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2.5次元俳優の実力の高さに「御見逸れした」映画『ゲネプロ★7』堤幸彦監督×三浦海里インタビュー「僕の中では相当レベルの高い作品」


演劇界で活躍する人気若手俳優たちを揃え、映画、ドラマ界を牽引し様々な革新的作風で常に世間を驚かせ続ける鬼才・堤幸彦監督の新作ミステリームービー『ゲネプロ★7』(絶賛公開中!)より、主演の三浦海里さんと堤幸彦監督の撮り下ろしインタビューをお届けします。

ABEMAで2020年9月から配信され、話題となったオーディション番組「主役の椅子はオレの椅子」(通称、オレイス)で優勝した新星・三浦海里さんを主演に迎えて映画を新たな次元に進化させた本作は、演劇界トップの実力派である和田雅成さん、荒牧慶彦さん、佐藤流司さん、染谷俊之さん、黒羽麻璃央さん、高野洸さんといった豪華キャスト陣が集結! 佐藤流司さんが所属するZIPANG OPERAの楽曲が主題歌・挿入歌として使用されていることにも注目です。

人気劇団に追加加入する新人劇団員・山井啓介(妖精パック)を演じる主演の三浦海里さんと、堤幸彦監督に本作の撮影エピソードやキャストの印象、見どころなどお話を伺いました!

――オーディション番組「オレイス」で三浦さんが1位を獲得され今作に主演という形になりましたが、決まった時のお気持ちをお聞かせください。

三浦:僕がそのオーディションで一番になりたかったのは、「堤さんの映画に出たい!」という理由が圧倒的に大きかったので。

堤監督:まぁ、そう言っておかないとね。今、真横にいるから。

三浦:これホントなんですよ(笑)! 本当に堤さんの作品『SPEC』が好きで、憧れていた方だったので。実際に一番になって主演が決まったときは、楽しみでしたけど不安のほうが当時は大きかったですね。共演キャストが誰になるのかもわからなかったですし、単純に僕もたくさん堤さんの作品を観させていただいてきて、その堤さんの汚点にならないように頑張らないと、と思いました。そこの不安はやはり大きかったです。

堤監督:ま、そう言っていますけど!そんなやわな輩じゃないんで。

三浦:いやいや(笑)!

堤監督:もうしてやったりというところじゃないでしょうか。それくらい実力がある人だと思います。

――以前、三浦さんをいくつか舞台で拝見したときにやはり輝いていらっしゃったので、「オレイス」で三浦さんが1位になったのは、やっぱりそうだろうな、と納得の結果でした。

三浦:ええ!ありがとうございます、嬉しいですね。

堤監督:やっぱり!俺もそう思ってた!

三浦:いや、絶対嘘ですよね(笑)。

――堤監督から見て、三浦さんの魅力はどんなところですか?

堤監督:やっぱりすごく勘がいいんですよ。僕はほとんど演技・演出の精神みたいなものは説明しないので、今回は結構その精神が重要になってくるところがいっぱいあるんですね。山井は初めはオドオドしていて、次にちょっと野心みたいなものがキラッと光って、最後は悪役に近いものになっていく、という、今回の登場人物の中では一番難しい役どころだけど、敢えて一々説明しなかった。それを言わずもがなでちゃんと受け取っていたし、僕もちょっと試していた面はあるんだけれど、それをきちんと読み取って先回りでやってくれたから、本当に才能あるなと、助かりました。

――憧れの堤監督の現場はいかがでしたか?

三浦:僕は先程も言ったように『SPEC』が大好きで、小ボケみたいなものがすごくたくさんあるじゃないですか。これはどうやって考えているんだろうな?と思っていたんですけど、現場に実際入って、あれはたぶん堤さんだな、と思って(笑)。堤さんの頭の中ってどうなっているのかな?と。想像もできないような、例えば目をめっちゃ見開く顔だったり、(高野)洸のめっちゃ脇を見せるとか(笑)、思いつくことがすごい面白くて、それを間近で知れたのが嬉しかったです。あ、これを戸田恵梨香さんも通ったんだ……!と知れて楽しかったです。

堤監督:なんかこう、(小ネタが)降ってくるんですよね。それがちゃんとできるかどうかでその作品の振れ幅が決まってくるので、『ゲネプロ★7』は撮影期間としては非常に短かったけれども、割と今一番やりたいことを凝縮している。
間に変な風景のシーンが入ってくるんですけど、あれも壊れゆく品川というのと、劇団の協同性の崩壊みたいなところを掛け合わせているというか。色々な意味で僕の中では相当レベルの高い作品になりました。

――脚本は川尻恵太さんが担当されていますが、キャストの当て書きのような感じなのでしょうか。

堤監督:そうでしょうね。

三浦:(企画・プロデュースの)松田さんが完全当て書きとおっしゃっていたと思うんですけど、僕が果たしてどうなのかがわからなくて。

堤監督:君には冒険したんじゃないかと思うよ。でも、ほとんど他のキャストはみんな当て書きっぽかったよね。佐藤流司とか(笑)。

三浦:そのまんまというか、イメージ通りでした。荒牧さんもクマのぬいぐるみ持ってそうだし(笑)。

堤監督:高野も脇見せそうだし(笑)。

――高野さんが切れキャラじゃないですけど、人に突っかかっていく役は少し珍しいですよね。

三浦:確かに、珍しいですね。キレるのをめっちゃ練習していました。他のみんなが「キレてみ~?」みたいに言って(笑)。

――2.5次元舞台で活躍する俳優さんは本当にものすごくお忙しいですが、そういった方々が映像作品で集まるととてもスムーズに撮影が進むと聞きます。今回はいかがでしたか?

堤監督:もうそれはきちっと仕込まれているというのも変な言い方ですが、殺陣やアクションひとつ取ってもほぼ完璧ですよね、相当難易度の高い殺陣をやっているのに。普通だったら1日練習して、リハーサルをしっかりした挙げ句に本番で止めながら撮影しつつ上手くいくか、というレベルのものが、ちょっと耳打ちして「1回やってみよう、スローで7割ね」と言いながらやってすぐに本番に行けてしまう。それがほとんど間違っていない、というところが、やっぱり殺陣系の舞台をたくさんやっている人独特の、歌舞伎役者などにも通じるキレの良さを感じました。
距離感が上手いんです、おっかなびっくりじゃないんですよ。だから、こう来たら避けるだろうな、というある種の信頼感もあるし、そこは御見逸れしました、という感じでした。素晴らしかったです。

――三浦さんは共演経験のあるキャストさんは?

三浦:洸と和田雅成くんは過去に共演したことがあったんですけど、他の皆さんは初めましてでした。

――印象的だったことは?

三浦:今回の役柄に、みんな割と裏も一緒だな、と。

堤監督:一緒なんだ(笑)。

三浦:雅成くんがリーダーポジションでいたりだとか。染谷さんは一番僕に気配りをしてくださって、めちゃくちゃ優しかったです。本当にアットホームで。やっぱり皆さん同士がもう知り合いだったので、どちらかというと僕はアウェーポジションだったんですけど。でも、初日がすごい緊張したんですけど、2日目からあまり緊張しないような空気感を皆さんが作ってくださったのでとても有り難かったです。

堤監督:ある意味、密室劇だからね。

三浦:そうですね。ずっと品川に(笑)。

堤監督:オーディションシーンとして出てくる過去回想だけだもんね、他で撮ったのは。

――劇場も2.5次元舞台に行き慣れた人だったらよく知っているクラブeXなので、「ああ、ここクラブeXだ!」みたいな楽しさもありました。でも、あの装飾は大変だったんじゃないかなと。

三浦:すごいですよね!

堤監督:これは劇団として理想の形なんですよ。人気と実力と経済力がないとできないわけですよね。稽古から本番の舞台を借りて、そこでずっとリハーサルをするってほとんどないんです。超大物だったらあるかもしれないですけど、まあないですね。だから、そのへんの恨み辛みをちょっと入れました(笑)。すごい規模の大きな舞台をやっているつもりだけど、やっぱり稽古場って自由にならないので。

――堤監督が印象的だった出来事やキャストさんは?

堤監督:それぞれみんな特徴がありました。でも、よく言うけど、高野の脇毛はやっぱり。

三浦:その場で「剃れるか?」って聞いていましたもんね(笑)。

堤監督:もしかしてと思って「ちょっとやってもらっていい?」って言ったら、「喜んで!」と言ってくれて(笑)。それぞれキャラを作ったので、そこにみんなぴったりハマってくれて嬉しかったですね。

――脚本にはなかった、堤監督ならではの小ネタみたいなものは入っていったんでしょうか。

堤監督:今回は結構台本通りなのであまりないけど……。

三浦:僕、回想シーンでベジータやってます。

――あれベジータなんですね!?

三浦:あれはビックリしました(笑)。「髪の毛を全部逆立てられる?」と言われて。

堤監督:元々の山井がどんな人物だったか、というところで、小劇場の中ではちょっと扱いきれない人間で、座長も困るっていう。でも座長なりの愛があって、「もうお前はここに居るべきじゃない」というのが滲んでいるよね。

三浦:その映像を見て、堤さんがメイクさんに「毛量多いね」と言ってくれていたらしくて、それがすごい嬉しくて(笑)。

――あれ全部地毛なんですか!?

三浦:地毛です。金髪もスプレーのワックスです。

堤監督:劇団SEVENと(山井の元の劇団)下落合特急が、あれは僕の中で最大のギャグ。劇団SEVENは自分たちのホールを持っていて、たった700人くらいの公演を3か月打てるってものすごく贅沢なんですよ。下落合特急のほうは、もう3日やっても結構ガラガラで、思い込みたっぷりで作っているのになんで伝わらないのかな、という、そのジレンマってどんな俳優でも通ってきたことだし、そこが二重写しになっていて。

劇団SEVENだって自分たちでチケットを手売りしていた時代もあったんだよ、って演劇人としての売れない頃から売れる頃までの時間の在り方みたいなのがサブテーマにあるんです。と、同時にみんなが憧れていた品川が今街の開発でどんどん壊されていく、という、その虚無感みたいなものが上手く表現できたので良かったなと思います。

――三浦さんは他のキャストさんの印象に残っているシーンはありますか?

三浦:個人的にすごく好きなのは、楽屋で雅成くんが演じている陣内さんとケンカ終わりで2人だけ残って、それこそ「昔はチケット手売りしてたんだぜ」みたいな話をしているシーンがめちゃくちゃ好きです。やっているときも楽しかったですし、映像で観ているときも「このシーン好きだな~」と思いました。

――あのシーンは心が通いあった瞬間というか、とても良いシーンで印象的でした。

三浦:たぶん、みんなの前で気を張っていた陣内が人に気持ちを吐露しているというのもあって、そういう部分が実際にお芝居をしている中でも感じられてめっちゃ好きなシーンです。雅成くん本人にもそう伝えたんですけど、「なんであのシーンなの?そうなんだ~、意外だわ~」と言われました(笑)。

――また、佐藤流司さんが所属するZIPANG OPERAの楽曲もこんなに使うんだ!というくらい、ふんだんに劇中に使用されていましたが、こだわりはどんなところだったのでしょうか。

堤監督:同じものという一体感という面で、もちろん佐藤流司もいるし、何かカルチャーの一旦のような気がするんですよ、メインキャストの皆さんも、ZIPANG OPERAも。これ(2.5次元舞台)はこの10年より前にはなかった文化。もちろん2.5次元舞台自体はありましたけど、市民的に認知されて「2.5」という言い方が正しいかはわからないけれど、根付いてきた新しいカルチャー。これが今後どうなっていくのかというところで、そこを担う意味でZIPANG OPERAの楽曲を使うことはとてもスリリングでした。曲もカッコいいしね!

――堤監督としても、2.5次元舞台で活躍されている俳優さんたちをどんどんご自身の映像作品に使いたい気持ちはあるのでしょうか。

堤監督:もちろんです!それぞれがレベルが高いからね! まず三浦くんを使わないと怒られちゃうけど(笑)。

三浦:ぜひぜひ!スケジュールは空けときます(笑)!

――それこそ、2.5俳優の方はスケジュールを押さえるのが大変みたいなところがありますよね。

堤監督:ありますね、みんな忙しいから。

三浦:堤さんからお話をいただいたら、全員みんなスケジュールを無理やり空けると思いますよ(笑)。

――映画の「ここを観てほしい!」というこだわりのポイントを教えてください。

三浦:作品で言うと、やっぱりアクションはすごい見どころになっていると思います。個人的なことで言ったら、作品のキャッチコピーに<裏がある>と言われているように人間の裏表が描かれているんですけど、山井が一番それが色濃く出ているのかなと思うので、そこはぜひ注目していただけたら嬉しいなと思います。

堤監督:シェイクスピア的な戯曲が一体になっていて、最後のリアル瞬間移動は見どころです。

三浦:リアル瞬間移動は、ぜいぜいしながら裏をめっちゃ走っています(笑)。

――映像作品なのに、そこは本当にその場で走って移動しているんですね! 撮影はカットをかけず長回しで行ったシーンも多かったのでしょうか?

堤監督:あのシーンだけなんです。それ以外はそんなに長回しはやっていないんですけど。撮影は楽しかったよね。みんな上手いし技術的に高いので、特にこの作品は全然悩んだりはなかったですね。

三浦:あれだけ……二階から飛び降りるのだけは、めっちゃ緊張して時間がかかっちゃったなと思いました。ロープで飛び降りるシーンで、あれは本当に僕がやらせていただいたんですけど。

堤監督:そんなに映ってないけどね。

三浦:あははは(笑)! そうですよね、でもあそこめちゃめちゃ時間かかっちゃったなと思って。でもいい経験をさせてもらいました(笑)。

――あの劇場であんな演出できるんですね。

三浦:出来ましたね!

――もし、続編のお話があったら?

堤監督:ね! みんな死んではいないからな。あれは幻覚か否か、というね。

三浦:続編があったら面白いですね。下落合特急を深掘りしていただきたいです。

堤監督:下落合特急の座長と彼女の在り方が気になるよね(笑)。

三浦:絶対あれ付き合ってますもんね(笑)。

――では最後に楽しんでくださっている方にメッセージをお願いします!

三浦:今回、初めて堤さんのもとで初主演させていただきました。今まで僕を知ってくださっていた方も知らないような顔を見せられていたり、舞台と映像の融合という部分だったり、舞台が好きな方だったら舞台裏が見られる作品になっていると思います。人間のドロドロした部分だとか、裏がある部分が観ていただければ一目瞭然の作品になっていますので、アクションも含め見どころたくさんなので、ぜひ何度でも観ていただけたら嬉しいです。

堤監督:舞台モノの作品で本番でミステリーが起きるということはそこそこあるジャンルだと思うんですけど、ゲネプロ(通し稽古)で起きるというのは、一番の見どころかなと思います(笑)。

三浦:確かに(笑)。

堤監督:(本番ではなくゲネプロなんだから)途中でやめればいいじゃん、って感じなのに、“やめられない事情が色々出てくる”というところが面白いなと思います(笑)。誰かのファンであるとか、映画が好きだとか、演劇が好きだとか、そういうのも乗り越えて、エンタメというものに興味がある人だったらとても楽しめると思うので、ぜひ劇場でご覧いただきたいです。

――ありがとうございました!

[撮影:冨田 望]

三浦海里
スタイリスト:堂園礼子
ヘアメイク:Roops見良津

堤幸彦
スタイリスト:関 恵美子

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※Otajoとガジェット通信は姉妹サイトです。

作品情報

映画「ゲネプロ★7」
2023年4月21日(金)新宿バルト9 他 全国ロードショー
監督:堤幸彦 脚本:川尻恵太
出演:三浦海里 和田雅成 荒牧慶彦 佐藤流司 染谷俊之 黒羽麻璃央 高野洸
大高洋夫 荒木健太朗 宮下貴浩 輝山立 鷲尾昇 / 竹中直人
主題歌:ZIPANG OPERA「KAMINARI FLAVOR」
劇中音楽:ZIPANG OPERA (LDH Records)
制作プロダクション:オフィスクレッシェンド
製作:映画「ゲネプロ★7」製作委員会(ABEMA ネルケプランニング ギャガ ローソンエンタテインメ
ント S-SIZE)
配給:ギャガ
(C)映画「ゲネプロ★7」製作委員会
公式 HP:gaga.ne.jp/gene7movie/
公式 Twitter:https://twitter.com/Gene7movie @Gene7movie

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