コスメティックの大手である株式会社資生堂は10月20日、都内でスペシャルトークセッション「資生堂研究員と考えるビューティー&サステナブル最新テクノロジー」を開催しました。当日は雑誌CanCam専属モデル、トラウデン直美さんがゲストに登場。「愛好者の一人として、資生堂の循環型社会への取り組みに注目していた」と話しました。
同社研究員の伊藤健司氏はプラスチックの排出量について言及。「日本は廃棄量が多く、一人当たりで考えると世界2位となっている。燃やすのではなく、循環させてゴミを出さない仕組みづくりが重要」と訴えました。
環境省サステナビリティ広報大使を務めるトラウデンさんは「以前、廃棄物処理場を取材したことがある。
建設段階からゴミを出さないデザインになっており、このような企業活動は欠かせない」と訴えました。
数多くの化粧品を提供している資生堂は、かねてから容器の素材や設計を検討。詰め替え、付け替えが可能なリフィルを50以上のブランドで配置しています。
モデレーターを務めた日経BP総合研究所主任研究員の米川瑞穂氏は、自身が使用している資生堂の美容液「アルティミューン」を披露。同商品は銀座にある旗艦店で中身の詰め替えが可能となっており、トランデンさんは「詰め替えの様子が見える素敵な取り組み」と感心していました。
化粧容器を変えるケミカルリサイクル
伊藤氏は容器における単一素材についての課題を提言。「リサイクルにはシンプルだが異物が混ざると異物ごと再生してしまうメカニカルリサイクルと、資源を科学的に分子レベルまで分解するケミカルリサイクルがある。どちらも同じ素材から同じ素材にしか生まれ変わらないという課題がある」とし「なるべく単一素材で容器を作るようにしているが、例えばエリクシールに配合されている純粋レチノールは酸素に弱いため、様々な素材を組み合わせた容器になってしまうことも」と述べました。
そこで着目したのが、積水化学株式会社らの手がける「BRエタノール技術」です。BRエタノール技術はゴミを分別することなくエタノールに変換させるケミカルリサイクル。これにより、あらゆる素材を使った化粧容器もエタノールに変わります。
また、住友化学株式会社はエタノールを原料とし、プラスチックの一種であるポリオレフィンに変換させる技術を有しています。つまり、資生堂、積水化学、住友化学で「化粧容器を分別せずに回収」、「エタノールに変換」、「ポリオレフィンに変換し化粧容器へ」という循環を実現させることが可能となります。
現在、実証実験中のこの取り組みに対しトラウデンさんは「消費者からの回収がキーになる。インフラ化すればたくさん回収できるのでは」と指摘し「化粧品はリサイクルして容器にまた戻るのが当たり前になるかもしれない。それはすごく楽しみ。自分だけでなく、社会もキレイになって全方良しになれば」と語りました。