どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。
世の中には脱税を目的とした手口で、税務署の眼を欺こうとする輩が多くいますよね。彼らは様々な手口を使い、何とか税金をごまかそうとするわけです。
そこで暗躍するのが、悪徳税理士や悪徳会計士。そこにのっかっているのが、今回紹介するのが「領収書屋」です。領収書屋はその名の通り、領収書を税金対策のために売りさばいている業者のことです。しかもそれは、集めたものだけでなく、偽造した領収書も含めて販売しているといいます。
そこで、十数年この稼業に就いているというS氏(55歳)に詳しい話を聞いてみました。
領収書屋=B勘屋
丸野(以下、丸)「領収書屋さんって、税務署では別名で呼ばれているようですね」
S氏「税務署内では我々のことを“B勘屋”と呼ぶんですわ。暴力団関係者とは少しのつながりはあっても、ガッツリはありまへん。私らは、休眠企業や倒産企業の領収書を仕入れ、額面でいえば3~6%で企業に販売してるいうことですわ。税金対策に困っている中小企業からの依頼が多いですわね。ほとんど口コミですわ」
丸「B勘屋ってどういう意味ですか?」
S氏「ちゃんとした税務処理は《A勘定》、それに対し虚偽申告のことを《B勘定》という意味で《B勘屋》と税務署内で呼ばれてるわけやね。かなりリスキーな商売よ。何てったって、税務署や国税局もバレたら一網打尽で逮捕。国税と税務署は、このB勘屋を常に追っている。接触のありそうな会社をリストアップして、ものそりゃ必死やね。営業をかけられやすいように、国税の《S》(内通者、おとり)を何社か飼ってるとも言われてる。こっちはババ掴まないかってヒヤヒヤものよ」
丸「Sさん、B勘屋は2方向の営業をかけるようですね。そりゃリスクが高いや」
税務署のシビアな視線
S氏「倒産した会社や休眠会社に営業をかけているB勘屋は、実際に存在した会社の領収書を作るわけなんよね。だから、一見するとB勘屋の領収書は、問題のない領収書になるわけよね。社印を借りて、パパンと領収書に判を押すから、まったく問題がない」
丸「そんなにうまくいくものなんですか?」
S氏「B勘屋作ったかなり精巧な領収書も、税務署調査官が完全に“これは!”と勘で調べれば必ず見つかるんよ。実在している会社というても、稼動しているかどうかなんて、ちょっと調べればわかる。しかも、怪しいと断定されれば、この会社の名義の領収書はB勘屋が偽造したもの情報が日本国中の税務署に一斉通達。プロに頼んだから脱税ができる、と高をくくっていた会社は脱税の罪に、追徴課税で倒産まで追い込まれるわけやね」
丸「バレた場合には割に合わないということですね。潰したら税収もなくなるのに……」
S氏「架空の外注費用や仕入の計上、出張費用の水増しなど当たり前。領収書の偽造は、、問題なく偽の領収書であったとしても記帳だけあれば、経理の範疇では経費扱いになるいうわけやね。俺らは当事者やけど、領収書の偽造は絶対になくならないと思うわ」
丸「なくなることはないでしょうね。領収書は時代と共にどんどん簡略化していますもんね。Web領収書なんてのも当たり前ですから」
S氏「税務署は偽領収書を見抜く技術を数多く持ってる。なんだか怪しい領収書を見つければ、内容を調べはじめる。たとえば金額や日付、取引の中身、見積書、請求書、その筆跡。数字の改ざんは彼らにとって奇妙に見える。毎日戦々恐々の日々」
マルサ捜査は刑事告訴の対象
丸「昔、『マルサの女』ってドキュメンタリーみたいにリアルな映画がありましたが、あんな感じなんですか、マルサって?」
S氏「金額が大きい脱税やったらマルサの強制調査対象になるから、完全脱税っていうことで刑事告訴されることがあるね。追徴税が1億円超の額になると、刑事告訴や。取引先から受け取った領収書を自ら改ざんしているという猛者もいるわ。金額と日付の数字を書き換えてるわけやね。〇をようけい目につけたりな。でも、これは、さすがに税務署職員の眼は欺けへん出来やな。そんなん、半面調査(領収書を出した会社に直接確認する)で一発や。税務署は明らかに悪意があった課税逃れには、税率35%の重加算税を課す。割に合わんわな」
丸「本当にそうですね」
S氏は最後にこう締めくくった。
「税務署や国税は“間違えました”で言い訳できない、悪意のある会社には鉄槌を下す。それもとことんや。恐ろしい税務機関やで。領収書の改ざんやら、書き換えはちゃんとしたプロに任せることや。でも、そのプロも信用に値するもんかわからんけどな……」
薄気味悪く笑ったS氏。この業界、素人さんが足を突っ込むのはよした方がいいでしょう。
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(執筆者: 丸野裕行)