どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。
いつもお世話になっている存在ということもあり、警察組織についての興味が強く私の中にありました。高校時代には『連合赤軍あさま山荘事件』警視庁警備一課長であった佐々淳行さんの『東大落城』の読書感想文を書いたことがあったのですが、なぜか学内で問題になった思い出があります。
これまでも警察組織関連のお話をお伝えしてきましたが、今回のテーマは合同捜査です。広域指定事件や他府県にまたがった事件解決の場合、各警察署のプライドをかけた捜査がぶつかり合います。
元警察官のE氏(61歳)をお迎えして、どのように合同捜査が行われるのか、その仕組みについてお話を伺いました。
異なった全国にまたがる広域指定事件
丸野(以下、丸)「まったく違う都道府県で起こった凶悪事件というのはどのようなチーム編成で解決されているんですか?」
E氏「事件発生後、事件が実際に起こった所轄警察に捜査本部が設置されます。そこに非常に多くの捜査員たちが缶詰めになるわけです。事件の主任官は捜査本部長の指示を受ける。事件捜査の陣頭指揮を執るわけですね。そこにはもちろん本部の主管課長も協力します。同時に広報担当官が報道機関への対応を任され、事件の発表に奔走するわけですね」
丸「大変ですね、それは。バタバタじゃないですか」
E氏「ええ。担当者は多忙ですよ。それから、副署長などが記者発表を行うわけですね。事件主任官を事件副主任官は補佐して、捜査本部長が指名した所轄署の捜査を取り仕切る課長におろされます。その他諸々の任命があり捜査本部ができあがるということなんですね」
殺人事件、凶悪事件の場合は捜査員派遣が進む
丸「広域の殺人事件などはどうですか?」
E氏「そうですね、殺人の場合は気合い入れてかからないといけません。簡単に解説すれば、このような仕組みになります」
・本部捜査第1課の所轄刑事課長と殺人犯課が主になり、捜査の陣頭指揮をとる
・かなり大きな規模の事件の捜査員は、本部はもちろん隣接の署からも派遣で増強される
・本部に地域課や生安課(生活安全課)、交通課などの捜査員も駆り出される
・他の課にも現場の緊迫感を味わうことを望む刑事志望者が多く、一緒に仕事したがるケースがある。捜査本部の目に留まれば、組対課(組織犯罪対策課)などが参加することもある
捜査本部が巨大になればなるほど……
丸「大きな凶悪事件になるとすごい人数の捜査員が駆り出されるんじゃ」
E氏「本部の捜査員と所轄の捜査員はタッグを組むことがあるのですが、テレビドラマのように本部と所轄捜査員の仲が悪い場面も実際に見られます。大きな本部になれば100名以上の状態になるわけですから」
丸「所轄の捜査員がふてくされている映画やドラマよく観ますもんね」
《共同捜査》《合同捜査》の違いって?
E氏「たとえば《共同捜査》《合同捜査》とはまったく違うんですよ。指揮命令系統が違う。捜査の効率化を狙うのはどちらも同じなんですが、《共同捜査》は捜査会議を行い、捜査の方針を決定してからそれに沿った形でそれぞれに捜査を行う。《合同捜査》は協力し合う捜査員への指揮命令系統がバラバラということになります」
丸「合同捜査は指揮命令違うから、捜査方針でなんだか揉めそうですね」
E氏「それぞれ質が違いますが、一体にならないと事件解決にはいたりません……。本部が大きくなれば、それぞれに縄張り魂に火がつくこともあります」
E氏は最後におっしゃられました。
「刑事でも警察官でも、機動隊員でも、みんな命を削り、燃やしながら闘っている。丸野さんが何冊か読んだ佐々淳行さんは、暴動などを海外方式の制圧技術を日本に持ち帰ったいわば危機管理のスペシャリストです。命を燃やし尽くしてしまった警察官の死も見ているわけです。今現在頑張っている警察官諸君には私は敬意の念を持っています」
(執筆者: 丸野裕行)