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幸せな生活を蝕む “それ” の正体とは?『スリープ』ユ・ジェソン監督に聞く「一番信頼している人が、実は一番危険な存在かもしれないという恐怖」


幸せな生活を蝕む “それ” の正体とは?信頼が揺らぐコンフュージョン・スリラー『スリープ』が公開中です。

ある夜、隣で眠っていた夫ヒョンスが突然起き上がり「誰か入ってきた」と呟く。その言葉をきっかけに始まった、幸せな夫婦生活を蝕む“それ”。毎夜訪れる夫の異常行動に恐怖を覚える妻スジン。しかし、睡眠クリニックの受診を決意した夫婦に、スジンの母は巫女から授かった謎の御札を勧めてくる。夫婦を悩ませる“それ”の正体は、果たしてー。

ポン・ジュノの助監督を経て、『スリープ』で念願のデビューを果たし、今後の活躍が最も注目される新人監督の一人として世界に驚きを与えたユ・ジェソン監督にお話を伺いました。

――本作大変楽しく拝見させていただきました。本作は監督の長編デビュー作となりますが、どの様な意気込みで作品作りに挑みましたか?

ホラー映画としてしっかりと皆さんに楽しんでもらえるような映画を作りたいと思いました。それが監督でありシナリオ作家としての義務だと思っていて、そういう義務感を持ってシナリオを書いていたんですけれども、この映画は2人の結婚の物語としても描きたいと思っていました。シナリオを書いている時期が、私自身が長年お付き合いをしてきたガールフレンドと結婚を控えていた時期でもあったんですね。個人的にも色々なことを考える時間が多かったので、夫婦の物語がメインになるようなシナリオにどんどんなっていきました。

夫婦の姿を描いた作品では、夫婦間の葛藤がよく描かれていますよね。例えば、夫婦喧嘩をしたりとか、どちらかがもう取り返しのつかないミスをしてしまうとか。そして愛が冷めていく過程も出てきます。でも僕自身は結婚にロマンティックなものを考えていたので、夫婦は愛し合っていて、頼り合っているのだと。そういう夫婦が2人のせいではない外部からの障害によって何か問題が起きた時に、それをどう克服するんだろうという点に注目しながらシナリオを書き進めました。

――おっしゃるとおり、ホラーのジャンルでありながら、夫婦の様子を描いたドラマでもありますね。

実は、私は自分ではホラー映画を見られないくらいの怖がりなんですね。一度観てしまうと余韻が残りすぎて何週間かもうずっと怖いまま過ごさなければならないですし、ずーっと怖い状況の中に取り残されたような錯覚に陥ります。

――そうだったのですね!でも怖がりの方の方が怖い作品を撮れるということを聞いたことがあります。怖いポイントが分かるというか。

なるほど、そういった傾向があるというのは初めて聞いたのですが、確かに怖いという感情を常に念頭に置きながらシナリオを書いていたような気がしますね。怖いということにとても敏感なことが、ホラー映画を撮るときの助けになっていたかもしれないですね。この映画の中では、夫のヒョンスが無遊病によっておかしな行動をしてしまうという描写もあったり、神の存在に対して恐怖を抱いていたりします。また、先ほど結婚の話をしましたが、結婚や夫婦というものは「お互いが相手を誰よりも信頼している」存在で、「最も無防備な状態から守ってくれる」と信じることですよね。本作では、自分が一番信頼している人が、実は一番危険で脅威的な存在なのかもしれないという恐怖も描いています。

――監督は怖いものが苦手、ということですが、韓国は怖い映画だらけですね(笑)。そしてとても名作が多いです。

韓国映画や日本映画の中には、ストーリーが素晴らしいホラー映画がたくさんありますよね。ナ・ホンジン監督の『哭声/コクソン』、チャン・ジェヒョン監督の『パミョ(破墓)』などは大好きです。ホラーのジャンルに入るか分かりませんが、黒沢清監督の『CURE』も素晴らしいですよね。名作の中にもキューブリック監督の『シャイニング』、ポランスキー監督の『ローズマリーの赤ちゃん』などは恐怖に支配されているだけではない、ストーリーラインが魅力的だなと思います。

――良いホラー映画の共通点といいましょうか、本作も恐怖とサスペンスの緩急が素敵でした。

ありがとうございます。しっかりした基盤を持った物語が存在している必要があります。登場人物に見る側が没入できるような、そんな物語が必要だと思うんですね。そして主人公がその困難な状況を克服していくストーリーが大切になってきます。いわゆる、ジャンプスケアという、大きな音や演出で怖がらせるシーンはホラーにおいて効果的ではありますが、理由も無しにただ単に怖がらせるシーンだけを乱発してはいけないなと思っています。適度に使いつつ、緊張感を演出することが大切ですから、本作でもとてもこだわりました。

――気が早いですが、監督の次回作も楽しみにしております!

僕が観客として一番好きなのはロマンチック・コメディーなので、そういうジャンルの映画を作るのが夢なんですよね。でもその企画はなかなか通りそうになくて(笑)、ありがたいことなのですが、スリラーやホラーを期待してくださる方が多いので、頑張って作品作りをしていきたいです。

――今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!

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