他のロケーションでは到底考えられない、高い密室性・秘匿性。そんな「ラブホテル」というワンシチュエーションで起きる、ちょっと大人なコメディドラマシリーズが9年ぶりにWOWOWで復活。連続ドラマW-30「ああ、ラブホテル ~秘密~」として、全9話/18エピソードが放送・配信中です。
前シーズンから引き続き、藤村享平、大九明子が参加。さらに二ノ宮隆太郎、内山拓也、松本優作、近藤啓介、阪元裕吾、淺雄望といった今の日本映画、ドラマ界で注目される若手監督たちが集結しています。それぞれが脚本も担当し。1話につき2つのエピソードで、全9話18エピソードを紡いでいきます。ラブホテルという場所をテーマにしておきながら、エロ無し(!)エモありな至極の人間ドラマ。限られた空間・設定の中で、“人間”を魅せてくれる豪華な出演陣にも注目です。
そして、このドラマのもう一つの主役と言えば、ラブホテルという特殊なロケーション。近年では“ラブホ女子会”という女性だけで楽しめるプランがあったり、外壁から内観までスイーツだらけの建物や、恐竜がお出迎えするゲートなど、ド派手で面白いラブホテルがSNSでバズることもしばしば。今回はそのお部屋たちに注目しながら、全話の見どころをご紹介します!
【第1話】
監督・脚本:藤村享平(『パパはわるものチャンピオン』、「ラブリラン」)
◆「狐と狸」坂東龍汰、石川瑠華
秘密を持つカメラマンと、清純で初々しい彼女が訪れたラブホテル。デコラティブだけれど上品さも感じさせるインテリアで、第一話にふさわしいお部屋となっている。高級家具のロゴをみつけ「ラブホテルににつかわしくない…」とつぶやく彼だったが、実際には高級家具というのは偽物で大慌て…その様子を見た彼女の驚きの行動とは?
◆「運命の2人」岡山天音、小野花梨
会社員の男がベッドで目覚めた時、腕が謎の女とつながれていて…?レモンイエローの壁とシーツに、花柄がデザインされた内装。思わずキュンとしていまうレトロな可愛さが、この2人の登場人物の可笑しさを盛り上げてくれる。「狐と狸」、「運命の2人」はYouTubeにて、まるごと一話が公開中なので、ぜひその内装も楽しんで。
【第2話】
監督:松本優作(『Winny』、『ぜんぶ、ボクのせい』)
脚本:松本優作、島田雄史
◆「愛してれば、関係ない」松本まりか、三浦貴大
くすみピンクを基調とした、シャンデリア輝く宮殿の様なお部屋。売れっ子女優と売れない俳優のカップルが、台本の読み合わせを行いながら、お互いの関係を見つめ直していく。松本まりか演じる風子のブルーの洋服が、色彩的にも良いアクセントに。
◆「壁の落書き」皆川猿時、桜田ひより
シリーズの中でも特にコメディ感あふれる可愛らしいストーリー。部屋を綺麗にしていく清掃員の2人という設定上、特に古ぼけた雰囲気を出している部屋が愛おしい。ベッドサイドのスイッチを押すと、ピンクのライトが点灯するというお約束もたまらない。
【第3話】
監督・脚本:淺雄望(『ミューズは溺れない』)
◆「落とせたら10万円」堀田真由、井之脇海
賭け事をする大学生と誘われた大学生による、ちょっと切なくも愛しいストーリー。堀田真由演じるユリカが身につけるイエローのワンピースと、ベッドやドレッサーの色味が絶妙にマッチしていて、筆者個人的にイチオシのお部屋!
◆「2人合わせて5万円」鈴木杏、石井杏奈、林田洋平(ザ・マミィ)
二股男のせいで鉢合わせをしてしまった、婚約者と彼女。部屋の中心に柱が鎮座しているかなり個性的なお部屋。ベッドとソファを何度も行き来する、鈴木杏演じるよう子と石井杏奈演じるアンナの、可笑しくも力強い、爽快なストーリーが魅力的。
【第4話】
監督・脚本:二ノ宮隆太郎(『お嬢ちゃん』、『枝葉のこと』)
◆「子猫ちゃん」磯村勇斗、三浦透子
ナルシストな男と、ミステリアスな女による、シリーズの中でも最も先の読めないストーリー。薄暗いあかりに照らされるレトロな部屋が、この物語の謎めいた魅力を引き立てている。部屋だけで完結せず、素敵なテラスも登場するのでご注目。
◆「早春」荒川良々、木竜麻生
初めてラブホに来た女とある告白をする男。独特の間がクセになる、ほぼベッドの上だけで展開していく会話劇。白いシーツの上でカツカレーを食べるハラハラ感もたまらない(笑)。
【第5話】
監督:内山拓也(『佐々木、イン、マイマイン』、『ヴァニタス』)
脚本:内山拓也、木村暉
◆「再見、生活費」 瀬戸康史、瀧内公美、三村朱里
夫婦が巻き込まれるとんでもないトラブルを描いたストーリー。真っ赤な壁にソファ、甲冑のオブジェなど、シリーズの中で最もギラギラ感の強いお部屋。ドタバタトラブルの中で、部屋と廊下を何度も行き来するため、内装を隅々まで見ることが出来ることも面白い。
◆「愛しき隣人」酒向芳、光石研
学生時代の先輩と後輩が、ソファで真剣な思いを語り合う。シックな部屋に暗めの灯り。名優2人による、そこがラブホテルとは思えないほどの重さを感じる会話劇は必見。
【第6話】
監督・脚本:近藤啓介(『ウーマンウーマンウーマン』、「直ちゃんは小学三年生」)
◆「フロント9番」金子大地、片山友希、中村無何有
勝手がわからないのにイキってしまう彼氏と、ベッドのしたのライトを「何か光ってる、かわいい」とはしゃぐウブで優しい彼女。ラブホに初めて来たであろう2人の、対照的な反応が面白い。男の行動が痛々しくも可愛らしいストーリー。
◆「十八番」櫻井健人、大鷹明良、芹澤興人、成嶋瞳子
「古いラブホテルの壁は薄い」という特徴(!)を活かした、ユニークな設定のドラマ。レトロな丸ベッドが逆に新しさを感じる内装。ラブホと落語の融合はあとにも先にもこのお話だけかも?!
【第7話】
監督・脚本:阪元裕吾(映画『ベイビーわるきゅーれ 2 ベイビー』)
◆「HAPPENING KILLER」伊能昌幸、中村ゆりか、坂口涼太郎
仕事中の殺し屋と、風俗嬢。出会ってしまった2人の末路は?密室内でのアクションが冴え渡る。2人が身につけているスカジャンなどのファションと、クラシックなラブホテルの内装のミスマッチさが面白い。
◆「思ってたのと違う」小野莉奈、前田旺志郎
飲み会を抜け出し、ノリでラブホテルに来た今ドキ大学生の2人。お互いの嫌な所を言い合っていくシーンは、痛快で思わず笑ってしまうほどのリアルさを持っている。終始ミラーボールが点灯しているのにムードゼロな愛らしいストーリー。
【第8話】
監督・脚本:藤村享平(『パパはわるものチャンピオン』、「ラブリラン」)
◆「記憶」加藤諒、岡田結実
クラシックな大きい鏡がいくつも壁につけられた、純喫茶の様なお部屋。記憶を失った女と、その女の自称恋人である男が、記憶を取り戻すために奮闘する。加藤諒演じる男の“濃さ”と部屋の雰囲気が素晴らしくマッチしている。
◆「やさしいホスト」森崎ウィン、佐藤玲、髙石あかり
ソファなど、所々に赤がアクセントになっている部屋が、森崎ウィン演じるホストのシャツにマッチング。ホテルの部屋の中でシャンパンタワーを作るシーン、部屋にドンと置かれた棺などあり得ない小物たちが物語に華を添えてくれる。
【最終話】
監督・脚本:大九明子(『勝手にふるえてろ』、『私をくいとめて』)
◆「ダイバーシティ・ラブホテル」林遣都、板垣李光人
弁護士とパラリーガルの2人による“頭でっかち”なラブストーリー。白のカーテンがかかるベッド、大理石調のバスルームなど、基本的に白を基調とした部屋が、2人の俳優の爽やかな魅力を後押ししていた。
◆「あああ、ラブホテル」 坂井真紀、岡田義徳、北村優衣、山崎竜太郎、山脇辰哉
個人的に、ラブホテル版『おもひでぽろぽろ』と表現したい、ほろ苦いストーリー。シリーズ全体を通して、ロココ調かつレトロな部屋が多く登場するが、このストーリーでの“ラブホらしさ”は涙を誘う。ラブホテルではじまり、ラブホテルに終わる、最終話にふさわしい人間ドラマ。
各話のつなぎ的なお楽しみとして「ラブホ写真館」という、実在する、営業中の施設を紹介するコーナーも見どころの一つ。冒頭に紹介した、渋谷のスイーツラブホや、SL鉄道がある部屋などなど、個性的な部屋たちばかり。あなたの街の気になるラブホも登場しているかも?! 最後に、ドラマを盛り上げてくれた“とあるラブホテル”さんにコメントをいただきました!
――本作はラブホテルでのワンシチュエーションという異色のドラマですが、企画を聞いた時はどう思いましたか?
とあるラブホテル:……。
――共演した俳優の皆さんとの思い出は?
とあるラブホテル:……。
――ドラマを楽しんでいる皆さんへメッセージをお願いします!
とあるラブホテル:……。
終始口を閉ざしてしまった、とあるラブホテルさん。そう、ラブホテルに大切なのは「秘密」。皆さんも、密室で繰り広げられる18つの秘密を、ご自身の目で味わってみてくださいね。
連続ドラマW-30「ああ、ラブホテル ~秘密~」
https://www.wowow.co.jp/drama/original/lovehotel/