
彼にとってはただの趣味。
ミヒャエル・ハネケ、ウルリヒ・ザイドルを生み出したオーストリアより新たな鬼才が誕生。ダニエル・ヘールス、ユリア・ニーマン監督コンビが手掛ける『我来たり、我見たり、我勝利せり』(原題:Veni Vidi Vici)が6月6日(金)より公開。ショッキングな本編映像をご紹介する。
しびれるほどのブラック・ユーモアを効かせて資本主義社会の現状を皮肉り、観る者に笑いと怒りと不快感を与える本作。人懐っこい笑顔がチャーミングな主人公アモン・マイナートは、起業家として億万長者に成り上がった人物で、“趣味の狩り”と称して何ヶ月も無差別に人を撃ち殺し続けている。周囲もそれに気付きつつあるが、富と権力を持ちすぎた彼を、果たして誰が裁けるだろうか?

映像は、本作の冒頭部分でもあるアモンの驚くべき人間狩りシーンを切り取っている。爽やかな日差しの中、山道をサイクリングしていた男性がアモンによって射殺されるが、サスペンス的な演出は一切なされない。執事のアルフレートと連れ立って、撃ち殺した獲物のもとへ近寄るアモンはとてもリラックスしており、これがごく当たり前の日常であることを示唆している。
さらには、獲物以外には大変愛想の良いアモンが被害者の自転車にまたがって颯爽と“リ・サイクリング”に興じる姿、面倒な後始末をすべて請け負い、アモンをあたたかく送り出すアルフレートの姿が、より絶望を煽っている。彼にとって庶民の命は取るに足らないもの。そして彼から恩恵を受けているがために彼を裁かぬ周囲にとっても、それは同じことなのだ。
この衝撃的な作品を手掛けた監督コンビ、ダニエル・ヘールス、ユリア・ニーマンが先日来日し、お話を伺うことができた。その際のインタビューは後日ご紹介する。
『我来たり、我見たり、我勝利せり』
6月6日(金)よりヒューマントラストシネマ、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館他全国順次公開