
しばらくリリースが途絶えていたものの、日本を舞台にした『SILENT HILL f(サイレントヒル f)』が昨年発売。そして今回、シリーズ最新作である『SILENT HILL: Townfall(サイレントヒル タウンフォール)』が発売され、勢いが出てきた「SILENT HILL(サイレントヒル)」シリーズ。
もちろん筆者も自腹購入しプレイしたので、この記事でレビューをお届けしたい。なお個人的に、本作『サイレントヒル タウンフォール』は、シリーズの中でもとりわけネタバレ回避が望ましいタイトルだと感じている。
このため、記事内では可能な限りストーリー面のネタバレを避けた。とはいえ、紹介する上である程度はストーリーに触れている。このため、ネタバレが気になる人は、記事を読む前に、ぜひ本作をプレイしてほしい。
本作は「サイレントヒル」シリーズとしても、ひとつのホラーゲームとしても完成度が高いので、「買って損した」と感じることはないはずだ。
テレビを用いた一人称視点探索が特徴のシリーズ最新作! 『サイレントヒル タウンフォール』

なぜ本作のネタバレ回避にそこまでこだわるのか? それは、本作が「できる限り事前情報のない状態でプレイすること」を前提としているように感じるからだ。というのも、そもそも本作『サイレントヒル タウンフォール』について、発売前の時点で公式が開示していた情報は非常に少ない。
明かされていたのは、一人称視点を採用していることや、ラジオではなく「CRTV」という携帯型テレビが導入されていること、舞台がスコットランドであること、登場人物についてなど。ただ、主人公サイモンが何を目的としているのかは不明。
これまでのシリーズ作品であれば「娘を探す」「亡くなったはずの妻から届いた手紙の謎を解く」など、大まかではあっても主人公の行動の指針となる背景が明かされていた。今回ゲーム開始時点でわかることといえば、主人公サイモンが舞台となるセントアメリアになぜか漂着したこと。
そして、サイモンは輸液入りバッグと医療用リストバンドを身に着けていることぐらいなのだ。

おそらくこの情報不足は意図的なものだろう。というのも、ゲームが始まってなお、この状況は続く。もちろん、ゲームを進めれば新たな情報は獲得できる。しかし、その情報の多くは抽象的か、断片的。その最たるものが、ゲーム内でサイモンに示される「状況を正せ」という指示だ。
「状況」が何のことを指しているのかわからないし、何をもって「正した」といえるのかもわからない。だから、何をすべきか判断しようがないのだ。

では、何も行動できないのか……というと、そうではない。ここでキーとなるのが、本作のキーアイテムである「CRTV」だ。「サイレントヒル」シリーズではこれまで、ラジオがキーアイテムとなってきた。作中でクリーチャーが出現する際、ラジオのノイズがその存在を知らせてくれたのだ。
このラジオに置き換わる存在として今回用意されたのが、「CRTV」という携帯型テレビ。CRTVには、敵の有無だけではなく、敵のいる方向や動き、姿まで映し出される。しかもそれだけでなく、探索にも関わってくる。

サイモン=プレイヤーは、「CRTV」に映るビジュアルを手掛かりに、街を探索することとなる。とはいえ、ビジュアルは建物の一部であったり、「ここから出して」などと呼びかける声だったり……と、非常に断片的。それだけで何が起きているのか把握できるほど詳細な情報は得られない。

しかし、どんなに頼りない情報でも、「CRTV」のビジュアルを頼りに行動するほかない。すると、行動の最中で様々な新情報が飛び込んでくる。ただ、それらの新情報も、街の看板やポスター、あるいはビラといったかたちで、やはり断片的。
だから、「一体ここで何が起きていて、自分は何に巻き込まれているのか?」「どうすればこの状況を正すことができるのか?」が、まるでわからない。わからないから居心地が悪く、不安になる。そう、本作は情報不足が生み出す不安によって、ホラーの空気感を醸成しているのだ。

とはいえ、本作はホラーの空気感のためだけに情報不足を利用しているわけではない。プレイヤーを作品世界へ没入させるためにも利用している。情報不足な中、断片的な情報が徐々に集まっていく。すると必然的に、「この街で何が起きているのか?」と考えざるを得ない。
つまり、われわれプレイヤーは考察行為へと自然に促されているのだ。これは、ストーリー面においてだけではない。謎解き面においても、効果的に機能している。

「CRTV」のビジュアルは、探索の目的地を示すだけではなく、謎解きのヒントを示す際にも用いられる。ここで印象的なのは、本作にはビジュアル的な謎解きが多いという点だろう。これまでのシリーズでは、文字や数字といったものをベースにした、言語的な謎解きがメインだった。
どのような単語をチョイスするかによって変わるが、基本的に言語的な謎解きは、ビジュアル的な謎解きより具体的といえる。というのも、「何が書いてあるか」は最低限理解できるから。たとえば「カエル」と書かれていれば、とりあえず「カエル」というところまでは理解できる。
実際にはその「カエル」は、もしかすると「カエル=親」「オタマジャクシ=子」のように、「親子」という別の概念を意味しているのかもしれない。ただ、「カエル=親」ということまでわからずとも、ひとまず「カエル」というワードは理解できるだろう。しかし、これがビジュアルになると、まず「何が描いてあるか」という時点で人間(プレイヤー)の解釈が挟まれる。
リアルなイラストではなく、超デフォルメされた上でヘタウマテイストの落書きとして描かれている「カエル」を想像してほしい。人によっては「カエル」と感じるかもしれないが、人によっては別の何かと思う可能性もあるだろう。

ビジュアル的な謎解きは、言語的な謎解きより抽象的で、解釈の幅が広い。これは、さまざまな意味を同時に表すことができるということでもある。本作はこれを利用して、ストーリーへとつながる要素を、謎解きの面でも描写している。
謎解きはストーリーと切り離された要素ではなく、謎解きに登場するモチーフや、謎を解く手順が、「ストーリー上で何が行われているのか」を示すキーとなっているのだ。見方を変えれば、本作は「情報不足」と「CRTV」という要素によって、ストーリーと謎解きの融合を実現しているといえるだろう。

敵の動きを読み、回避ルートを組み立てる――パズル感覚のステルス戦闘
「CRTV」がつないでいるのは本作のストーリーと謎解きだけではない。「CRTV」はクリーチャーとの戦闘においても重要となっており、それどころか本作の戦闘に新たなプレイ感をもたらしている。

操作面だけを見れば、本作の戦闘はこれまでのシリーズと大きく変わっていないように思える。近接用武器や遠距離用武器を用いて敵を攻撃したり、防御アクションによってダメージを回避したりすることが可能。しかし、遠距離用武器には弾数が、近接用武器には耐久力があって、すべての敵を倒すことは難しい。
ただ、本作ではそもそも敵との戦闘行為より、敵そのものの回避……つまりステルス要素をメインとしている。

本作では、そもそも武器や弾薬の数が圧倒的に少ない。前作『サイレントヒル f』のように、「敵を倒しながら進む」という前提でいると、即座に武器や弾薬が尽きてしまう。また中盤以降は絶対に倒せない上、捕まると即死という敵が登場する。
おまけにその敵は聴覚が鋭敏で、他の敵と戦っている音を察知すると、こちらに向かってくる。つまり、「敵を倒しながら進む」という前提では、攻略困難。敵の位置を事前に察知し、可能な限り回避する……という立ち回りが求められるのだ。

では、どうやって敵の位置を「事前に」察知するのか。ここでキーとなるのが、「CRTV」。既に紹介した通り、「CRTV」は敵の有無だけではなく、敵のいる方向や動き、姿まで把握することが可能。
加えて本作の敵は、行動パターンがかなり読みやすい。「パターン」という言葉から、「敵の動きが単調ってこと?」と、ネガティブな印象を持つ人もいるかもしれない。しかしそれは、「戦闘」を前提にしているからではないだろうか? 「敵の位置を事前に察知し、可能な限り回避する」という立ち回りは、敵の挙動がパターン化されていないと成り立たない。
「CRTV」で敵の動きを予測した上で、発見されないよう、どこからどこへ移動するかルートを構築し、動くことになるからだ。

こうした本作のステルス要素は、本作ならではの独特なプレイ感を生み出していると感じた。もちろん、最近の3Dアクションゲームでは、ステルス要素を取り入れた作品も珍しくない。ただ、本作ほどステルス要素が大前提になっているわけではないし、厳密な回避ルートを求められるわけでもない。
「CRTV」で敵の行動パターンを事前に予測し、回避するという本作のステルス要素にもっとも近い事例は、おそらく『SIREN(サイレン)』だろう。『SIREN』は、敵である屍人の視界を奪う「視界ジャック」によって敵の行動パターンを事前に把握し、回避することがメインとなっていた。
ただ、『SIREN』と比べると、本作の方が若干「戦闘」の比重が高い。『SIREN』は解法がほぼ1つで、完全なパズルといえるレベルだった。これに対し本作は、戦闘で切り抜けてもいい局面もある程度用意されており、完全なパズルというほど解法が固定されているわけじゃない。
パズルというより、「パズル的」という印象だ。こうした本作の戦闘設計は、本作の持つ作品性と極めて高いレベルで融合しているように思う。情報が不足し、何が起きているかよくわからない不安定な世界で、意味不明なクリーチャーに襲われる。一応立ち向かうこともできるが、基本的には逃げるしかない……。
「完全に立ち向かえない」のではなく、「一応立ち向かうこともできる」という選択肢が、なおさら無力感を呼び起こす。「選択肢がない」のではなく、「必死で考えた選択肢に、あまり意味がない」という現実につながっているように感じるからだ。……だから、怖い。

ただ、だからといって不満がゼロというわけではない。筆者はもともと、ステルス要素があまり得意ではない。短気なせいか、「隠れつつ移動する上で、敵が最適なポジションへ移動してくれるまで待つ」という待ち時間が、もどかしく感じてしまうのだ。もちろん、「ステルスゲームとは、そういうゲーム」ということは理解している。
それでも、高難度ステージで何度もミスしてしまった時、リトライの度に「敵の移動待ち」という状況が発生するのは、なんとも、もどかしい。初見プレイ時は「怖い」と感じていたシーンも、繰り返し見るとさすがに飽きてしまう。この点は、本作のように「ステルス」を大前提としたゲームが、今後解決しなければならない課題のひとつではないかと思った。

新たなるホラー体験! シリーズの未来に希望を抱かせる一作
ステルス要素に対して個人的な不満点を書いたものの、「CRTV」という新要素によって、ストーリー・ビジュアル的な謎解き・回避重視の戦闘……という要素が強く結びつけられた本作は、「サイレントヒル」の一作としても、ホラーゲームとしても非常に完成度が高い。
そんな本作のなかでも、とりわけ印象的だったのがサウンドまわりの演出だ。

基本的に本作のサウンドは環境音が中心。ノイズのような不気味な環境音と、クリーチャーの声や足音、ドアなどの開閉音といった効果音で構成されている。この中でも、効果音が非常にリアル。ただ、「リアルだから怖い」という話がしたいのではない。

本作のホラーとしてのジャンルは、サイコロジカルホラー。つまり、人間の精神(心理状態)に起因する恐怖を描いたホラーだ。だからこそ、部屋の扉を開けたら、突如としてパイプが立ち並ぶ不気味な異世界……といった不条理なシチュエーションもあり得る。こうしたシーンで音がリアルだと、怖い。
聞こえるはずのないところから、聞こえるはずのない音が、リアルに聞こえてくる……これが怖くないはずがないのだ。特に本作は、短いシークエンスで恐怖演出を挿入するのが絶妙に上手い。こうした短い恐怖演出の怖さを、リアルな効果音が何倍にも増幅させていると感じた。

また、本作はビジュアルもとてもリアルだ。カットによっては3DCGとすぐわかるものもあるが、やや引いたカットは実写と区別がつかないレベルに達していると感じた。そして、ビジュアルがリアルだからこそ、なおさら効果音の完成度が光る。リアルなビジュアルによって没入している中で、突如として「CRTV」からノイズが鳴り響く。
これがいかにもゲーム的な音響だったなら、単に「敵が出た」という通知音にしか感じなかっただろう。しかし、効果音の完成度が高いから、没入感の高さが維持されたまま……つまり、怖い。

ゲームシステム、ストーリー、アートワーク、そしてサウンドと、いずれの面でも完成度が高い本作。さらに、「CRTV」を軸に、断片的な情報から世界を解き明かしていく探索と謎解き、ステルスを大前提としたパズル的な戦闘を結びつけることで、これまでのシリーズとは異なるプレイ感を生み出している。それでいて、「サイレントヒル」らしい不安や恐怖を感じる要素もしっかりと残されている。
新しい仕組みを取り入れながら、シリーズならではの恐怖を損なっていないことこそ、本作の大きな価値だと思う。買って損がないことはもちろんだが、その上で今後の「サイレントヒル」シリーズの未来にも希望を抱かせてくれる作品だと感じた。

(文/田中一広)
(執筆者: ガジェ通ゲーム班)
