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「禅」「美」「力」の最高峰、大徳寺の無双パワーに浸る



京都市北区紫野に広がる臨済宗大徳寺派の大本山、大徳寺。戦国武将や茶人が引き寄せられ、霊格と権力と策略がうずまいていた「洛北随一の巨刹」です。鎌倉時代末期に宗峰妙超禅師が開創。応仁の乱で荒廃してしまいましたが、のちに一休和尚らが復興させます。戦国時代には豊臣秀吉によって織田信長の葬儀も行われました。あらゆる意味で究極のパワースポットである大徳寺にまつわる展示「開創700年記念特別展『大徳寺 本朝無双之禅苑』」が東京国立博物館で開催されています。


「本朝無双の禅苑」というパワーワードは後醍醐天皇による書のお言葉。日本に二つとない禅苑と讃えられていた大徳寺。宗峰妙超禅師が京都東山で20年にわたって過酷な仏道修行に励み、1326年に開堂しました。花園上皇・後醍醐天皇の帰依を受け、大覚寺統(南朝)・持明院統(北朝)の両統から支えられて発展した無敵のお寺です。



展示は、国宝「宗峰妙超像」や重要文化財「後醍醐天皇像」など、大徳寺開創に関わる貴重な寺宝から始まります。宗峰妙超禅師は権力に媚びないカリスマ的な高僧で、天皇や上皇の方からリスペクトを抱いて帰依していました。威厳漂う表情と澄んだ眼差しに、その人柄を垣間見ることができます。



インドから中国へと渡って禅の教えを広めた始祖、達磨大師の肖像も目力が強く、引き込まれます。宗峰妙超禅師の袈裟も展示。かなり使い込まれた布で、ストイックな禅僧のライフスタイルをうかがわせます。淡い黄色がかった茶色ともいえる渋い色は臨済宗では高僧の袈裟として尊ばれたそうです。



展示の第2章は、宗峰妙超禅師の弟子たちの時代。15世紀に活躍した高層は養叟宗頤と一休宗純です。養叟宗頤は一休宗純の兄弟子ですが、組織と格式を重んじる養叟宗頤と、自由で反骨精神が強い一休宗純は対立を深めていったようです。



とんちキャラのイメージがありますが、実際は破天荒で個性が強い一休さん。養叟をディスる詩を書いていたそうですが、応仁の乱で大徳寺がピンチのときは持ち前の行動力と直感で祖師たちの墨蹟(直筆の書)を持って避難。戦火から守り抜きました。そんな一休さんの、無精髭を生やしたワイルドな肖像画や、足を上げた姿勢の肖像画、太刀を傍に置いた肖像画も展示。髪も坊主から伸びてボサボサで、パンク感が半端ないですが、厳しさと優しさが混ざった表情は現代人に何か問いかけているようです。



15世紀から16世紀にかけて三好長慶、織田信長、豊臣秀吉といった戦国武将が帰依し、寺の勢力が拡大していきます。「織田信長像」や「三好長慶像」「豊臣秀吉像」「大友宗麟」など、ゆかりの戦国大名の肖像が並んでいて圧倒されます。豊臣秀吉が織田信長の葬儀を営んだのも大徳寺で、名だたる戦国大名たちが塔頭(たっちゅう)と呼ばれる寺院を建立し、自らの権力をアピール。現代でいうと大企業のトップが基金や美術館を設立するようなものでしょうか。それらの寺院には、当時の有名な絵師による壮麗な襖絵(障壁画)が描かれていました。



そんな障壁画の数々や、戦国大名を魅了した高麗茶碗、国宝「大井戸茶碗 喜左衛門井戸」も展示。戦国大名たちの競争意識が優れた美術を後世に残すことになりました。


茶道といえば、千利休が若い頃に修行したのも大徳寺でした。大徳寺で学んだ禅の精神を「わび茶」の美学に昇華。戦国時代、利休は茶道を通じて織田信長や豊臣秀吉との関係を深め、権力や財力を高めていきます。最終的には豊臣秀吉のプライドを傷つけて切腹を命じられてしまいますが……。お寺という心が穏やかになる場所なのに、当時は男性たちの権力欲が湧き立っていたのでしょう。大徳寺は今も「茶道の総本山」として崇敬を集めています。



大徳寺には禅の歴史を物語るさまざまな宝物が集まっていました。今回の展示では、重要文化財「百鬼夜行絵巻」がただごとではない妖気をただよわせていました。器物の擬人化や鬼など、さまざまな妖怪たちが闇夜にまぎれて行進する様子を描いた名作絵巻。一休宗純が構想を練ったとも、 土佐光信が描いたとも言われ、京都の大徳寺の境内にある塔頭の一つ、真珠庵に伝えられています。妖怪たちが走り回る中、奇妙な赤い生き物が。登る朝日の法力を表現しているという説もあります。ホラーみのあるかわいさが印象的です。




かわいいといえば、動物たちが描かれた狩野松栄の重要文化財「仏涅槃図」も圧巻の存在感でした。6メートルの大作で、釈迦の入滅を悲しむ神々や弟子、動物たちがカラーで細密に描かれています。馬や虎、龍、象など嘆き悲しむ動物たちがけなげです。


塔頭「龍光院」に伝わる国宝「曜変天目」(前期展示)の美しさも宇宙を感じさせました。大徳寺に集まる大名たちの強すぎるパワーや欲求を浄化させる小宇宙のようです。漆黒の中、見る角度によって虹が生まれ、星がまたたくという奇跡の茶碗。こんなお茶碗でお茶を飲んだら次元上昇しそうです。内覧会でも撮影禁止で、特別の部屋がしつらえられるほど珍重されていました。ふだんは拝むことができない「曜変天目」など、今回は初公開の展示物が多いです。




通常非公開の大龍寺三門を再現したコーナーも。三門楼上に安置されている「釈迦三尊像」や「千利休立像」が鎮座。初公開だと思うと手を合わせたくなります。見上げると龍の天井画と目が合い、こちらもご利益がありそうでした。


想像以上にスケールが壮大だった大徳寺。実際に行こうとすると敷地面積は20ヘクタール前後で東京ドーム約4個〜5個分という広さで、非公開の場所が多いです。今回、東京国立博物館内で一挙に宝物を拝見できるのはめったにない機会。コスパ、タイパ、といった現代人のパフォーマンス意識を全て超越し、禅の無我の境地である真のエネパに到達できるかもしれない展示です。


開創700年記念 特別展 大徳寺

—本朝無双之禅苑—

会期:2026年10月14日(水)~2026年12月6日(日)

会場:東京国立博物館

https://daitokuji2026.exhn.jp/


(執筆者: 辛酸なめ子)


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