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『PUI PUI モルカー ザ・ムービー MOLMAX』まんきゅう監督インタビュー「“語らないモルカー”の心情をどう表現するか」


『PUI PUI モルカー』がCGアニメ映画化され、監督にまんきゅう、脚本に柿原優子が採用される。2021年に始まったこのユニークなストップモーションアニメは、車になったモルモットの「モルカー」たちが友情や冒険を描く物語で、世界的な人気を博しました。今作では、AIモルカーをテーマにしたストーリーが展開され、現代社会のテーマを反映しています。映画では、モルカーの知能を実際のモルモットと同等にし、背景色で感情を表現するなど工夫が施されています。サウンドや美術にこだわった劇場体験と、社会問題を絡めたストーリーが特徴で、全てが納得のいく作品に仕上げたいという制作チームの熱意が感じられます。見里朝希が原案・総監修、モンスターズエッグがアニメーション制作を担当し、映画製作は情熱あるチームワークによって進められました。

モルモットが車になった世界で<モルカー>たちが繰り広げる癒しあり、友情あり、冒険あり、ハチャメチャアクションありのストップモーションアニメ「PUI PUI モルカー」。その愛らしさや、実際のモルモットがモルカーの声優を担当するという奇抜さで、2021年の放送開始後から斬新な世界観とキャラクター、ダイナミックな映像が子どもから大人までを魅了し世界的に”モルカーブーム”を巻き起こしました。

そんなモルカーがCG映画化! 「映画 すみっコぐらしとびだす絵本とひみつのコ」などを手がけるまんきゅう監督、脚本に「ちはやふる」シリーズ、「はたらく細胞」シリーズでシリーズ構成・脚本を務める柿原優子が抜擢。アニメーション制作は気鋭のCGアニメーションスタジオ、モンスターズエッグが担当。原案およびTVシリーズ第1弾監督の見里朝希が総監修を務め、パワーアップしたモルカーの世界を楽しむことが出来ます。

本作へのこだわりや、モルカーの魅力についてまんきゅう監督にお話を伺いました。

――本作とても楽しく拝見させていただきました!監督はもともと「モルカー」についてはどの様な印象を持っていましたか?

視聴者の皆さんと同じく、世の中でバズっていて気になっていた時に、アニメ制作の仲間からも「すごい作品があるよ」と教えてもらって見ました。本当、噂に違わぬというか、素晴らしい作品で。一見めちゃくちゃ可愛いのに、シュールで、タイヤがあるのにタイヤ回らないんだ?とか、面白いポイントもたくさんあって。美術1つとっても作り込みがすごいし、メッセージ性も社会テーマもすごく入っていて。単純なキャラクターアニメじゃなくて作品としての深みというか、広がりを感じました。これをストップモーションで表現して世界観を作り上げた見里さんってすごいですよね。素晴らしいクリエイターが出てきたなというのが最初の印象でした。

――見里さんもまんきゅう監督の作品をご覧になっていたのではないでしょうか。

『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』を観ていてくださったそうで、子供向けだけど大人にも刺さるみたいな、そういう所を気に入ってくださっていたので。僕も子供向け作品ではあるんですけど、子供騙しにしたくないなという想いが元々あるのでシンパシーを感じました。

――まんきゅう監督と見里さんの作品作りへの真摯な想いが通じ合っている感じが、いちファンからしても感じましたし、観客の皆さんもそうだと思います。映画作りはどの様に進めていきましたか?

そう思っていただけたら嬉しいですね。CGで制作するということは決まっていたので、どうやってCGでモルカーを表現するかということを、見里さんとディスカッションをさせていただきました。長編でどの様なストーリーにしようとか、会話しながら詰めていった感じです。アニメーションチームの方でもいくつかネタを出させていただいて、劇場版というところと、原作のモルカーにも映画のオマージュがたくさんあったので、有名なアクション映画などのタイトルを出させてもらいました。

その中で社会性のテーマも入れたいなということで、AIという題材もアニメーションチームの方から出て。それを見里さんに見てもらったら、「実は長編を作る時にこんなのはどうかなというアイデアがあるんです」と言って出してくださったのが、自動運転がテーマになったものでした。「これはAIで行くしか無い」とそこはすぐに決まりました。]

――現代社会のテーマ性とエンターテイメントが合致していますよね。

モルカーは何も悪くないというか、あくまでそれを使う人間側の問題ということを描くことにもAIというテーマはすんなりハマるなと思いました。
見里さんからはモルカーは本物のモルモットと同じぐらいの知能指数にしてほしいということだったので、言葉もしゃべれないし自発的な行動が取れないということで、感情を表現するために背景のカラーを工夫しました。緑だったらリラックス、赤だったらピンチとか色で感情を表現するというのは初期の段階から意識していました。モルカーは何も語らないのですが、色で気持ちが伝わる様に考えました。

――その他こだわった部分はどんなことですか?

劇場作品として恥じないように、音にはこだわりました。ちゃんとした映画音楽としてシーンごとに作っていただけるので、5.1チャンネルで子供向けの作品ではありながら劇場作品として楽しめるようなものにしたかったのです。100億円かけたハリウッド映画もモルカーも鑑賞料金は一緒じゃないですか。映画は、観客にお金と時間を使って見ていただくものなので、満足していただけるような作品にしたいということを常に思っています。

――細部へのこだわりをすごく感じて、大変だったことも多かったのではないでしょうか。

カノン”をはじめ劇場用のゲストキャラの作り込みが初期の頃はすごく甘くて。その状態で脚本がFIXしてしまったので、途中でつじつまが合わないところが多少出てきて、これはもう脚本まで1回戻って作り直さなきゃというので、バサっとそれまでの作業を捨てたことがありました。作り直したものを見里さんに見てもらってフィードバックをもらって、また作り直して…というスクラップアンドビルドを繰り返しました。
元々のファンの方にも楽しんでほしかったので、ストップモーションの雰囲気を絶対に壊したく無いという気持ちがありましたし、元々のモルカーの魅力を再現したいなと。でも再現って簡単に言いますけれど、実際にそれを具体的にアニメーションにしていくことは大変で。今回アニメーションの方は副監督の小林丸さんが全て見てくださっていたので小林丸さんのセンスに助けられていました。
クオリティの担保とスケジューリング、物語として破綻するかしないかというせめぎ合いの中で作っていったので、アニメーション監督になって20年近く経ちますがダントツで大変でした(笑)。それでもやっぱりチームのみんなが本当に素晴らしくて。作品に対する情熱とモルカーへの愛情が本当に強かったんです。自分はわりかしポジティブな方なんですけど、チームのみんなの方がもっとポジティブで、「監督、これ面白いからもっとやりましょうよ!」みたいにどんどん作業を増やしていって、「君たち状況分かってる?!」って、監督の自分が1番心配する謎の状況がありました。

――それはすごく素敵なチームですけれど、監督としては肝が冷えますよね。

いちばん好きな言葉が「納品」なんです。クリエイターは納品するとすごくレベルアップするんですよ。チームのみんなと「今レベルアップの音が鳴っているね」と言いながら納品していました。

――監督が影響を受けた作品を教えてください。

「かいけつゾロリ」がすごく好きです。25歳くらいまで就職もせずにフラフラしていたのですが、その時に自分のやりたいことを仕事にしたいなと思い、やりたいことってなんだろう?と浮かんだのが、小学生の頃に好きだった「かいけつゾロリ」でした。たくさんの方の心に残る作品を作れたら良いなという気持ちを思いだして、そこから創作活動を始めました。本当は絵本作家になりたかったんですけど、気付いたらアニメを作っていて。
「かいけつゾロリ」は本質的ないたずら心みたいなものは変わらないんですけれど、時代によってそのいたずらのあり方が変わるというか、そういう所が素晴らしいなと。いまだにすごく大好きですし、原作者の原ゆたか先生のことをめちゃめちゃ尊敬しています。

――今日は素敵なお話をありがとうございました!

◆『PUI PUI モルカーザ・ムービーMOLMAX』
◆公開表記:全国公開中
◆配給:TOHO NEXT
原案・総監修:見里朝希
監督:まんきゅう
脚本:柿原優子
副監督:小林丸
コンテ:まんきゅう・志賀健太郎
サブキャラクターデザイン:岸田優
モデリングディレクター:木村優
美術設定:綱頭瑛子(草薙)
美術監督:田辺浩子(草薙)
撮影監督:野村達哉
編集:まんきゅう
音響監督:小沼則義
音楽:小鷲翔太
制作:モンスターズエッグ
製作:「PUI PUI モルカー ザ・ムービー MOLMAX」製作委員会
声の出演:つむぎ・糸(モルモット)、相葉雅紀、大塚明夫
©見里朝希/PUI PUI モルカー製作委員会

<STORY>
モルカーたちがAI化!?
モルシティにもハイテク時代到来!
この世界でもついにハイテクなAIのモルカーが登場!
ドライバーたちは次々と最新鋭のAI(あい)モルカーに乗り換えていく。
そんなある日、ポテトたちは謎の集団とAIモルカー“カノン”とのカーチェイスに巻き込まれてしまう。そこに凄腕ドライバーが現れ、ピンチから助けてくれる。どうやら
彼は、いなくなった相棒のモルカーをずっと捜している最中だという。それを聞いたポテトたちは“カノン”のAI機能を使って行方不明のモルカーを捜す旅に出るが…。

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