Amazon Original映画『不都合な記憶』(原題:Previously Saved Version)を、2024年9月27日(金)よりプライム会員向けに世界独占配信中です。
本作は、数々の映画やドラマ、舞台などで活躍する俳優・伊藤英明氏主演、また、俳優として幅広い役柄を演じ活躍中の新木優子氏をヒロインに迎え、日本アカデミー賞最多8冠を獲得した石川慶氏が監督と脚本を務めるサイコパスサスペンス・ロマンス映画。 西暦2200年、科学技術が発展し人類の宇宙移住が進んだ近未来を舞台に、妻を愛するあまり完璧な妻を求めエスカレートした行動をとるナオキと、そんな夫に復讐を企てる妻のマユミの“夫婦の物語”が描かれます。
本作を手がけた石川慶監督、石川監督とは『愚行録』(2017)、『蜜蜂と遠雷』(2019)、『Arc アーク』(2021)とタッグを組み、『不都合な記憶』で4作目となるピオトル・ニエミイスキ撮影監督にお話を伺いました。
――本作大変楽しく拝見させていただきました。まず、ピオトルさんはこの企画を聞いた時にどの様な印象を受けましたか?
ピオトル:最初に聞いた時はまずワクワクしました。SF作品というのは撮る機会がなかなかないので、それが出来るというのもすごく嬉しかったです。石川監督とはすでに3作品一緒に作っていますし、今回もぜひと思いました。前作の『Arc アーク』でもSF的な要素のある作品だったので、(『不都合な記憶』は)その続きという感じがするのも嬉しかったです。
石川:『Arc アーク』の時とは予算規模が全然違って。『Arc アーク』は限られた時間や予算の中でどう撮ろうかと工夫しながら撮っていたのですが、本作は本作ですごく難しかったですね。宇宙に浮かぶ住居で暮らしているという設定をゼロベースで作っていく作業でしたので、「宇宙で暮らす近未来の人間ってどういう生活をしているのだろう」ということを延々と議論するところから始まりました。昼と夜の感覚はあるのか?部屋の中で靴は履いているのか?どんな窓のデザインになっているのか?といったことですね。宇宙船ではありつつも、同時に家でもありますから。
ピオトル:ナオキとマユミは宇宙の住居で暮らしていて長い時間を過ごすわけなんですけれども、一般的な宇宙を舞台にした作品に出てくるような、何かミッションを遂行する為にある宇宙船とは違って、「住居でもある宇宙船」ということで、作り方がとても難しかったですね。どういった機能を持たせたらいいのか、どういう生活をそこで送るんだろうか?みたいなことをたくさん話しました。
――お2人の作られる映像がとても好きです。この映像は綺麗だな、この映像は恐いなといったものは感覚的なものだと思うのですが、お2人はどの様にその感覚を擦り合わせているのですか?
石川:ポーランドにある同じ映画学校で勉強していましたので、基本的には見てきたものや経験してきたことが同じこともあり、言わなくてもお互いに分かる部分はあると思います。「この映画のこの感じ」「あの授業で学んだこと」といったことを話せるので、共通言語に近いところがあります。言葉で説明しにくいからこそ、通じ合える。とはいえ、無重力世界を作るのとかはとても難しかったです。
ピオトル:無重力のシーンは撮っていて面白かったですね。技術的には色々解決しなければいけない問題があって…。俳優さんたちもワイヤーに釣られた状態で感情を表現する演技をしなくてはいけませんから、表情をしっかり撮る部分と、無重力を現すための撮影方法とのバランスが難しかったです。俳優たちが実際にセットの中でその空間を体験して、演技をして、その瞬間にいれたことが楽しかったです。
石川:脚本には色々なシーンを入れていますが、実際に撮るとなると髪の毛ひとつとっても「無重力での髪の毛の見え方は?」と考えるべきことがたくさんあって。『アベンジャーズ』のような大規模な作品を撮る様な予算ではないので、ハリウッドでは髪の毛が浮いているようににCG処理できるところを、この作品ではもっとふわっとしないような髪型にしようとか、いろいろな工夫が必要でした。古典的なことをやりながらSFの世界を成立するというところが大変であり楽しいところでしたね。
――日々のどの様なことが作品作りの刺激になっていますか?
ピオトル:私は日本に住んでいないので、こうやって撮影で日本に来た時に美術館に行ったりするのが好きです。そして、石川さんがポーランドに来た時には、ポーランドに住んでいない彼の観点や視点についての話を聞くことが楽しみなんです。
『Arc アーク』を制作している時に、森美術館で近未来的なアートの展示があって、そこに「料理をせずに、3Dプリンターの様な機械に栄養素をいれるとトロのお寿司が出てくる」といったものがあったんです。
石川:まさにこの映画の中に出てきた食べ物のシーンのようですね。
ピオトル:そうです。そのアートを見たことが映画の撮影にも少し活かされています。色々な映画、本、アートからインスピレーションを受けたことを実際の撮影のアイデアになることもあります。
――今日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
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