全国のラーメンを食べ歩くラーメンライター、井手隊長です。
先日、ベトナム・ハノイに取材で行ってきた。今回のハノイ出張で、絶対に行きたいと思っていたお店がある。千葉県松戸市に本店を構える、つけめんの名店「中華蕎麦 とみ田」の海外直営店だ。

2025年9月にオープンしたこのお店は、ハノイの「The Loop Shopping Center」の1階にある。日本を代表するラーメン店の味が、遠く離れたベトナムでどこまで再現されているのか。ラーメン好きとして、期待に胸を膨らませながら訪問した。

店頭でメニューを確認すると、看板のつけめんに加え、中華そば、もりそば、ご飯もの、サイドメニューなどが並ぶ。驚いたのは、麺もスープも具材も、すべて現地で製造しているということ。ハノイで「とみ田」の味を一から作り上げているのだ。海外でこのクオリティを実現することが、どれほど大変なことか。食べる前から、その本気度に圧倒された。

まずいただいたのは、もちろんつけめん。
目の前に運ばれてきた一杯を見て、まず安心する。麺の存在感、つけ汁の佇まい、盛り付けに至るまで、しっかりと「とみ田」の世界観が表現されている。
つけ汁は濃厚な豚骨魚介。動物系の厚みと濃度がしっかりあり、そこに魚介の節が豊かに香る。豚骨の力強さだけで押し切るのではなく、魚介の風味がきちんと存在感を発揮しているのが素晴らしい。濃厚でありながら、味わいに奥行きがある。
そして、主役の麺。みずみずしい極太麺を、濃厚なつけ汁にくぐらせてズルズルと啜る。この食感と小麦の存在感、つけ汁との一体感は、まさに「とみ田」クオリティだ。ハノイにいることを忘れてしまいそうになるほど、期待していた味がそこにあった。
細部へのこだわりも見逃せない。つけ汁の器はしっかりと熱々で、提供時の温度管理にも気が配られている。麺やスープの味だけではなく、美味しく食べてもらうための仕事まで徹底されているのだ。日本の名店としての基準をきちんと守っていることが伝わってくる。

続いて、中華そばもいただいた。
こちらは、半濁りの動物系スープに魚介を合わせたクラシカルなスタイル。濃厚豚骨魚介のつけめんとは異なり、動物系と魚介系の味わいを楽しめる、どこか懐かしさも感じる一杯だ。

さらに興味深かったのが、もりそばだ。
こちらは「東池袋大勝軒」へのリスペクトを感じさせる一杯。甘味、辛味、酸味のバランスがよく、濃厚な豚骨魚介つけめんとはまた違った魅力がある。麺も専用の太麺を採用しており、クラシックなつけめんのスタイルをきちんと表現している。

現在のつけめんシーンを牽引する「とみ田」の味だけでなく、そのルーツにつながる大勝軒の系譜まで楽しめる。日本のラーメン文化が積み重ねてきた歴史や多様性を、ハノイの地で味わえるのは実に面白い。

餃子もいただき、ハノイビールとともに楽しんだ。海外で日本のラーメンを食べるという体験にとどまらず、食事としての満足度もしっかり高い。

今回の訪問で強く感じたのは、このお店が海外進出のお手本になるような存在だということ。
日本の有名ラーメン店が海外に出店する際、味の再現性は大きな課題になる。食材の調達環境も違えば、製造設備や人材の育成など、乗り越えなければならない壁も多いはずだ。
そんな中、麺もスープも具材も現地で作りながら、日本で親しまれている味のクオリティを実現している。これは人気店の看板を海外に掲げただけではなく、味づくりの技術や店づくりの考え方まで含めて、そのブランドが培ってきたものを現地に根付かせようとしているのだ。
もちろん、今回の一度の訪問ですべてを判断することはできない。それでも、実際に食べたつけめん、中華そば、もりそばの完成度には、素直に感動した。
日本のラーメンは、海外でもここまでできる。そのことを一杯一杯で証明してくれる、素晴らしいお店だった。
ハノイでまさか、これほど本格的な「とみ田」の味に出会えるとは。改めて、さすが「とみ田!」と唸らされた。
(執筆者: 井手隊長)
