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実在する“紙幣大量盗難事件”をベースに描くヒューマン・コメディ『ハルバーシュタットの埋蔵金』監督インタビュー



1989年の「ベルリンの壁」崩壊後、東西再統一を目前に控えた旧東ドイツで実際に起きた紙幣大量盗難事件を基にしたヒューマン・コメディ『ハルバーシュタットの埋蔵金』が、新宿ピカデリーほか全国公開中です。


【あらすじ】「ベルリンの壁」崩壊から8か月後の1990年7月、東ドイツの田舎町・ハルバーシュタット。失業中の夫婦ローベルト (マックス・リーメルト)とマーレン(ザンドラ・ヒュラー)、彼らの幼なじみフォルカー(ロナルト・ツェアフェルト)の3人は、軍の 地下坑道に忍び込み、秘かに廃棄された数百万マルクもの東ドイツ紙幣を発見、大量の札束を持ち帰った。彼らは近隣住民たちを 巻き込み、持ち帰った札束で西側からやって来るセールスマンたちから家電、食品、生活用品を山ほど買っては西側で転売し、西 ドイツマルク札に替えていく。思いがけない好景気に田舎町はお祭り騒ぎに沸くが…。


監督・脚本を務めたナーチャ・ブルンクホルストさんにお話を伺いました。



──本作楽しく拝見いたしました。監督がこの実在の事件に興味を持ったのはどんな所でしょうか?


まず1つ目は、普遍的で文化を超えて伝わるストーリーだなと思ったことです。「人とお金と愛」これは多くの人の関心事ですよね。大量のお金を目の前にした時、何かをしたくなる。

ベルリンの壁の崩壊後の混沌の中で当局の人も把握出来ない、何も手を出せないという時期で、警察が出来ることと言えばスピード違反を停めることくらいでした。時間というのは、どんな人にも平等に流れているものですが、この時期は期間限定の本当の特異な時期だったんですよね。そのことに強く関心を持ちました。


──監督はこの時代にベルリンにいた、ある意味当事者でもあるわけですよね。


そうです。西ベルリンに生まれ、壁に囲まれて生きてきました。ただ、悲しいことに壁崩壊の時に限って私はベルリンにいなかったのです。当時、子役をしていて、次の日の撮影のためにたくさんのセリフを暗記しなくてはいけなかったから、そのことで頭がいっぱいで劇的な瞬間を逃してしまったんですね。その、経験し損ねてしまったという想いから、この時期にとても興味があってリサーチをし、この映画を作るようになりました。


──社会的なことを描きながら、クスッと笑えるエンターテイメントの要素も魅力的でした。そのバランスはどの様にとりましたか?


全てはリサーチの賜物だと思います。私はリサーチをすることが大好きで、常に多くの人に話を聞いてきました。残念ながら実際に盗みを働いた本人たちにお会いすることは出来なかったのですが、映画作りにまつわる様々なことはたくさんのリサーチから生まれています。

世界を俯瞰してみることが、私の中の資質としてあると思います。「コメディ」と聞くと、その事件の上澄だけを描いていると捉えられてしまうかもしれませんが、「ユーモア」と、「深いストーリーを伝える」ということは両立出来ると思って映画を作っています。


──リサーチ中に特に印象的だったことはありますか?


お会いした皆さんが当時のことを喜んで話してくれたということが大きいです。「30年前のことだし、今更どうでもいいよ」という感じではなくて、非常に熱心に話してくれました。無名の人々の話、労働者の皆さんの記録が非常に響きまして、重く受け止めました。ある人が、30年間ずっと椅子につけるローラーのネジを作り続けていて、「国のために私は大事な仕事をしている」と思っていたわけです。ところが、ベルリンの壁が崩壊し、統一した後、自分の作っていたネジが使われた椅子を店舗で見つけて「スウェーデン製」と刻印してあったのを見て、「私が今まで信じてきたものはなんだったのだろう」と愕然としたそうです。


──本作を拝見しても感じましたが、いつだって犠牲になるのは市井の人のだなと痛感しました。


悲しいことに、そういう時代に私たちも生きていますよね。こんな時代に何が出来るかというと、隣人、小さなコミュニティの繋がりを持つということだと思うんです。小さな単位で助け合うということがパワーを持ち、平和につながるのだと思います。大きな組織、男性のお偉方が作るようなシステムはもう崩れてしまっている。

この映画が非常に現代ともリンクするなと思う点は、「お金」について描いていることです。とある実験で、熱いお湯に手を突っ込んで何秒我慢出来るかということをしたのですが、もう一つの手にお金を持っている時と持っていない時には、持っている方が何倍も長く我慢出来たそうです。つまり、お金というのは、人に安心を与えると同時にそれが結果的に苦痛につながることもある。そんな普遍的な問いをこの映画からも感じていただけたら嬉しいです。


──今日は素敵なお話をどうもありがとうございました。


© 2024 ROW Pictures GmbH, zischlermann filmproduktion GmbH, Lichtblick Film- und Fernsehproduktion GmbH, ZDF, ARTE


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