種改良が盛んに行われており、厳選された極上モノは高級品として贈答用にもちいられているそうです。
写真)瑞々しく、梨とリンゴがミックスされたようなさっぱりとした甘さが特長。
この台湾産のナツメ(以下、台湾ナツメ)の一大生産地である高雄市(たかおし)の陳其邁市長が、先日開催された「FOODEX JAPAN 2023」(3月7日~10日/東京ビッグサイト)の開幕にあわせ来日。東京都中央卸売市場葛西市場を視察したほか、台湾ナツメを紹介し、高雄産果物品種の多様性と質の高さをPRしました。
写真左から4人目)高雄市の陳其邁市長。
写真)市場に積まれた台湾ナツメ。
高雄市は台湾南部に位置する台湾第2の都市。気候は熱帯で水が美味しく、東シナ海(台湾海峡)に面した漁業と農業が盛んな土地です。2021年に発表された中国からの禁輸措置をきっかけに日本へはパイナップルの輸出が増えており、陳其邁市長は「台湾パイナップルは果肉が柔らかく芯まで食べられるのが特長。酸味と甘さのバランスがよい」と紹介します。
一方、台湾ナツメが日本のスーパーなどで販売されるのは今回が初めて。仕入れた株式会社マルエイ商事によると1箱20個入りで8,000円前後になるとのこと。400ケースを仕入れ、すでにすべて販売済みだそうです。
写真)株式会社マルエイ商事の代表取締役社長 田中伸幸氏に感謝状を贈呈。
ちなみに台湾ではナツメをお祝い事などの際にカラスミと一緒に食べる習慣があるそう。多くの漁港を抱える高雄市はカラスミも特産品。市長は「大切な人へ、美味しいものをシェアするのが台湾。カラスミもなつめも大切な日本の皆さまにお届けしたい」と高雄市の特産物をアピールしました。
写真)台湾ナツメとカラスミ。ともに高雄市の特産物。
一緒に食べるとカラスミの塩辛さとナツメの甘さが絶妙にマッチ。カラスミのねっとりとした旨味とナツメの爽やかな果汁が口のなかでひろがり幸せになります。皮ごと食べられるため切り分けるのも簡単。しゃきしゃきとした歯ごたえがなんとも気持ちよく、クセになる食感です。
マルエイ商事の田中伸幸社長は「日本では馴染みのない果物ですが、ナツメのさっぱりした味をお客様にちゃんと認知してもらえれば、どんどん販売できるのではないか」とコメント。まだまだ日本では手に入りにくい激レア果物ですが、店頭で見かけた際は、手にとってみてはいかがでしょう。