
「今日はブルマの在庫はありますか?……ある!?ありがたい!熱いブルマをお願いします」
──中東のお店では今日もこのような会話が交わされます。
私はブルマはご飯にかける派です。パン派の方もいますが、やはり細長いコメに合うと私は思います。
……おや? 中東のブルマをご存知ない? なんと、ご説明しないと。
皆様が観光やお仕事で中東のショッピングモールなどでご飯を食べる時、慣れぬ異国の地、たくさん店舗がある中で一体何を食べればいいか迷うことがあると思います。
フライドチキン、ケバブや現地のハンバーガーのようになんとなく味がわかりやすい食べ物も良いですが、総じて脂っこい焼き物や揚げ物が多い。ですがそれ以外の食べ物だと一見すると味がわからない、食べ慣れないものが多いこともあり、なかなか手が出にくいと思います。
そこでおすすめするのが日本人の舌にも馴染みやすい「ブルマ」です。


<写真:「サバ」レストランの受付>
家庭の味が市場に溶け込むイエメンの煮込み料理「ブルマ」
「ブルマ(بورمة)」は、アラビア半島の南部にある国、イエメンはフダイダ市の伝統的な煮込み料理です。
骨付きのラム肉をクミン、コリアンダー、カルダモン、ターメリック、ブラックライムなどスパイスでじっくり煮込み、肉がプラスチックのスプーンでもほろりと崩れるほどに柔らかく仕上げた絶品の煮込み料理。
スープとしての濃密な旨味と合わせ、このやさしい口当たりと体に優しいスパイスの味は日本人にも馴染む、ホッとする味わいです。ホブズ(アラブ地方に多い平たいパン)や細長いご飯とともに味わえば、素材の滋味とスパイスの余韻が体を温めるように広がっていくのがわかります。


<写真:ポットの中の熱々ブルマ>
この栄養満点のスープをパンに浸けて食べるも良いですが、バスマティライス(細長いお米)にドバッとかけてぶっかけ飯のようにして食べるのはおすすめです。
ごろっとしたお肉入りのスパイスぶっかけ飯という点ではシンガポールのバクテーに近いものを感じますが、ブルマは骨付きのラム肉がゴロゴロしています。

<写真:山盛りご飯にブルマ全部を乗せた場合>
進化したイエメン料理ブランド「サバ(SABA)」
ブルマはどこで食べられるのか?イエメンに行こうにも近年の情勢的に入れません。そこで隣国であるサウジアラビアに展開するイエメン料理ブランドの「サバ(SABA)は、2001年設立のビュン・ホールディング(Byun Holding)が運営する、イエメン家庭料理を手軽に楽しめるレストランブランドです。サバ店舗のブランド理念は「イエメンの家庭の味をそのまま、誰でも気軽に楽しめる形で提供すること」。
このサバでは、マクラーと呼ばれる石鍋でグツグツと煮込まれた料理だけでなくイエメンで最も有名とされる炊き込みご飯マンディや、前述のブルマに加えて、豆や野菜のペースト、肉と溶き卵を混ぜて食べるスープ煮込み料理サルタ、アラビア半島でよく食べられる小さく切った肉(ラムまたは鶏)を軽く炒めた後、野菜と煮込むムガルガル、イエメンの代表的なシチューサルタ、

中東地域のスクランブルエッグ、青唐辛子や長ネギなどの薬味と濃厚なチーズを合わせてボリュームたっぷり、軽食として人気があるシャクシュカまで、アラビア半島の美味しい食事のラインナップを多数揃えています。

<写真:中東のスクランブルエッグ「シャクシュカ」にとろりチーズを山盛り>
また2100キロカロリー越えのイエメン伝統スイーツ、バナナ、デーツ、クリーム、チーズ、蜂蜜を合わせ全粒粉パンと一緒に煮込んだカロリー爆弾ブレッドプディング「マソーブ」にアデニ紅茶(イエメンティー)などと組み合わせると、完結したフルコースがいただけるといえます。
ちなみにマソーブだけでなくアデン紅茶もカロリーは爆裂高いのでご注意ください。

<写真:1800キロカロリーのアリーカ、2100キロカロリーのサバ・マソーブ>

<写真:高カロリーの中東スイーツ>
サバの店舗展開とブランド戦略
サバはサウジアラビアのリヤド、ジッダ、ダンマームをはじめとするサウジアラビア国内の主要都市を中心にショッピングモール内やイベント施設に出店しています。モールという立地戦略により、観光客だけでなく、地元のファミリー層や会社員にも自然と支持される日常使いのレストランとして機能しています。
ビュン・ホールディングによるとフランチャイズシステムが整っており、その結果、リヤドパークでも、今話題のブールバード・リヤド・シティでもどの店舗でもイエメン家庭料理の味をいつでも安定して楽しめるのがサバの強みだそうで、実際どこのサバに行っても美味しい高カロリーのイエメン料理をいただくことができます。
人気の理由は「味×価格×アクセス」そして「クセになるブルマの味」
サバの人気は、味覚だけでなく価格と立地のバランスによっても支えられています。ブルマの価格は約65サウジリヤル(約2,600円)と一瞬高い値段かもしれないですが、分量的に2〜3人前なのでモール価格にしては手頃であり、家族や友人とシェアしても満足できる量が提供されます。過去に日本の政府や企業の方、皆さんにブルマを楽しんでいただきましたが、想像より優しい味で皆さん驚かれていました。
営業時間もモールに合わせて長く、ランチ~ディナーにかけて利用しやすい点も好評です。
さらに現地の顧客から「骨からホロリと外れるブルマ」「クセになるブルマの味」と口コミも多く、リピーターを生む味でイエメン本場の味を良い価格で提供する構図を実現できているからこそ、訪れるたびに期待を裏切られないと評判です。

石鍋料理はそこまでクセがなく日本人の舌にも馴染むといえます。サバはそうした家庭料理を「モール内で日常的に楽しめるブランド」に昇華させた成功例。ロケーションと味の安定により、“イエメン家の食卓”に近い体験を広く提供しています。
あなたも大きな声で伝えましょう
中東のショッピングモールやイベント施設を訪れた際に、何を食べようか迷う時があれば、ぜひサバで煮込み肉料理の深みを味わってみてください。ブルマの香りとテクスチャーは、香りばかりでなく心にも沁みるものです。フハサ、サルタなどさまざまなイエメン料理とのハーモニーも、旅の思い出を深めてくれること間違いなしです。
そしてあなたも、モールのカウンターで大きな声で伝えましょう。「私に熱々のブルマをください!」


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(執筆者: 鷹鳥屋明)