大手居酒屋チェーンの養老乃瀧グループが2008年にスタートした「一軒め酒場」が14年目にして大きなリニューアルを実施した。その店構えを手掛けたのは、数々の飲食店の店構えを手掛けて、売上アップに導いてきた有限会社ジャパンセントラルサイン。
同社の戸田大輔取締役に今回のリニューアルについて、さらに飲食店における「店構え」の役割について話を聞いた。
受賞をきっかけとした出会い
「一軒め酒場」を展開する養老乃瀧グループさんとの出会いのきっかけは、弊社が2022年に開催された焼肉ビジネスフェア主催の「店舗デザインアワード」に参加したことでした。
弊社はこれまで低単価の飲食店の外観や店構えのデザインやコンサル、ディレクションを行ってきました。初めは看板制作からスタートし、徐々にお客様を呼び込むための店構え全てを手掛けるようになったのです。
そこで店舗の外観・内装など新しい店舗のあり方の提案・発掘を目的としたこちらのアワードに参加する機会を得て、「店舗を一から作り直すよりも外観や内装をリニューアルとした方が、費用が抑えられるので、コストパフォーマンスも高いですよ」とお伝えしたところ、「ファインコンセプト賞」を受賞させていただきました。
この受賞をきっかけに、以前からお付き合いがあったサッポロビールさんの担当者から養老乃瀧グループさんを紹介していただいたのです。「本当に大事なお客様なので、くれぐれも粗相のないようにお願いします(笑)」と言われたことを覚えています。そのため、非常にプレッシャーを感じましたが、面談の機会を頂いたのは非常にありがたかったですね。
実際にお話をさせていただいて、最初は韓国居酒屋の「韓激 巣鴨北口店」の店構えを手掛けさせていただきました。そこで評価をしていただき、次は「一軒め酒場 川崎仲見世店」を手掛けさせていただくことになったのです。
一軒め酒場の魅力を店構えで表現する
【リニューアル前(左)とリニューアル後(右)】
養老乃瀧グループさんが行っていることは元々すごくレベルが高いものです。一軒め酒場では、サラリーマンの方がお小遣いで食べられることを大切に、全て350円までに抑えたフードメニューで、かつ品質の高い料理を出されています。
私もこれまでさまざまな飲食店の店構えを手掛けてきましたが、料理にここまでこだわっている飲食店は類を見ないものでした。そのため、一軒め酒場の料理のクオリティの高さを店構えでどう伝えるかというところがポイントでした。安さは確かに魅力ですが、それを一番押し出した外観では、どうしても料理の質まで低いようなイメージなってしまいます。
それはすごくもったいないと思ったのです。そのため、安さは数字で見せつつも、「おやじが喜ぶ こだわりの酒と肴だけの店」をコンセプトにして、料理に自信があるお店の特長を表現する店構えにしようと思いました。店構え全体では力強さや品質の高さ・懐かしさのあるような、どこかレトロな雰囲気にして、30代以上のサラリーマンを中心に引き付ける店構えを作っていきました。
リニューアル後は、総じて売上がアップしたというお話を聞いて、ホッと胸をなでおろしています。御徒町アメ横店でいうと140%アップしたというお話を聞いた時は非常にうれしく思ったのを覚えています。料理の質やサービスなど、お客様を呼び込むさまざまな要素のうち、店構えの役割はごく一部であり、自分にできることはほんのきっかけ作りだと思っています。 店舗の売上が加速度的に伸びていったのは、もともとお店が持っていたポテンシャルが高いことにお客様が気付き始めたことが、結果がに結びついたと思っております。
末永く続くお店となるようにサポート
お店の料理に対するこだわり、素材や調理法などはお客様からは見えづらいところなので、見える形にして伝えることが大切です。飲食店の方からすると、いつも当たり前にやっていることが、お客様からすると新鮮で「そこまでこだわって料理を作っているのか」という驚きになることがあります。そのため、店構えを作るときは、まずヒアリングに時間をかけます。お客様のために行っている努力や工夫などを、お店の前を通る人の中でターゲットになる人だけに響くようなに、文字やイラスト、写真など色々な手法を通して伝えるのが弊社の役割です。
ただ、お客様を呼び込みたいとなったとき、多くの飲食店の方はWebやSNSに力を入れたり、新商品の開発、チラシを配ったりしますが、店構えを良くしようと思いつく方はまだごくわずかだと思います。
店構えの広告価値というものは高く、一日何万人も通る場所に出店していたらなおさら広告効果は高くなります。店に入る人も入らない人もその店を見ているということですので、飲食店の方は他の広告手段と同様に、店構えも真剣に考えてほしいと願っています。
今の弊社の目標は、全国の内装屋、看板屋さんに弊社のノウハウを身につけていただき、その地域の飲食店が末永く続いていくための店構えを作っていくことです。そうやって共に全国の飲食店をサポートしていけたらと思います。
■プロフィール
愛媛県出身。1992年から看板の仕事に携わり、1999年に四國中央サインを創業、2005年に法人化、2009年にジャパンセントラルサインに社名を変更。関西を中心に全国、海外に活動の場を広げ、実績は1000件を超える。
有限会社ジャパンセントラルサイン
http://jc-sign.com
YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@jc-sign