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“出っぱなし”の霊をどれだけ怖く描けるか? 映画『見える子ちゃん』中村義洋監督インタビュー 「とにかく試行錯誤ですよ」[ホラー通信]


『見える子ちゃん』は霊が見える高校生を描いたホラーコメディ映画で、原作漫画を基にしています。監督は心霊ドキュメンタリーやホラー作品で知られる中村義洋。霊を無視するスタイルを取り入れた点がユニークで、中村監督もかねてから温めていたアイデアに共感し、リアルな心霊描写による笑いと恐怖のバランスを追求しています。映画内では心霊写真を参考に霊を描写し、その描き方については試行錯誤を繰り返したと述べています。映画の公開を通じて、原作ファンだけでなく、中村監督の以前からのファン層にもアピールしている作品です。

映画『見える子ちゃん』中村義洋監督インタビュー

霊が見えるようになってしまった高校生が、心底怯えながらも“見えないフリ”をし続ける……ユニークなコンセプトのホラーコメディ漫画を、原菜乃華主演で実写映画化した『見える子ちゃん』が現在公開中だ。

メガホンを取ったのは、1999年から続く心霊ドキュメンタリー「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズや『残穢【ざんえ】― 住んではいけない部屋―』を手掛けた中村義洋だ。監督のオファーを受け、原作のコンセプトを知った瞬間から「やる!」と即断したという中村監督は、原作のおどろおどろしいクリーチャー的な霊をリアルな心霊描写に置き換え、笑いと恐怖が両立する青春ホラーコメディに仕上げた。

霊が見える人から「この映画の霊の描き方は“実際の霊の見え方”そのもの」というお墨付きを得たという本作の心霊描写は、如何にして作られたのか。中村監督にお話を伺った。

――“霊が見えるけど無視する”というコンセプトの原作ですが、監督のオファーを受けてどう思われましたか?

中村監督:ずっとやりたかったネタなんですよ。20年前にそんなプロットを書いたんです。主人公が婿養子の不動産屋で、すごく怖い義理の父親に言われて一家惨殺事件があった物件なんかを売りに行くっていう。本人にはうじゃうじゃ霊が見えてるんだけど、ずっと見えないふりをして売り続ける。そのプロットをあちこちに持っていったけど、箸にも棒にもかからなかった。このアイデアはホラーの変化球のコメディだったんですけど、2000年代当時は『リング』の影響で“怖いホラー”じゃないとダメだったんです。

それに原作を読んで、「なるほど、主人公が不動産屋のおっちゃんじゃなくて女子高生だったら良かったのか」とも思いましたね(笑)。原作はクリーチャー系の霊だったけど、心霊系でもいいんだったら是非やりたいなと。

――原作に登場する心霊番組で、中村監督おなじみの「おわかりいただけただろうか」のセリフも出てきましたね。

中村監督:そうそう。これが出てきたから、「心霊でやらせてください」って言っても大丈夫なんじゃないかなと。原作者の泉朝樹先生も、僕が心霊系の作品を作っているのを知ってる上で「いいですよ」と言ってくれたんですよね。

映画にする上で、原作とは別にストーリーの縦糸を作って手を加えていくんですが、そこで改めて原作を読み直してみると、取り入れられる部分がたくさんあって。改めて強い原作だなとも思いましたね。

霊が“出っぱなし”で怖い、を成立させられるか?

――通常、ホラー映画は霊が出てくる前から怖そうな雰囲気を作るものですが、この映画は高校生のまったく怖くない普通の日常に突然霊が出てくる、その上で怖く見せる……という、すごく難しいことに挑戦されていますよね。

中村監督:そうなんです。主人公が霊に怯えているのに無視しているというのが重要なので、霊が全然怖くないと笑いに繋がらないんじゃないかっていう懸念はありました。目指したところは大体できたんじゃないかと思いますが、本当に成立するのか自信がなかったから、カメラテストはかなり回数を重ねましたね。

心霊に関しては20年以上数多のものを見まくっているわけですけど、「ほんとにあった!呪いのビデオ」の投稿映像って、カメラがパンする(横に振る)途中に霊がいたりして、一瞬しか映らない。一瞬映ったものをリプレイでじっくり見せているだけで。今回の映画は霊がずっと出続けるので、相当難しいだろうなと思っていました。その通りやって成立するのかっていう不安と、普通はそんなことやらないから絶対やってみようという気持ちが両方ありましたね。

――オウマガトキFILMさんとの対談動画(※)で「『残穢』の最後に出てくる霊が怖くないと言われる」とご自身でおっしゃってましたけど、そういう反応は気にされますか?

中村監督:あれはね……、もっと慎重にやらないといけなかったんだけど、やってなかったんだろうね。頑張りも準備も足りなかったのかな、今考えると。怖くなるもんだと思ってたんだけど、やっぱり霊が出るまでが一番怖かった。出しちゃったら相当頑張らないと怖さが持続しないんですよ。出た瞬間に怖さが終わるんだよね。

映画『見える子ちゃん』の心霊描写は「ほん呪」を参考に? 中村義洋監督✕オウマガトキFILM・ヒロの対談映像

「“生きてる証”が感じられた瞬間に怖さがなくなる」

――色々な霊が登場しますが、霊の描き方はどう決めていったんでしょうか。スタッフにどうやって指示を出すのか気になります。

中村監督:霊がどういう風に見えるかという点で参考にしたのは心霊写真ですね。オウマガトキFILMさんとか、ゾゾゾさんの「家賃の安い家」とかを参考に。霊が15~16体出るんだけど、参考写真は200枚くらいあったんじゃないかな。系列で分けて、「このシーンに出る霊はこんな感じ」というふうに振り分けていって、カメラテストをしていくんです。僕と役者とカメラマンとCG部でやれるかなと思っていたら、照明部が入るとより良くなったり、メイク部が加わるとさらに良くなったりする。だから映画って色んなスタッフが必要だなと思いますね。

――主人公が序盤で遭遇する、バスに乗っている霊や道端にいる男の子の霊もすごく不気味でしたね。

中村監督:もう、とにかく試行錯誤ですよ……。どうしたら怖くなるだろうかと、とんでもない数のやり取りを重ねていくんです。霊の輪郭をぼかして、一部だけフォーカスを戻してみたりとか、色々試しましたね。男の子の霊が後ろを向いているとき、うまくぼかせているのに怖くなくて。なぜだろうと考えていたんだけど、男の子がしてるサスペンダーにフォーカスが合ってると全然怖くないんですよ。要は“生きてる証”みたいなものが感じられた瞬間に怖さがなくなっちゃう。心霊写真も「ここが◯◯に見える」っていうような見方をするじゃないですか。映画には警備員の霊も出てきますけど、それもはっきり映したら怖くない。「なんだか分からないけど、これって警備員に見えるよね」っていうくらいの加減が一番怖いんです。

――今回の映画は原作を好きな人だけじゃなく、中村監督や「ほん呪」のファンも観に来られると思いますが、そうした観客も意識されてましたか?

中村監督:もちろん意識していました。やっぱり下手は打てないなと。出てくる霊が「ほん呪」の投稿映像にそっくりだと気付く観客もいると思うので、「そっくりってことは、投稿映像も作ってたってことか?」と疑われる可能性もあるだろうなと思いますが、そこはまあ、大胆に……。

――えっ、「ほん呪」は本物の投稿映像ですよね……?

中村監督:……投稿映像です!(笑)

<ネタバレ注意>
ここから先はクライマックスの展開と具体的な描写に言及しているため、映画の鑑賞後に読むのをおすすめします。

「思い切って笑顔にしてみないか」

――たくさん霊が出てきた中で、いちばん思い出深いものはありますか。

中村監督:やっぱり終盤の神社のシーンかな。お母さんの霊が先生から剥がれて、弱い状態になった方ですね。あの状況を説明すると、息子から引き離されてしまって、息子を懐柔しようと色んなこと言ってるんだけど、無視されている。とすると、リアクションとしては“怒り”なんですよ。無視しようとしている女子高生と息子に対しての怒り。だけど、怒りの声や表情をつけると急に怖くなくなる。これはさっきの男の子のサスペンダーの話とも通じるし、全編通してやっていることですけど、霊の描写で生きてる人と同じことをやったらダメなんです。なので、このお母さんは怒ってて然るべきなんだけど、「思い切って笑顔にしてみないか」と提案して。で、ある日編集室に行ったら、CG部が作った笑顔のお母さんがモニターに映ってるのが廊下から見えて……(驚いて飛び退くマイム)「これはいいね!!」って(笑)。

――あの笑顔は本当に怖かったですね……!

中村監督:しかもあれリフレインするでしょう。なんで繰り返すのかっていうのを説明できたら多分ダメなんですよ。その理由が分からないっていうのが、いいんですよね。

『見える子ちゃん』公開中
配給:KADOKAWA

©2025『見える子ちゃん』製作委員会

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