「ポカリスエット」などを販売する大塚製薬が16日、都内で「現代人のための熱中症対策セミナー」を開催。専門家を招いて夏を前に懸念される熱中症の予防と対策について議論した。
熱中症リスクの高まりに警鐘
同社ニュートラシューティカルズ事業部製品部の岩﨑央弥氏は、「“地球沸騰化”という言葉も生まれ、2023年には40度と体温を超える気温が記録されている。一過性のものではなく常態化していると考えられる」と話す。
気温上昇で熱中症リスクは高まり、昨年は9万人を超える熱中症搬送者数が出る事態になっている。「これからの時代の熱中症対策を考えると、暑くなる前から準備をしておくことと、体温調節機能を維持するために、水分補給を適切に行うことが重要になってくる」と、警鐘を鳴らす。
熱中症のメカニズムを解説
医師で医学博士でもある早稲田大学人間科学学術院体温・体液研究室教授の永島計氏が登壇し、熱中症のメカニズムと熱中症対策についてのポイントを挙げた。
ヒトは普段、運動や気温上昇などで体温上昇が起こると、汗を出し気化させることで、熱を放出し体温を維持している。熱中症とは、体温の上昇により生じる障害の総称で、約37度に保たれているヒトの深部体温が調節できなくなることで起こる。
未然に防ぐ3つのキーワード
未然に防ぐ対策は主に3つ。1点目は暑くなる前からの準備としての「暑熱順化(しょねつじゅんか)」。これは上手に汗をかくために、体を暑さに徐々に慣らし暑さへの抵抗力を高めることだ。永島氏は、昨年の熱さ指数と熱中症搬送人員のグラフを提示し、暑さ指数の上昇初期に搬送者数が増えることを指摘し、本格的な夏が始まる前から準備する必要があると解説した。
2点目は「水分補給」の重要性。ヒトの約60%は水分でできているが、汗をかくことで当然ながら水分量は減少する。体重の3%の水分減でヒトは口の渇きや唇の乾燥を感じるというが「この時点で、すでに脱水症状」(永島氏)だという。ヒトの水分は真水ではなくナトリウムなどの電解質が含まれているので、電解質のバランスが取れた水分補給が必要だ。
3点目に挙げたのは「内部冷却」。これは暑さ本番を迎えた時期に直接、深部体温低下へとアプローチすること。「単純なのは、アイスバスという冷水に氷を入れたプールに浸けるのが一番効果的」(永島氏)だが、場所を確保できない場合はアイスタオルなどを貼って、風をあてる。クーラーなどの利いた部屋に移動させるなどの対策も。また、内部冷却の簡単な方法としては、「アイススラリー」という、フローズンドリンクやスムージーのような氷を細かく砕いた飲み物を飲む手段もあるという。
この時期に、熱中症対策を熟知しておくことが、暑い夏を健康に乗り切る有効な対策になるだろう。