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文化の発信地、西武渋谷店の閉館を惜しみながらしめやかに訪問



長らく渋谷の地でカルチャーやファッションを牽引してきた西武渋谷店が、2026年9月30日で閉館。何度行っても迷いそうな渋谷の迷宮で、西武渋谷店のA館・B館は最もアクセスしやすい立地でした。程よく空いていて、ファッションフロアもコスメもデパ地下も買い物しやすかったです。特に、惣菜は時間が経つとかなり値下げされるので助かっていました。3階のアパレルショップで数ヶ月前に買ったカーディガンも愛用しています。空いているので収益が心配でしたが、今回閉館するのは単純な理由ではなく、地権者との賃貸借契約など複雑な事情があるようです。



文化の発信地のプライドを感じたのは、最後の月にイベントを開催しまくっていること。B館地下1階で体験型展示会「はてな展」、B館4階は「微わかる展 2+小さいすぎるよ展」、B館4階では人気少女漫画「ハニーレモンソーダ 完結記念展」、B館8階で増田セバスチャン展「ENDLESS COLORS」、B館1階ではキャラクター「NEXZOO」のPOPUP STORE、B館6階では「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 15周年記念 POP UP」、A館1階で久保田和靖個展「なぐりがき~猫狂~」、B館3階=イベントスペースでは「視える人には見える展」など……。怒涛の勢いでさまざまなカルチャーが渦巻いています。最後、このデパートをカルチャーのは花道で皆で華やかに送り出そうという空気を感じました。



正面入口には、「THE LAST 9.30 WED ありがとう、渋谷」と書かれた看板や「FINAL SALE」の案内が。受付の台にも「ありがとう、渋谷。」というメッセージが書かれています。寂しさと切なさ、そしてセールへの期待を胸に入館。




行った日は、2階でTSIというアパレル企業のグループのブランドのセールが開催されていました。あまり今まで渋谷西武で見かけたことがないブランドの数々。しかもサンプルやB品セールでした。渋谷西武らしさをあまり感じなかったのですが、トレンチコートやワンピース、ブラウスなど婦人服が80%オフで安いのでお客さんで賑わっています。3階のアパレルフロアは通常営業で、一部で40%くらいセールしているのにとどまっていました。




デパ地下では、各店舗お得なお楽しみ袋などを出していて、盛り上がっていました。お惣菜のスペースは年々小さくなっています。ここのお惣菜はお値段も手頃だったのでなくなるのが寂しいです。たまに買っていたレンコンのきんびらを最後の思い出に購入。デパ地下の記念アイテムとしては、アンファンから西武渋谷店限定のオリジナルプリントクッキーが販売されていました。西武渋谷店の入り口やロゴ、「ありがとう、渋谷。」という言葉などがクッキーにプリントされているしめやかな一品です。



B館に移動すると7階の「インテリア・家具 FINAL SALE」会場では、シーツからスリッパ、食器、急須、などが50%オフ前後になっていました。2階から6階くらいまではアパレルで、上の方のフロアにインテリアや家具や美術品、という昭和のデパートのスタイルが、今後なくなっていってしまいそうです。8階のジュエリーのコーナーではベテランの女性店員に「今、温暖化でアコヤがとれなくなっていますからね」と言葉巧みなセールストークをされて、数十万円のパールのネックレスを買いそうになりました。久しぶりにデパートらしい体験ができました。


渋谷駅前の一等地のデパートですが、改めて各フロアを回ってみると、マダム向けの謎ブランドのお店が結構多い印象です。以前はおしゃれな最先端のセレクトショップだったのでしょうか。周囲の商業施設は若者向けのお店ばかりで、ここで買っていた方々や地元の人は、今後どこで服を買えばいいのか心配になります。


B館1階では「#シブヤオモイデ写真展」が開催。1968年からの西武渋谷店の歴史や、応募で集まった西武渋谷店との思い出のメッセージが展示されていました。開業時はなんとイヴ・サンローランや、マリー・クワント、世界的人気子役のオリバー坊やなどがお祝いのメッセージを寄せていたようです。歴史をまとめたVTRでは「文化の発信地として常に時代の最先端でいたい」「感性を刺激するアート空間」といったコンセプトが流れていて、それは最後まで守られているように思いました。思い出メッセージには「また一つ渋谷の象徴がなくなって寂しい…」「1980年代〜1990年代お世話になってた思い出の場所です」「シブセイ 有難う」といった惜しむ声に混じって「初めて来たけどおもろかったです」と、最後にはじめてきた人々のコメントもありました。まだ新たな客層を取り込む可能性はあるのに残念です。



そして人気のないフロアの片隅には、霊的な存在も集まってきます。B館3階では、霊能者監修の人気写真展「視える人には見える展」が開催されていました。各地の風景写真を展示していて、そのちょっと暗い雰囲気の景色の中に、視える人は霊が視える、という企画です。通路側の展示では、この西武渋谷店にいた霊もピックアップ。例えば薄暗い階段には「80年代頃の、20代後半くらいの日本人女性が階段に腰掛け、膝を抱えるように小さく縮こまって」いたり、「90年代頃の、30代後半くらいの日本人男性が階段の上からこちらを見下ろして」いたりするそうです。エスカレーター脇には「80〜90年代頃の、30代くらいの日本人女性がガラス面にもたれかかって」いるとのこと。おそらくこの会場フロアの周辺なのでしょうか。改めて、霊が見られた場所を回って写真を撮ると、不思議と部分的にピントが合わなくて、何かの気配を感じました。



混んでいなくて落ち着ける雰囲気の西武渋谷店は、巷の霊たちにとってもまったりできる場所だったのでしょう。80〜90年代の服装の霊たちは、まさにこのデパートの全盛期と重なるので、渋谷といえば西武、という思いで自然と導かれてきたのかもしれません。彼らも閉館を惜しんでいるのが伝わってきました。なくなってはじめて、居心地が良い貴重なスポットだったと実感されることでしょう。



(執筆者: 辛酸なめ子)


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