セリフがほぼ猫語（にゃ～）の異色作、映画『しまねこ』増井湖々インタビュー「猫の飼育の大変さ、虐待の残酷さが伝われば」

セリフのほとんどが「にゃ〜（猫語）」という映画『しまねこ』が、現在全国順次公開中だ。主人公はチョコ（鎌田らい樹）、ココア（増井湖々）、ミント（美咲姫）で、三匹とも島に捨てられた猫だ。

プロデューサー・原案も務めた今関あきよし監督は、この捨て猫たちを擬人化した。三匹の猫たちの友情、元飼い主たちとの再会などを通して、あらためて命の大切を問いかけるファンタジーとして作り上げた。

そこで今回、ココア役の増井湖々にインタビュー。当初は猫語に戸惑いつつも、猫が身近な存在の増井にとってかけがえのない一作になったという。話を聞いた。

俳優にとって“初主演”の緊張は想像に難くないが、“初めての猫語だけの演技”は、そうそう経験出来るものではない。「猫語とは何だ！？　と最初は戸惑い、驚きと疑問しかなくて。本当に猫語で行くのかと、今関監督に相談しました（笑）」と明かす増井。心の声は日本語だが、本人たちの会話はすべて字幕のついた猫語だ。覚悟を決めて撮影に入ったという。

増井演じるココアは包帯をしていて、手の怪我にも関わらずミントにご飯を上げるなど優しい猫だ。「ココアは人間から虐待を受けていました。人間の残酷さを知っているので、人間を信じられない。でもいろいろな人と出会い、成長していきます」と、増井はキャラクターを振り返る。

ファンタジーとリアルが混在する世界。観客には好評で、映画のメッセージがさまざまに届いている。「基本的に猫語なので違和感しかないのでは…と不安でしたが（苦笑）、温かい感想が多くてうれしかったです！」と増井は感謝を口にする。「考えさせられる映画だと思うので、人によって感想がまるで違うところが面白いなと思いました」。

たとえば増井自身も猫を飼っているだけに、本作との出会いを通じて想いを新たにすることもあった。「猫はかわいいですが、かわいいから飼うのではなく、自分が責任を持って大切に育てられるかが重要なんです。そのことは、この映画を通じて感じていただきたいですし、猫の飼育の大変さ、虐待の残酷さも伝わればいいなと思っています」。

瀬戶内海に浮かぶ北木島の美しい海と緑に包まれたロケーションの下、命の大切を問いかける切なく心温まる物語。ぜひ映画館で触れてほしい。