音に反応して襲いかかる謎の生命体によって壊滅した世界を描く『クワイエット・プレイス』シリーズ。“何か”が襲来した1日目にスポットを当てた最新作『クワイエット・プレイス:DAY 1』が公開中だ。大都市ニューヨークで愛猫を抱いてサバイバルする主人公サミラを演じたルピタ・ニョンゴのインタビューが到着した。
無数の人が行き交うニューヨークの街に突如火球が降り注ぎ、クリーチャーが襲来、街はパニックに陥る。人々はクリーチャーが音に反応して襲いかかってくると気付き始め、命を守るために街全体が沈黙することになる。
本作を「誰もこの新しい世界のルールを知らない、“襲来”初日の物語」と表現するニョンゴは、「ニューヨークのような、世界でも有数の賑やかな都市が、沈黙せざるを得なくなったときにどうなるかというイメージをこの作品で伝えることができると思う」と語る。静まり返った大都市というのは現実離れした光景に思えるが、ニョンゴはつい数年前にそれを見たことがあるという。
「私は実際に、ニューヨークが沈黙に包まれているのを経験したことがあります。2020年、新型コロナウィルスの流行により、街は静まり返っていました。この作品ほどの静けさではなかったと思いますが、不気味でした。
朝、目を覚ますと、鳥のさえずりが聞こえたのを覚えています。ニューヨークに鳥がいたなんて!……やたらとハトがいるのは知っていましたが、それ以外の鳥がいるなんて知りませんでした。それから、鳥のさえずりだけでなく葉を吹き抜ける風の音すらも聞こえてくるようになりました。
誰もいないタイムズスクエアを歩くなんて、信じられないことです。その光景をよく覚えています。でも本作はそれの1000倍です。音は敵なのですから」
リアルなニューヨークのセットを“破壊しながら”の撮影
前2作は人里離れた場所での少人数のサバイバルを描いていたが、今作では舞台を大都市に移したことでスケールが格段にアップし、サバイバルのムードもガラリと変わった。撮影は、リアルなニューヨークのセットを用意し、ストーリーの時間経過とともにそれを“破壊しながら”行われた。
「とても大変な仕事でした。振り付けが多いのです。私たちはニューヨークにいて、そこには多くの人々が集い、騒音にあふれています。いろいろなことが起きているのです。すべてのものが同期していなければなりませんでした。
ニューヨークを再現したセットは素晴らしかったです。それが破壊されていくのを目の当たりにしました。最初は、ありのままの混沌とした美しいニューヨークでした。クリーチャーが上陸すると、すべてが変化していきます。流れに沿ってセットを実際に破壊していきながら、攻撃シーンを撮影していったのです。あのセットには恐怖を覚えました。私は12年ほどニューヨークに住んでいましたから、街には馴染みがあります。非常階段からゴミ箱にいたるまで、すべてがリアルに表現されていました。
そして翌週、あれほど見事に破壊された光景を目の当たりにするのは魅力的でさえありました。ビルの傷跡や破壊のディテールがあちこちに広がっており、とても説得力があったのです。プロダクション・デザイナーであるサイモン・ボウルズの仕事は素晴らしいものでした。私たちの周りで起こる破壊やリアルな変化が、私たちの演技を支えていたんです」
ジョセフ・クインとの共演 「すぐに“うまくいきそう”と思った」
ニョンゴ演じるサミラは、突如崩壊してしまった世界で、偶然出会った見ず知らずのエリックと渋々ながらも行動を共にすることになる。ドライでマイペースなサミラに、心細く人懐こい子犬のようなエリックがついて回る様が印象的だ。
チャーミングなエリックを演じるのはNetflixシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のエディ・マンソン役で人気を博したジョセフ・クイン。ふたりの絶妙なケミストリーは本編を観ていただければお分かりだろうが、撮影現場でも二人の関係は良好だったようだ。
「撮影の1日目…“DAY 1”から意気投合していました。私は彼よりも少し前から本作に取り掛かり始めていたのですが、彼は初日で緊張していたんです。撮影の準備が整うのを待っているとき、彼が私の横に座り、たくさんの質問をしてきてくれました。私の人生について、キャリアについて。その時に、“私たちはうまくいきそう”と思いました。彼はとてもオープンで、好奇心旺盛です。その日一緒に撮影している間、彼は最高のエネルギーを携えており、すべてのテイクを違った形で表現するという大胆さを発揮していました。素晴らしい人であり、素晴らしい役者でもあった。“きっといい作品になるに違いない。だって、私はただ彼と一緒にシーンにいればいいだけなんだから!”と思いました。そんな寛大な俳優は滅多にいませんが、彼はそうだったんです」
行く先を決めたサミラは、エリックとともにその場所へと急ぐ。音を立ててはいけないという前提に加え、猫を連れて崩壊した街をゆくのも至難の業だ。
「エイリアンの侵略から生き残るためには、とにかく走って逃げなければなりません。大きな攻撃が起こったことにより、サミラとエリックは地下鉄に追い込まれます。浸水しているため、水浸しの地下道を通ってクリーチャーから逃れる方法を考えなければなりません。サミラは猫を連れているし、猫は水嫌いですから、状況はより複雑になります。彼女は自分と猫の安全を守りながら、新しい仲間であるエリックのそばを離れないようにしなければならないのです」
前2作ではクリーチャーの姿を見せることを最低限に抑えており、大半を観客の想像力に委ねていた。そうした点はニョンゴにとってもお気に入りのポイントだったというが、今作ではしっかりとクリーチャーの姿がお目見えする。「今回の映画では、クリーチャーについてもっと深く知ることができると言わせてください。充分に明かせているでしょうか?」
『クワイエット・プレイス:DAY 1』
公開中
配給:東和ピクチャーズ
©2024 PARAMOUNT PICTURES